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■関西ウーマンインタビュー(寺社仏閣編)


太田垣 亘世さん(尼崎えびす神社 宮司)

異なるものも融合させると、新しい物事につながる

太田垣 亘世さん
尼崎えびす神社 宮司
一際目立つ、高さ17メートルの大鳥居が目印の「尼崎えびす神社」。創建は醍醐天皇の時代(897年)以前とされ、地元では商売繁盛・家内安全の神様「尼のえべっさん」として親しまれています。

宮司一家の三姉妹・次女として生まれた太田垣亘世さんは、全国でも珍しい女性の宮司であり、前職はキャビンアテンダントというキャリアの持ち主です。

「尼崎えびす神社」での日々のお仕事に加え、ニューヨークでの七五三や開運マナー講座、在日外国人向けラジオ番組の英語放送担当、地元商店街の「阪神タイガース優勝祈願のマジック点灯式」での祈祷など、ローカル&グローバルに活躍されています。

「『和もの=神社はダサい』と一度は海外に逃げ出した」という太田垣さんが、神職に就くきっかけとは何だったのでしょうか。
「逃げ続けてきた物事」の大切さを痛感したことが転機に
キャビンアテンダントをされていたそうですが、「いずれは神職に」と考えていたのですか?
全然、考えていませんでした。むしろ、神社が嫌で嫌でたまらなくて脱出することばかり考えていたくらいなんです(笑)。

私が小学生の頃というと、世間ではマクドナルドやサーティワンアイスクリーム、ソニープラザといった海外ものが流行り、「インターナショナル」という言葉がもてはやされていた時代。

子どもだったので、中身をわかっていないから、見た目やイメージから「海外もの、かっこいい」「和もの=神社はダサい」と思っていたんです。

堀ちえみさん主演のドラマ「スチュワーデス物語」を観て、「スチュワーデスだったら、海外に逃げられるわ」と。そこからの「逃げ出すぞ」パワーは凄まじいもので、中学・高校・大学生になっても思いは変わらず。

海外で暮らそうと、日系ではなく、外資系のオーストラリア航空に就職しました。
それほどまでに嫌だった神職に就くきっかけは何ですか?
逃れるために選んだはずの外資系の航空会社だったのに、そこで向き合わなければならなくなったんです。最初のきっかけは面接試験でした。

今では差別につながるのでありませんが、当時は応募書類に親の職業欄があって、「神道」そのままとキリスト教神父を表す「プリースト」を組み合わせた「シントウ プリースト」と記載したら、「この職業は何ですか?」「どんな宗教ですか?」と尋ねられました。

「日本オリジナルの宗教です」など端的に説明して切り抜けて採用されるも、今度は入社時期が半月ほど遅れることに。後で理由を聞くと、神道がどういう宗教なのか、一説には「戦争との関わりが大きい」という情報が出回っていたため、テロなどへの影響を調べられていたそうです。

自分がきちんと説明できなかったことで誤解や悪い印象を生んでしまっていて、すごくショックを受けました。

入社後も13カ国のさまざまな国籍の人たちと働く中で、自分の国のことや文化を知らないことがコミュニケーションの壁になると痛感したんです。
「自国の文化を知らないことがコミュニケーションの壁になる」とは?
フライトごとにチームが変わるので自己紹介から始めるのですが、自分がどういう人間かを説明する時に、生まれ育った国の話が出てきます。でも、私は今まで逃げてきましたから、自分の国や文化のことをほとんど語れません。

そのために会話が続かず交流できないこともあり、自分の国のことを知らないのは恥ずかしいし、知っていたらもっと仲良くなれるんだろうなあと、本を読むなどして知識を増やすようになると、あれほど避けてきたのにおもしろいと感じてきたんです。

たとえば、文化や歴史を知ると、日本人の民族性が見えてきて、機内での日本人の行動もこういった文化に由来するものなんだと納得できました。

日本文化を勉強して気づいたのは、生まれ育った国を理解することは自分自身を理解すること。交流する中で、お互いの国のことを話すことで、「こんな環境で育ったから、こんな価値観や行動になるのだ」と相手に対する想像力の土台にもなるんだと思いました。
「日本文化を知りたい」という気持ちが、今のお仕事につながったんですね。
日本の文化をもっと学びたいと父に相談したところ、「神職の勉強をすれば、学びながら資格も取れるぞ」と(笑)。

30歳を目前に控え、いろんな意味で地に足をつけたいという想いもありましたから、2000年のシドニーオリンピックのオフィシャルエアラインという華やかなフライトを経験した後、神職の世界に飛び込みました。
異なることも融合させれば、新しい物事を生む
マナーや開運の講座講師やニューヨーク赴任宮司、尼崎市国際交流協会理事として市内在住の外国人向けのラジオ放送に関わるなど、多彩に活躍されていますね。
神職に加え、キャビンアテンダントや海外経験、英会話力、マナーやコミュニケーションスキルなども注目されてお声がけいただくことが多いです。

「日本文化とマナー」「日本文化・マナー・コミュニケーション」「開運!しあわせビジネスマナー講座」といったタイトルで講座させていただいています。近年はインバウンド対策に力を入れている自治体からの依頼もあります。

