丁寧に生きるという選択
ライフスタイル 2024-06-12
心理カウンセラーのバックグラウンドをいかし、英会話講師として「コミニケーションレッスン」を展開中。 半生を英国、ヨーロッパのライフスタイルに関わってきたことから、それらの経験をもとに独自のレッスンを提供している。「五感+plus」を使ってコミュニケーション能力を磨くレッスンは、本格的英国サロンで行われている。
RumiBaxter
BROG:http://ameblo.jp/rumi-b/
私たちが「生きる」中で、たくさんの選択をしています。 その選択は、意識したものから無意識に選んでいるもの、とるに足らない小さな選択から人生の岐路に立たされた大きな選択まで、その種類も様々。「丁寧に生きる選択」というライフスタイルは、未来へのキーワードでもあります。
東京都同情塔 |
六月、いよいよ梅雨入りし、そして一年の半ばの月ですね。日本の一年の中でも特に気候の変化が感じられる時期ですが、皆様いかがお過ごしですか?
最近、九段理江氏の作品『東京都同情塔』を読みました。芥川賞受賞作に興味を持ったというより、生成AIと作家が「協力」してどんな言葉を、そしてどんな作品を生み出したのだろうかということに大きく興味を持ったからです。
生成AIの言葉はこれからの小説、そして文字で思考や感情を表すというクリエイティブな文学作品の世界に新たな道を切り開くのでしょうか。
小説の舞台は近未来の東京。御苑前に建設が計画されている刑務所を取り巻く設定です。若手女性建築家がその設計に携わり、彼女の言葉、それを発展させる生成AIの言葉が小説の中で巧みに使われています。
罪を犯す人々は、罪を犯さなければならない環境に生きたことで同情されるべき存在、「ホモミゼラビス」と呼ばれています。ホモミゼラビスを住ませる、世界で最も快適な刑務所を「東京都同情塔」とする建築計画が進んでいます。
現実には建設されなかったザハ・ハディドがデザインした国立競技場が同情塔建築予定地の横にすでにそびえたっています。その二つの建築物はパブリックスペースでつながり、そこは社会の同情、共感、連帯を育む場所だというのです。
ホモミゼラビスと対極にある、「ホモフェリクス」と呼ばれる幸せな人々が小説の中での近未来東京の社会に存在しています。ホモフェリクスとホモミゼラビスの基盤とする精神は同一のものであり、同じ平和を求める同志だとの理想の下、都市構想が進んでいるのです。
この小説を読んで、小説の世界がまるで現実社会のパロディーであるかのような皮肉を感じました。今の現実の中ではそのような理想すら空虚に感じるからです。現実社会の歪みが改めて深く突き刺さるようでした。そんな歪みの中、小説内で書かれているたくさんの対比が非常に興味深い読書経験でもありました。
知人のイギリス人はかつて東京を「混沌の中に存在する信じられない秩序の存在」と表現しました。この感想は、東京という都市にあるカオスと秩序の不思議な融合を象徴しているようです。『東京都同情塔』は、そのカオスを言葉の力で読者に伝え、現代社会の矛盾や混乱、それでも流れていく個々の日々の中でのつぶやきを表しているのでしょうか。
この作品は、作者と生成AIとのコラボレーションから生まれた新しい文学の可能性を示している気もしました。言葉の選び方や、その響きの中で、興味深い部分がたくさんあったからです。
最近、九段理江氏の作品『東京都同情塔』を読みました。芥川賞受賞作に興味を持ったというより、生成AIと作家が「協力」してどんな言葉を、そしてどんな作品を生み出したのだろうかということに大きく興味を持ったからです。
生成AIの言葉はこれからの小説、そして文字で思考や感情を表すというクリエイティブな文学作品の世界に新たな道を切り開くのでしょうか。
小説の舞台は近未来の東京。御苑前に建設が計画されている刑務所を取り巻く設定です。若手女性建築家がその設計に携わり、彼女の言葉、それを発展させる生成AIの言葉が小説の中で巧みに使われています。
罪を犯す人々は、罪を犯さなければならない環境に生きたことで同情されるべき存在、「ホモミゼラビス」と呼ばれています。ホモミゼラビスを住ませる、世界で最も快適な刑務所を「東京都同情塔」とする建築計画が進んでいます。
現実には建設されなかったザハ・ハディドがデザインした国立競技場が同情塔建築予定地の横にすでにそびえたっています。その二つの建築物はパブリックスペースでつながり、そこは社会の同情、共感、連帯を育む場所だというのです。
ホモミゼラビスと対極にある、「ホモフェリクス」と呼ばれる幸せな人々が小説の中での近未来東京の社会に存在しています。ホモフェリクスとホモミゼラビスの基盤とする精神は同一のものであり、同じ平和を求める同志だとの理想の下、都市構想が進んでいるのです。
この小説を読んで、小説の世界がまるで現実社会のパロディーであるかのような皮肉を感じました。今の現実の中ではそのような理想すら空虚に感じるからです。現実社会の歪みが改めて深く突き刺さるようでした。そんな歪みの中、小説内で書かれているたくさんの対比が非常に興味深い読書経験でもありました。
知人のイギリス人はかつて東京を「混沌の中に存在する信じられない秩序の存在」と表現しました。この感想は、東京という都市にあるカオスと秩序の不思議な融合を象徴しているようです。『東京都同情塔』は、そのカオスを言葉の力で読者に伝え、現代社会の矛盾や混乱、それでも流れていく個々の日々の中でのつぶやきを表しているのでしょうか。
この作品は、作者と生成AIとのコラボレーションから生まれた新しい文学の可能性を示している気もしました。言葉の選び方や、その響きの中で、興味深い部分がたくさんあったからです。
喋った先から言葉は全て、他人には理解不能な独り言になる、独り言が世界を席巻する。(「東京都同情塔」より引用)
僕たちが同じ人間でありながら違う人間であることの、その決定的な違いの正体をぼくに教える。彼女は本当に未来を見ることができ、僕には未来を見ることができない。(「東京都同情塔」より引用)
このような文章を通して、私自身、矛盾や切なさ、不安の先にある感情に共感できたこの小説は非常に興味深いものでした。その言葉を紡いだのが作者本人なのか生成AIなのかはもはや問題ではなく、単なる小説を超えて、私たちの社会の現実を深く掘り下げ、その中で見いだされる価値や意味を問いかける作品として有意義だと感じました。読み終わった後の一抹の心地悪さも含めて、おすすめの本です。
バックスター ルミ
バイリンガルライフコーチ
バイリンガルライフコーチ
心理カウンセラーのバックグラウンドをいかし、英会話講師として「コミニケーションレッスン」を展開中。 半生を英国、ヨーロッパのライフスタイルに関わってきたことから、それらの経験をもとに独自のレッスンを提供している。「五感+plus」を使ってコミュニケーション能力を磨くレッスンは、本格的英国サロンで行われている。
RumiBaxter
BROG:http://ameblo.jp/rumi-b/
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