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七つの会議(池井戸潤)

七つの会議
池井戸 潤 (著)
出版社:集英社 (2016/2)【内容情報】(「BOOK」データベースより)きっかけはパワハラだった!トップセールスマンのエリート課長を社内委員会に訴えたのは、歳上の部下だった。そして役員会が下した不可解な人事。いったい二人の間に何があったのか。今、会社で何が起きているのか。事態の収拾を命じられた原島は、親会社と取引先を巻き込んだ大掛かりな会社の秘密に迫る。ありふれた中堅メーカーを舞台に繰り広げられる迫真の物語。傑作クライム・ノベル。(出典:amazon
まだOLだったころ、会議は嫌いでした。
いや、それは間違いだ。
嫌いじゃなくて、大嫌いでした。
 
まずは、資料のコピーを人数分用意するのが
いつも女子社員の役目だというのが嫌でした。
プログラムのロジックを考えている時に
「⚫︎⚫︎時までに、コピーしておいてよ」
キーッ!!
もちろん、それも仕事なのだけれど、
忙しかろうと、そうでなかろうと、
女性社員にばかり言いつけられるのはおかしかろ?
 
まれに会議に出席すると、
なぜこんなにも非生産的なのか、
終わりの時間を決めずにダラダラするのか、
理解に苦しんだものです。
「この1時間、2時間のせいで
また残業が延びるじゃないのさ!
もう、良い加減結論出しましょうよ!」
ペーペーの身では、心で叫ぶだけでしたけども。
 
ある会議では、
守ってもらえると思っていた直属の上司から、
「きみ、これはいったいどうなっているんだ?!」
と責められている同僚を見て唖然。
ちょっと前にアナタ自身がOKを出した案件ですやん?
味方に背後から蜂の巣にされて、
本当にかわいそうだったなぁ、あの人は…。

池井戸潤さんの『七つの会議』のタイトルから、
あれやこれや、嫌だった会議を思い出してしまいました。

***
この小説の舞台は、
大手企業を顧客に持つ東京建電。
毎週木曜日の午後二時に始まる定例会議から物語が始まります。

会議のメンバーはいろいろ。
出世の階段を1段飛ばしに歩いているような若者がいれば、
そこからはずれてしまった中年社員もいる。
勢いに乗っている若者が、
くたびれた中年の先輩に遠慮ない言葉を浴びせるのは、
見ていて(読んでいて)気分の良いものではありません。

しかし、やり込められてばかりと思っていた先輩社員が、
パワハラを訴え、その主張が通ります。
あわれ、出世中の若者は、畑違いの役職へ左遷。
しかし、その人事の裏には大きな闇が隠れていたのでした…。
***

当たり前のことですが、
登場する社員一人ひとりに人生があります。
どんな生い立ちで、いまどんなふうに生きているのか。
そのことが仕事にどんな影響を与えているのか。

ダメ社員だと思った人が、意外にも信念を持っていたり、
信頼できる人だと思っていたのに、
え?あなたが?!と裏切られたり。

この小説が面白いのは
「東京建電」という会社を軸とした大きなストーリーの中に、
一人一人の生き方がサブストーリーとして
じっくり書き込まれている点だと思います。

「七つの会議」がすべて終わった時に、
企業体質というのは小説の世界だけではなく
実際にあるのかもしれないなぁと思いました。
某「T芝」さんのように…。
そこで働くサラリーマンの、悲哀も感じます。
あることをきっかけに退職する女性社員が、
紅一点、とても爽やかでした。

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、
ナレーション、アナウンス、 そしてライターと、
さまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BLOG ⇒PROページ

著書:パーソナリティ千波留の読書ダイアリー
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。
だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。

「千波留の本棚」50冊を機に出版された千波留さんの本。
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