航空会社からは「日本文化を知らない日本人クルーのトレーニングを担当してほしい」との依頼もあり、以前の私のような日本文化を知らない日本人がいっぱいいるんだとも。

所属する神道国際学会では、海外経験があるということで、2007年から2年ほどニューヨークで赴任宮司を経験しました。現在でも国際七五三の時期にはニューヨークで神事を執り行っています。

こういった経験から、キャビンアテンダントと神職、一見異なるものでも、資料をクリップでぴっと留めるみたいに融合させると、新しい物事につながるのだと気づきました。

特に、キャビンアテンダント時代に培ったマナーやコミュニケーションと、神職における開運はつながりが密接だったんだと思います。
キャビンアテンダント時代に培った「マナーやコミュニケーション」と、神職における「開運」のつながりとは?
日々、神社を訪れるさまざまな人とおしゃべりします。

何気ない日常会話から始まり、次第に「病気をしてな」と苦労話などを打ち明けてくださるようになり、愛情を持って聞き続けていると、「夏祭り、いつ?」「何か協力するわ」とこちらを助けてくださるように。コミュニケーションからいろんなことが始まるんだなと思いました。

出会う人みんなが自分にとって「いい人」ばかりではなく、わがままな人、文句を言う人などいますから、その時々の自分の気持ちによってツンツンしてしまったこともありますが、こちらがニコニコ話していたら、相手がだんだんとバツが悪そうになって態度を改めてくれることがあり、こちらの態度によって相手が変わるのだと思いました。

また、さまざまな人の悩みを聞いていると、共通してその原因はマナーやコミュニケーションにあるのではないかと思うことが多く、少しアドバイスをすると人間関係が円滑にいくことも。

私たちは人間関係の中で生きていますから、神様に開運を一所懸命お願いしたところで、あいさつしないなどマナーができていない人には運が向かないと思うんです。

私自身がキャビンアテンダントとして培ってきたマナーやコミュニケーションスキル、宮司として多様な人たちと出会う日々の中で感じてきたことを、「自分自身を幸せに導く開運マナー」としてお伝えしています。
それが月1回開催されている「しあわせ講話」ですね。
「しあわせ講話」では、神道や日本文化を伝えるとともに、心の持ち方やマナーなどをお伝えしています。

「マナー」というと、行儀・作法など堅苦しいものをイメージするかもしれませんが、「man=人間」に比較級の「er」がついているもの、より人間らしく生きるための便利ツールなんです。

たとえば、朝会ったら「おはようございます」というのは普通のマナーですが、プラス一言「お元気ですか?」「お久しぶりですね」「あたたかくなりましたよね」と付け加えるだけで印象も変わりますし、そこから展開することもあります。

名刺の渡し方やお辞儀の仕方など特定の場面にのみ有効なものではなく、「どうしてそうするといいのか」と一つひとつの行為を掘り下げて、根本にある想いや考え方を日常的に実践することが大事だと考え、そういったことをお伝えしているんです。
それぞれの「しあわせ」のために
これまでにどんな「壁」または「悩み」を経験されましたか?
ニューヨークでの赴任宮司時代にも改めて、海外で神道を伝えるのはすごく難しいと痛感しました。

この地の言葉というのは魂を持っていますから、日本人であれば「お神輿」という言葉を聞くと、頭の中でひらめくものがあると思います。

海外では「お神輿」では伝わらないので、「お祭りの時に神様の魂を入れて町を練り歩く乗り物です」、つまりは「ポータブル(持ち運び可) シュライン(聖なる建物)」と合理的な英単語を使って説明するしかありません。

でも、神様の乗り物を「ポータブル」と表現するのは深みがなく、神社用語を英訳すると信仰心が飛んでしまう。最終的には宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」を題材にして説明すると、より伝わるということを発見しました。

改めて海外で宗教を伝える難しさを実感した出来事ですが、「日本ではどうだろう?」と見つめ直すきっかけにもなったんです。
海外から日本を見つめ直して、どうでしたか?
日本でも神道や日本文化は深みのあるものと思われていないのではないかと思い当たったんです。

たとえば、お宮参りにジーパンで来たり、拝殿に裸足で上がったり、ご祈祷中に携帯電話が鳴ったりしゃべり始めたりする場面を見てきました。さらには、大学や専門学校に講演に行くと、日本文化や神道について海外と同じような反応が返ってきます。

ずっと日本でいたら、「こういう時代だから仕方ない」と片づけていたかもしれません。でも、一度海外に出てみたからこそ、日本でも日本文化や神道を伝えることを大事にしていこうと思えたんです。

それからは、七五三まいりなどの行事や学校等での講演時に、「(千歳あめを見ながら)どうして袋に亀と鶴が描かれているのでしょうか?」「鳥居は何のためにあるのでしょうか?」と神社にまつわるものをクイズとして出題しています。

