中学・高校生のころ宝塚歌劇を見に行くと、
幕間休憩の30分に、よくお隣のファミリーランドへ出かけたものです。
当時の学生には「お茶を飲んで時間をつぶす」という選択肢はなかったのです。
あまり遠くまでは行けないけれど、
アシカ池や猿山のあたりで動物を見て、
また宝塚大劇場に戻るのが定番でした。
あのころ宝塚大劇場はファミリーランドの中にあったため、
お金を使わずに時間をすごす、良い方法でした。
あるとき、ファミリーランド内に、
アトラクションではない建物があることにふと気づきました。
それは宝塚歌劇記念館。
先先代の宝塚音楽学校校舎だったその建物は、
ファミリーランドがなくなったあと、中華料理店となりましたが、
新しいすみれ寮建設のため、今では取り壊されてしまいました。
へぇ、こんな記念館があったのか、と中に足を踏み入れて、うっとり。
宝塚歌劇の黎明期から、私がファンデビューするまでのあいだに、
宝塚歌劇の歴史を彩ったスターの写真が飾られていたのです。
すでにテレビの世界でよく顔を知っていた、
葦原邦子、淡島千景、朝丘雪路、浜木綿子…
それぞれの現役時代の美しいこと、輝いていること。
中でも、見入ってしまったのが八千草薫の現役時代のポートレートでした。
なんと美しい人だろう!
もちろんその当時でもテレビの世界での八千草薫は知っていましたが、
現役タカラジェンヌ時代の顔は、夢の世界のお姫様。
私はすっかりファンになってしまったのでした。
以来、テレビや映画で八千草薫が出ていると、
特に意識して見るようになりました。
ゆったりとした喋り方、
内側からにじみ出る優しさ。
どんな役のときにも八千草薫は私の夢を壊すことがありません。
こんな女性になりたい、とずっと思っています。
その八千草薫さんが今年(2015年)1月に出版した
『あなただけの、咲き方で』。
おそらくご本人の語りを原稿に起こしたのでしょう、
読む人に語りかけるような文章です。
あの優しい言葉遣いで、
これまでの人生で得た知恵を説いてくれています。
たとえば、年配になってから八千草さんが心がけているのは
「ちょっとだけ無理をすること」。
若い頃と違って、無理をして頑張りすぎると、
周囲に迷惑をかける結果になることもある、
だからと言って、楽ばかりしていると、
無為な生き方になるのではないか、とおっしゃるのです。
「ちょっとだけ無理をする」。
私もぜひ真似させていただこう。
この本では、人生訓ばかりではなく、
日常生活や趣味のことも出てきます。
家具や洋服の好み、
旦那様がご存命中に一緒に山に登ったこと、
そして八千草さんが動物好きだということが分かりました。
嬉しい!
今も犬と猫、それぞれ1匹ずつと一緒に暮らしておられるんですって。
タイトルの『あなただけの、咲き方で』は、
誰にでも良いところがある、
あなたはあなたの咲き方で良いのですよ、という意味です。
読み終わって、ますます八千草薫ファンになりました。
美しいのは姿形だけではないのです。
心の持ちよう、生き様が美しい。
こんなおばあちゃまに私もなりたい! |
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター
コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、
ナレーション、アナウンス、 そしてライターと、
さまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
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著書:パーソナリティ千波留の読書ダイアリー
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。
だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。
「千波留の本棚」50冊を機に出版された千波留さんの本。
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