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七つの会議(池井戸潤)

七つの会議
池井戸 潤 (著)
まだOLだったころ、会議は嫌いでした。いや、それは間違いだ。嫌いじゃなくて、大嫌いでした。

まずは、資料のコピーを人数分用意するのがいつも女子社員の役目だというのが嫌でした。

プログラムのロジックを考えている時に「○時までに、コピーしておいてよ」

キーッ!!

もちろん、それも仕事なのだけれど、忙しかろうと、そうでなかろうと、女性社員にばかり言いつけられるのはおかしかろ?

まれに会議に出席すると、なぜこんなにも非生産的なのか、終わりの時間を決めずにダラダラするのか、理解に苦しんだものです。

「この1時間、2時間のせいでまた残業が延びるじゃないのさ!もう、良い加減結論出しましょうよ!」

ペーペーの身では、心で叫ぶだけでしたけども。

ある会議では、守ってもらえると思っていた直属の上司から、「きみ、これはいったいどうなっているんだ?!」と責められている同僚を見て唖然。

ちょっと前にアナタ自身がOKを出した案件ですやん?

味方に背後から蜂の巣にされて、本当にかわいそうだったなぁ、あの人は…。

池井戸潤さんの『七つの会議』のタイトルから、あれやこれや、嫌だった会議を思い出してしまいました。
この小説の舞台は、大手企業を顧客に持つ東京建電。毎週木曜日の午後二時に始まる定例会議から物語が始まります。会議のメンバーはいろいろ。出世の階段を1段飛ばしに歩いているような若者がいれば、そこからはずれてしまった中年社員もいる。勢いに乗っている若者が、くたびれた中年の先輩に遠慮ない言葉を浴びせるのは、見ていて(読んでいて)気分の良いものではありません。

しかし、やり込められてばかりと思っていた先輩社員が、パワハラを訴え、その主張が通ります。あわれ、出世中の若者は、畑違いの役職へ左遷。しかし、その人事の裏には大きな闇が隠れていたのでした…。
当たり前のことですが、登場する社員一人ひとりに人生があります。

どんな生い立ちで、いまどんなふうに生きているのか。そのことが仕事にどんな影響を与えているのか。

ダメ社員だと思った人が、意外にも信念を持っていたり、信頼できる人だと思っていたのに、え?あなたが?!と裏切られたり。

この小説が面白いのは「東京建電」という会社を軸とした大きなストーリーの中に、一人一人の生き方がサブストーリーとしてじっくり書き込まれている点だと思います。

「七つの会議」がすべて終わった時に、企業体質というのは小説の世界だけではなく実際にあるのかもしれないなぁと思いました。某「T芝」さんのように…。

そこで働くサラリーマンの、悲哀も感じます。あることをきっかけに退職する女性社員が、紅一点、とても爽やかでした。
七つの会議
池井戸 潤 (著)
集英社 (2016/2)
きっかけはパワハラだった!トップセールスマンのエリート課長を社内委員会に訴えたのは、歳上の部下だった。そして役員会が下した不可解な人事。いったい二人の間に何があったのか。今、会社で何が起きているのか。事態の収拾を命じられた原島は、親会社と取引先を巻き込んだ大掛かりな会社の秘密に迫る。ありふれた中堅メーカーを舞台に繰り広げられる迫真の物語。傑作クライム・ノベル。 出典:amazon
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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