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64(横山秀夫)

64(ロクヨン)
横山 秀夫 (著)
佐藤浩市さん主演の映画『64(ロクヨン)』見ました。

面白かったですよ。
後半は現在上映中です。

そのタイミングで原作を読む私。結末を先に知ってから後半を見に行くなんて、我ながら なかなか ひねくれ者ですわ。
たった7日間で終わった昭和64年。その最後に起こった誘拐殺人事件の通称が「ロクヨン」。時効成立まであと1年となった。当時 捜査一課に所属しており、身代金受け渡し現場へ向かう被害者の父親を追尾する任務についていた三上は現在D県警本部の広報官になっている。

仕事では、警察の報道管制を嫌う記者クラブの記者たちと、それを抑え込めと命じる上司の板挟み。家庭では我が子とわかりあえず、ついに娘は家出をし、似たような年恰好の遺体があれば、確認作業に出かける日々。

あらゆる意味で行き詰まりつつある三上は広報官としての立場で、時効まであと1年の「ロクヨン」と再び向き合うことになった。そして、「ロクヨン」捜査中に起こっていた大変な秘密を知ってしまう。そんな時に起こった、「ロクヨン」を模したかのような誘拐事件。新たな事件の犯人は?!D県警の内部に淀んだ空気はどうなる?三上は家庭の危機を乗り越えられるのか?
映画館で前半を見たときに、「ロクヨン」を模した新たな誘拐事件の犯人が誰か、予想がつきました。

それは正解でした。やっぱりねぇ。

でもね、犯人はわかっても、その動機や目的がよくわからなったんです。

原作を読んで、新たな誘拐の謎が解けたとき、ものすごい執念を感じました。

作者の、そして登場人物の。

むむむ、すごいなぁ。

ただね、ロクヨンの謎はわかっても、この小説は何も解決されないまま終わるのですよ。

三上の刑事生命がどうなるのか、三上の娘がどうなるのか、旧ロクヨンの犯人はどうなるのか、ロクヨンを模倣した犯人はどうなるのか、他にもあの人この人がいったいどうなってしまうことやら。心配なことが山盛りです。

はー。
映画館でこの結末を見せられたら消化不良な気持ちになりそうだなぁと思ったら、新聞の予告には「映画ならではの結末が」と書いてありました。

映画ではきちんと解決を見せてくれるのかもね。
それは楽しみ。

しかし、逆に言えば、この結末でも成立している小説の力を感じます。

これだけ未解決事項が多くても、事件の終わりを感じたし、読後の満足感を得ることができました。

横山秀夫さん、すごいわ。
64(ロクヨン)
横山 秀夫 (著)
文藝春秋 (2012)
警察職員二十六万人、それぞれに持ち場があります。刑事など一握り。大半は光の当たらない縁の下の仕事です。神の手は持っていない。それでも誇りは持っている。一人ひとりが日々矜持をもって職務を果たさねば、こんなにも巨大な組織が回っていくはずがない。D県警は最大の危機に瀕する。警察小説の真髄が、人生の本質が、ここにある。 出典:amazon
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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