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サラダ記念日(俵万智 )

33年ぶりに読む

サラダ記念日
俵万智(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

今回ご紹介するのは、俵万智さんの『サラダ記念日』。

サラダ記念日の初版発行は1987年5月8日。私は出版されてすぐに買って読みました。

私が五七五七七の調べですぐに思いつくのは
東の 野にかぎろひの 立つ見えて
かへり見すれば 月傾きぬ
大好きな柿本人麻呂の一首です。

私は短歌と和歌の違いもわからない人間です。そんな私でも、すっと理解できたのが俵万智さんの短歌。
この味がいいねと君が言ったから七月六日はサラダ記念日
「嫁さんになれよ」だなんてカンチューハイ二本で言ってしまっていいの
難解な言葉は何一つ入っていません。

難解どころか「サラダ」や「カンチューハイ」など、短歌に入れていいのかと思うような日常のかけらが散りばめられていて、何か難しいものだろうと思い込んでいた短歌がグッと身近になったものです。

今回、番組で紹介するために33年ぶりに『サラダ記念日』を読みました。

手紙や、電話(ケータイではない)など、小道具には若干の時代を感じるものの、心情には全く古さを感じません。

恋、仕事、近所の人々との触れ合いなどの日常を奇をてらうことなく平易な言葉で切り取ってあるからこそ、30年以上経っても普遍性を持ち続けられるのでしょう。

しかし普遍性と平凡さは違います。

俵万智さんの句が誰にでも理解できるからといって、誰にでも作れるのではないのです。

俵万智さんの紡いだ三十一文字は、これからもずっと残るだろうと改めて感じました。

ところで、33年前に読んだ時は恋愛の甘い句ばかりに目がいったのですが、今読むと、恋の始まりから終わりまでが描かれていたのだと気がつきました。
「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ
と言っていたのに、
「じゃあな」という言葉いつもと変わらぬに何か違っている水曜日
同じもの見つめていしに吾と君の何かが終ってゆく昼下がり
となり、最後は
君を待つことなくなりて快晴の土曜も雨の火曜も同じ
と謳っていて、最短時間で読める小説のよう。

読んだことがない人はもちろん、昔読んだ人にも再読をお勧めしたいです。
サラダ記念日
俵万智(著)
河出書房新社
生きることがうたうこと…うたうことが生きることーなんてことない24歳が生み出した感じやすくひたむきな言葉。31文字を魔法の杖にかえ、コピーライターを青ざめさせた処女歌集。現代歌人協会賞受賞。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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