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新敬語「マジヤバイっす」(中村桃子 )

「マジっすか」が敬語ってマジっすか?! 

新敬語「マジヤバイっす」
社会言語学の視点から
中村 桃子(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

今回ご紹介するのは、中村桃子さんの『新敬語「マジヤバイっす」 社会言語学の視点から』

まずはタイトルがいかにも不審。

「マジヤバイっす」が新しい敬語?そんなことってアリっすか?!

「っす」は「です」を略したものであるから、それを敬語と呼ぶことに抵抗を感じつつ、読みました。

著者 中村桃子さんは関東学院大学の教授で、専攻は言語学。

お仕事がら若者言葉を日々お聞きになっているわけですが、1990年代になって男子学生たちが「〜っす」「〜っすね」という話し方をしだしたとおっしゃっています。

「っす」「っすね」は「です」「ですね」の略語。中村さんはこれを「ス体」と名付けられました。

中村さんの調べでは、最も古い「ス体」の出現は1954年(昭和29年)。

当時朝日新聞に連載されていた『サザエさん』で、左官屋さんが「仕事はすんだんすが(仕事は済んだのですが)」と言っています。

そういえばテレビで放送されている『サザエさん』でも三河屋に勤めているサブちゃんなんかがそんな話し方をしていたような気がします。

これは職人さんや御用聞きといった、職業人がお客様に向かってしゃべる「ス体」ですね。

では、学生(主に男子)は、誰に向かって「ス体」で話すかというと、主に先輩たちに対して。

運動部の学生が、先輩とすれ違うとき、「ウイーッス!」と大きな声で挨拶する、あのパターンです。

逆に先輩は後輩に対して「ウィーッス」とは言わないのだと、中村さんは指摘しておられ、それについて深く考えたことがない私は、なるほど、と思いました。

上の、職業人とお客様との関係でも、お客様がお店の人に「っす」とは言いませんから、「ス体」には敬意のニュアンスが含まれると考えても良いのかもしれません。

ではなぜ、敬意を表するのに、言葉を略すのか。

それには日本人らしい気配りがあるようです。

「慇懃無礼」という言葉があるように、あまりにも丁寧だと、逆に失礼な印象を与えるという考え方が一つ。

もう一つは丁寧な言葉づかいが、相手との間に壁を作るという考え方。

「いつまでたってもあの人は私に対して敬語を使う。私に親しみを持ってくれていないんだな」

そんな感情が生まれることは私も理解できます。

中村さんは、最近のテレビCMで「ス体」を使う場面が多くなっていることを指摘しておられます。

例えば、携帯電話の某キャリアのCMで、鬼に扮した菅田将暉さんが「あ、桃ちゃん(桃太郎)久しぶりッス」と言っていましたし、某カップ焼きそばのCMでは、賀来賢人さんが「こってりッス」と言っていますね。

イケメンがしゃべると「ス体」もなんだかおしゃれ。

おまけに、関西のガス会社のCMでは、好感度抜群の上戸彩さんが「さすがッス」と言っていて、もはや「ス体」は誰にも受け入れられるもののよう。

今後、普通の人の会話にもどんどん「ス体」が浸透していく予感がします。(私も、たまに「マジっすか!?」と口走ることあり)

うっすらとした敬意を入れつつ、相手との垣根を作らない、それが「ス体」。

だとしたら、これは新・敬語と認定しても構わない気がしてきました。

冒頭で「マジヤバイっす」が敬語だなんて、そんなことってアリっすか?と書きましたが、私の結論は「アリっす!」。

とは言え、実際のところは否定する人が多いよう。

それについて中村さんは、WEB掲示板に寄せられた投稿を実例として挙げておられます。

その内容は、敬語のつもりで上司に「マジやばいっす」と言ったら冷たい目で見られ気分が悪かった、というもの。

それに対する書込みの多くは「敬語のわけがない!」で、なかなか激しい口調のものも多く、プチ炎上の様相を呈していました。

言葉は時代によって変わるもの。

「ス体」は新敬語として生き残るのかどうか、興味深く見守りましょう。
新敬語「マジヤバイっす」
社会言語学の視点から
中村 桃子(著)
白澤社
「そうっすね」「マジっすか」など、ヤンキー、ガテン系、体育会系の若者ことばと言われる「っす」言葉。日常会話からメディアまで、この言葉の使われ方を分析し、その形成過程と変化していく社会的意味づけを探る。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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