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タカラヅカ 夢の時間紀行(細川貂々)

時代が変わっても宝塚ファンの心理は変わっていない

タカラヅカ 夢の時間紀行
細川貂々(著)
細川貂々さん。『ツレがうつになりまして。』でお名前は存じておりました。関東の方なのに、宝塚ファンが高じてついに宝塚市に移住されたことも。でも作品は読んだことがなかったのです。なぜか。

今年の四月、宝塚市立図書館に本を借りに行って偶然拝見した「タカラヅカ夢の時間紀行展」。そこで昨年出版された著書の一部を垣間見て、これは本体も読まねばと思ったのでした。

このコミックエッセイは、宝塚花の道でまったり過ごしている主人公が、100年見守ってきた花の道の桜の精に連れられて過去にタイムスリップするというストーリーです。

最初に連れられて行ったのは、明治の終わり。小林一三さんが「小さな湯の町宝塚に♫」梅田から鉄道を敷いたところ。

大理石のお風呂が売りの宝塚新温泉の隣には日本初の室内プールを開業したものの、温水機能がなかったのと男女競泳が許されなかったこともあり、プールは失敗に。

そこで小林一三はプールを劇場に作り変え、当時流行った三越少年音楽隊の向こうをはって、宝塚唱歌隊を作った……くらいは、宝塚ファンにはよく知られていることですね。

また、最初に作られたのが花組で、次に月組ができたのも知っていました。でも、なぜ月組が作られたのかはご存知でした?

タカラジェンヌたちの純真無垢、花のような舞台をこよなく愛する人もいる一方で、レベルが学芸会だ、もっと大人の芸を見たいという人も現れたんですって。

そこで、二つ目の組 月組を作り、若手を配置。高度な芸は花組が担当、これまで通り若さ・無邪気さは月組が担当することになったとか。知らんかった〜。

また、作られたばかりの宝塚大劇場には空調がなく、暑い時には客席の窓を開けて公演をしていて、蝉の声で台詞が聞こえない……なんていう具体的なエピソードが満載で、思わず私も当時にタイムスリップしたような気分。こういうところは文章よりもコミックですねぇ。

でも、ただ歴史をたどっているだけではありません。厳しいことも言ってくれているんです。

例えば……
2000年に取り入れられ、すぐウヤムヤになった「新専科制度」には、
”この後トップになった人たちは、準トップからの昇進組なので、 新専科制度のイミがあったのか不明” (『タカラヅカ 夢の時間紀行』P140より引用)
とチクリ。本当に、アレはなんだったのかしら……

また2009年に、A,B席を減らして、SS席、S席を値上げしたことにも、偽らざるファンの声をあげてくださっていて、「よく言ってくださった!」私もそう思いましたとも。多分、多くのファンが共感されることと思います。

とは言え、桜の精に連れられてたどる宝塚歌劇の100年はとても楽しかったです。

その大半が生まれていない時代の話なのに、同じ宝塚ファンの目線で描かれているから気持ちがわかる。時代が変わっても宝塚ファンの心理はあまり変わっていないのかも。

ところどころに登場する「阪急電車」の独り言のページも好きです。
宝塚ファンにはぜひお勧めしたい一冊でした。
タカラヅカ 夢の時間紀行
細川貂々(著) 亜紀書房
憧れの宝塚歌劇はこうして誕生した!! 今日に続くタカラヅカの人気と隆盛の秘密とは!? いつの時代も胸を熱くした女子たちの想いとはー出典:楽天

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の『読書ダイアリー』
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon



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