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西の魔女が死んだ(梨木香歩)

私も魔女修行をしてみたい

西の魔女が死んだ
梨木香歩(著)
この小説はタイトルと同じ「西の魔女が死んだ」という言葉から始まります。

西の魔女、とは 主人公まい の祖母のこと。

一体どんなおばあちゃんだったかしら?

もしかして、黒いマントを着込んで、何かをぐつぐつ煮込んでいたりするおばあちゃん?

もし自分の祖母がそんなおばあちゃんだったら怖いなぁ、と考え込んでしまうではありませんか。

漫才で言えば「つかみはOK」な出だしです。


祖母が亡くなる2年前に、孫娘の まいは両親の元を離れて約1ヶ月間祖母と一緒に暮らしました。

祖母の死を受けて、まいは彼女と過ごした日々を振り返るのでした。
中学1年生になったばかりの5月。まいはもう学校には行かないとママに宣言した。

学校は自分を傷つけるだけの場所だから、と。

ママは単身赴任中のパパに電話で相談していた。

ママは まいを当分の間、田舎で一人暮らしをしている自分の母親に預けることにした。まいにとっては祖母だ。


まいのおばあちゃんはイギリス人。日本人男性と結婚し、ママが誕生した。

おじいちゃんが亡くなった後もおばあちゃんは日本に住み続けた。まいはおばあちゃんが大好きだ。

おばあちゃんは まいがなぜ学校に行きたくないのか聞かなかった。

そして、 まいと一緒に暮らすことを喜んでくれた。


おばあちゃんは庭のある一軒家に住んでいる。

野菜を植え、鶏を飼っている。毎朝の卵は鶏小屋からの直送だ。そして野苺を摘んでジャムを作る。

まいはその手伝いをするのが楽しかった。


そんなある日、おばあちゃんが まいに驚くべきことを話し出した。

自分たちの一族に「魔女」がいるのだと。

まいにはその才能は受け継がれていないようだが、修行しだいでは まいも魔女になれるかもしれないと。

その日から まいはおばあちゃんの教えに従って魔女修行を始めることになった……
(梨木香歩さん『西の魔女が死んだ』を私なりに紹介しました)
自分の一族に魔女がいる、なんてびっくりしますよね。

ただ、まいのおばあちゃんがいう「魔女」は、呪文を使ったり箒で空を飛ぶのではなく、ちょっと普通ではない力を持つ者、超能力者に近い者のようです。


まいはそれを聞いて、自分も魔女になりたいと思います。

もし良い魔女になれたら、学校がもっと過ごしやすい場所になるような気がして。

だけど、今のところ魔女の才能のかけらも感じない まいがどうやったら魔女になれるのでしょうか。


おばあちゃんは言います。

まずは基礎トレーニングだと。

運動選手が競技には直接関係なさそうな筋トレに励むように、魔法や奇跡を起こすためには精神力を鍛えねばならない、と。


おばあちゃんは、魔女になるために最も大切なものは意志の力だと語ります。

何事も自分で決める力、自分で決めたことをやり遂げる力が大事だと。


おばあちゃんに勧められて まいが最初に取り組んだのは時間管理。

朝起きる時間から寝る時間まで、まい自身で決めることが魔女修行の第一歩でした。


次に教えられたことは外部の刺激に反射的に対応しないこと。

おばあちゃんはこのように語ります。
これは魔女修行のいちばん大事なレッスンの一つです。魔女は自分の直感を大事にしなければなりません。でも、その直感に取りつかれてはなりません。そうなると、それはもう、激しい思い込み、妄想となって、その人自身を支配してしまうのです。直感は直感として、心のどこかにしまっておきなさい。そのうち、それが真実であるかどうか分かるときがくるでしょう。
(梨木香歩さん『西の魔女が死んだ』P138より抜粋引用)
むむむ?

この「魔女修行」は 主人公まいだけでなく、私にも活かすことができそう。

そうなのです。おばあちゃんが指導してくれる魔女修行は まいのようなティーンエイジャーだけではなく、すべての年代の人に通用するものなのです。人間修行といえるかも。


まいが無事に魔女になれたかどうかは不明ですが、少なくとも、おばあちゃんが魔女にとって最も大切だと言っていた「自分で決めて、決めたことをやり遂げる」少女に成長したことが『西の魔女が死んだ』に続いて収められている短編『渡りの一日』に描かれています。

まいはおばあちゃんの教えをしっかり守ったのでしょう。

私も今からでも魔女修行に励まないと。


ところで『西の魔女が死んだ』には、まいの「魔女修行」と並行して「死んだらどうなるのか」というテーマが描かれています。

それについては、声の書評でお話ししましたので、もしよかったらお聞きくださいね。
stand.fm
音声での書評はこちら
【パーソナリティ千波留の読書ダイアリー】
この記事とはちょっと違うことをお話ししています。
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西の魔女が死んだ
梨木香歩(著)
新潮社
中学に進んでまもなく、どうしても学校へ足が向かなくなった少女まいは、季節が初夏へと移り変るひと月あまりを、西の魔女のもとで過した。西の魔女ことママのママ、つまり大好きなおばあちゃんから、まいは魔女の手ほどきを受けるのだが、魔女修行の肝心かなめは、何でも自分で決める、ということだった。喜びも希望も、もちろん幸せも…。その後のまいの物語「渡りの一日」併録。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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