クイズ形式にすれば、わからなくても、一度は自分で考えてみよう、答えてみようと思ってもらえると考えたからです。
国内外で神道や日本文化のこと、その大切さを発信されておられるのですね。太田垣さんにとって、神道とは何でしょうか?
神道は教義・経典を持っていませんし、信者・入教の概念もありませんから、縛られるものがないんです。「八百万の神(やおよろずのかみ)」という言葉に代表されるように、いろんな自然のものに魂が宿るという考え方もおもしろい。つまり、寛容なんです。

日本人の宗教性に関するアンケート調査などによると、半数以上が「無宗教」と回答していると言われていますが、日々神社にいますと、日本人の宗教性は結構強くあるように思います。

何か見えない力を信じることを「信仰心」というのであれば、みなさんにもあるのではないでしょうか。御守りや縁起物、石などの幸運グッズもその類になるのだと思っています。

私にとって信仰心とは、自分の内なる力とつなげてくれるもの。私自身、これまでの人生において「信仰心」に大いに助けられてきました。

自分の意志を通す時に助けてくれ、弱った時には強さを与えてくれます。困難に遭遇した時、憂鬱のままに生活することもできますが、困難を乗り越えてもっと高いところに行くという意志をもって生活することもでき、信仰心は乗り越える原動力になります。

日常に神様を迎え入れることはとても大切なことではないかなあと思うんです。
太田垣さんに神社内を案内いただきながら、「これまで興味を持ってこなかった人が、神道や日本文化に親しむためには、どういった切り口から入るといいのか」についてうかがいました。

「身近なことから疑問を持つことです。

『ただいま』と靴を脱いで家に入りますが、海外では靴を脱がない国もあるのにどうして? ごはんを食べる時はお箸を使いますが、韓国では鉄製なのに、どうして日本では木製なんだろう?

たとえば、『ただいま』と靴を脱ぐ文化。昔、お米は高床式の貯蔵庫に保存していました。お米は神様のお供え物となるくらい尊いものですから、取りに行く際に泥が付いた履物で上がることは失礼にあたると、足をきれいにして上がったということに由来しています(諸説あり)。

私たちが何気なくしている行為には日本文化とつながるものがたくさんあります。疑問を持って調べると、『なるほど、そういうことか』と納得できたりおもしろい発見があったりして、『もっと知りたい』と芋づる式に楽しい疑問や発見が見つかるようになります」(太田垣さん)

「尼崎えびす神社」おすすめの場所など
月像石(つきいし)
1969(昭和44)年7月20日に「アポロ11号」が月面着陸を果たした記念すべき日に和歌山県で発見されたという奇石。太田垣さんのおじいさまが情報を聞きつけて、取りに行かれたそうです。「触れると、心が落ち着き、日々のストレスや疲れが癒されますよ」と太田垣さん。
ご朱印
太田垣さんが妹さんと一緒に考えたというご朱印。ほがらかに笑う、えびす様が印象的です。今年から左上に季節ごとに変わるオリジナルスタンプを押印。3月は「ひな祭り」、4月は「おいなりさん(写真のご朱印)」、5月は「菖蒲、鯉のぼり、菅原道真公」と、「来月は何かな?」という楽しみも。
太田垣 亘世さん
(おおたがき のぶよさん)
立命館大学国際関係学部卒業後、オーストラリア航空の客室乗務員として香港に6年間在住。2000年のシドニーオリンピックのオフィシャルフライトを経験した後、退職。国学院大学神職養成科を修了し、神職の資格を取得。「えびす宮総本社 西宮神社」での研修後、2007年に実家の「尼崎えびす神社」に奉職。その後まもなく2009年まで2年間、ニューヨークで赴任宮司を務めた。2012年に宮司に就任。2016年より「尼崎市国際交流協会」理事を務めるほか、各地でマナーや開運に関する講師業も行っている。
尼崎えびす神社
尼崎市神田中通3-82
TEL:06-6411-3859 HP: http://www.amaebisu.com/
BLOG: https://ameblo.jp/amaebisu
(取材:2018年4月)
「一見異なるものでも、資料をクリップでぴっと留めるみたいに融合させると、新しい物事につながる」という太田垣さんのメッセージが印象に残っています。

神職とキャビンアテンダントと仕事だけに限らず、仕事や趣味、好きなこともそうしてみるそうです。たとえば、宮司の仕事が忙しくなり、各地で行っていた「マナー講座」という好きなことがしにくくなってしまったそうですが、「仕事×好きなこと」の発想で、社務所で「しあわせ講話」を開催、さらには1対1もしくはグループ単位の「開運マナー教室」を企画中とのこと。

地域を活性化する取り組みにも尽力されていて、ニューヨークでの七五三では「尼崎えびす神社」の周辺地域の人たちからタンスに眠っている着物を募って海外で無料レンタルする試みも。日本では「この着物を海外で着てくれる人がいるなんて嬉しい」、ニューヨークでは現地に着物がないため「着ることができるなんて」と喜ばれているそうです。地域を巻き込んだ国際交流になっています。

神職、キャビンアテンダント、国際交流、コミュニケーション、マナー、地域といった仕事、これまでの経験、好きなことなどを組み合わせて、想いを膨らませながら、太田垣さんらしい物事をつくってこられたんだと思いました。
小森 利絵
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP:『えんを描く』

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