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小森 利絵
フリーライター えんを描く

おてがみじかん ライフスタイル 2022-12-21
お手紙とわたし~森嶋也砂子さん編④~

私のまわりにいる「日常の中でおてがみじかんを楽しんでいる人」にインタビュー。6人目は森嶋也砂子さんです。お手紙の思い出や楽しみ方などについてうかがうインタビューを4回に分けて紹介しています。

これまでに「納豆のフタに描く、日常のお手紙編」「お手紙は再び届く編」「『お手紙』をいろイロな視点から見てみる編」とお話をうかがってきて、第4回目となる今回は「“いつか”が詰まった箱セット編」です。

お手紙を書く時のおともや「年賀状をつくったけど出せへんかった事件」、最近書いているお手紙についてお話をうかがいます。

お手紙にまつわるあれこれの「箱」があるとうかがいました。

森嶋さん: 「返事しなあかんな」とか、「いつかご挨拶しなあかんねんけどな」とか、あと「詩の朗読会で手に取った詩集…英語で書かれているから読めへんねん。いつか読もうと思うけど」といったものも入った、困った箱なんです。
ここに入っている納豆のフタのお手紙にもわけがありまして。実は、家族にほめてもらって調子に乗っちゃって(笑)。SNSに投稿していたら、2018年に雑貨店で展覧会を開催するまでに至ったんです。

知人の展示を見るためにその雑貨店に行った時、店主さんとお話しする中で、納豆のフタの話にもなって、店主さんが「あれ、私、どこかで見たことがありますよ」って。SNSで見て、納豆のフタって正方形でInstagramサイズだったというところもあって、おもしろいと思ってくださっていたようです。

それで話が盛り上がって、展示することになりました。

展覧会では、私が描いた納豆のフタだけではなく、その場に来てくださった方々にも描いてもらって展示したところ、お菓子のパッケージを観察して描いたものや、フタを2枚使って扉がギィーッと開く仕掛けのものなど、いろんな絵柄や工夫のものが集まりまして。
展示してくださった方々に、その納豆のフタのお手紙を封筒に入れてお返ししようと思いながら。コロナ禍でなかなか会えなくて、この箱の中に未だに入っております。

あ、これは2020年のねずみ年の年賀状です。年賀状をつくったけど出せへんかった事件ですね。

「年賀状をつくったけど出せへんかった事件」、気になります!

森嶋さん: 年賀状の「賀」には「喜び」という意味がありますが、その年はなんだかお祝いする気持ちじゃなくて。この先どうしていこうかなという迷いや悩みが大きくて、出せなかったんです。

それに、だんだんとSNSのほうが、距離感が近くなってきまして。年賀状をやりとりしている人たちとは会わないというふうになってきていたので、そのギャップもうまく飛び越えられなかったんだと思うんです。こうしてつくってはみたものの、出さないまま、箱の中へ。
でも、あの知多半島まで届いたお手紙みたいに、「縁って続けへんな」と思うんじゃなくて。手紙は遅れて届いてもいいものだから。連絡ができる時に、連絡をしたくなった時に、お互いに声を掛け合う感じで、手紙でもやりとりできればいいのかなと、今は思っています。

今年は年賀状を復活しようと思って、気合いを入れ過ぎたんですけど。

森嶋さんお気に入りのお手紙アイテムや、書く時のおともなどを教えてください。

森嶋さん: 今日持ってきたのは、以前「おてがみぃと」に参加するからと思って購入したレターセットです。カフェギャラリーで見つけました。刺繍で描いた絵をモチーフにしていて、かわいらしいなって。
「おてがみぃと」つながりで言うと、このコラム「おてがみじかん」で連載している「誰宛てでもないお手紙」は救いになりました。

手紙を封筒に押し込めるんじゃなくて、そこから詩になるかもしれないし、小説になるかもしれない、誰かとの対話を生み出すかもしれない。そんな余白があってもいいんだよというものを感じたんです。手紙は誰かに届ける目的があるものだけど、そこから「特定の個人」をとってくれたのもおもしろいと思いました。

これは両面テープを使って手づくりしたシールです。
絵柄は消しゴムはんこを押したもので、この消しゴムはんこもオンラインでつくり方を教えてもらって手づくりしたんです。絵と同じなんですけど、下手でも手を動かしていると楽しくなってきて。

そんなふうに、「おもしろそう」「おもしろい」と思っているうちに、いろいろやってしまおうと思っています。今はオンラインでもいろいろなことを習うことができますし、いろいろなものをつくり出している素敵な人たちがいっぱいいるわ~と刺激ももらいます。

最近はどんなお手紙を書いていますか?

森嶋さん: 今書いているお手紙は、幼い頃からの友だちに宛ててです。その友だちとはしばらく会っていなかったんですけど、久しぶりにSNSで再会しました。SNSの投稿で入院するかもしれないと知り、「頑張ってね」という思いを込めて、かわいいふきんと一緒に送ろうと思っています。ふきんを選んだのは、彼女は手仕事がとても上手だったから、いっぱい使ってきた手をねぎらって、自分を労るひとときを届けたいなぁって。

そのほかにも、前回話した法律事務所の代表の弁護士さんが納豆のフタの展覧会に来てくださったのですが、そのお礼を十分に伝えられていないので、「送ります」と話していた本と一緒に手紙を書きたいなぁとか。ショートフィルムを制作している甥っ子に1990年代の戯曲をもらってもらおうかなぁとか。「また、今度」としてきた約束をちょっとずつ果たしている最中です。

先ほどの“困った箱”の中身は少しずつ軽くなりつつあります。その分、また新しいものが入ってくるかも~とも思いながら♪

少しずつ「会う」ことのハードルが下がってきて、そう遠くない未来には、日常が戻ってくるかもしれません。一方で、最新の「会わない」通信のよさも、私たちは知ってしまいました。それでもやっぱり、私は手ざわりや小さな手仕事が大好きなんです。
(2022年1月取材+2022年10月追記)

<お話をうかがって>

年賀状をどうして書くのか? どんな思いを込めるのか? その時の自分の気持ちと合わなければ、無理して書かなくてもいいんだよなということを、この数年思っていました。

仕事などの関係上やむを得ずという場合も、絶対に「年賀状」である必要はなく、「寒中お見舞い」「挨拶状」などさまざまな形式を選ぶこともできるのだと思います。気持ちを表すものなので、それに近い方法を探したり考えたり選んだり。

そうすることで、より気持ちを乗せやすいツールになるのかなと、森嶋さんのお話をうかがって改めて思います。

今回で森嶋さんへのインタビューは最終回です。これまで「納豆のフタに描く、日常のお手紙編」「お手紙は再び届く編」「『お手紙』をいろイロな視点から見てみる編」「“いつか”が詰まった箱セット編」と、お手紙にまつわるさまざまなお話をうかがってきました。

森嶋さんのお話をうかがう中で、改めてお手紙にはいろんな側面があることを感じました。「納豆のフタのお手紙」のように日常からコミュニケーションを多様に豊かにしたり、「息子さんの将来の彼女やパートナーに向けて書き綴ったお手紙」のように未来に思いを託したり、「年賀状をつくったけど出せへんかった事件」のように気持ちに寄り添う形を模索したり。

森嶋さん、お話を聞かせてくださり、ありがとうございました。
profile
レターセットや絵葉書、季節の切手を見つけるたび、「誰に書こうかな?」「あの人は元気にしているかな?」などアレコレ想像してはトキメク…自称・お手紙オトメです。「お手紙がある暮らし」について書き綴ります。
小森 利絵
フリーライター
お手紙イベント『おてがみぃと』主宰

編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP:『えんを描く』
 
『おてがみぃと』
『関西ウーマン』とのコラボ企画で、一緒にお手紙を書く会『おてがみぃと』を2ヵ月に1度開催しています。開催告知は『関西ウーマン』をはじめ、Facebookページで行なっています。『おてがみぃと』FBページ

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