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藤田 由布
婦人科医 レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ

婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2021-07-22
日本人の5人に1人が不眠症

日本人は、5人に1人が不眠の症状を感じています。

日本人がストレスを感じやすい民族ということは、実は遺伝子レベルでも研究されています。

不安を感じやすい性格は、セレトニントランスポーターという遺伝子が関係していることがわかっているのですが、どうやら日本人の97%は不安を感じやすい内向的な気質が関与している遺伝子を持っていることが解明され、そのせいで不眠症の人も多いそうなのです。

事実、不眠はさまざまな健康障害につながっています。
快眠は健康の基本です!
内科医も、精神科医も、いろんな医師たちが口を揃えて言うのは、

「睡眠は心身の健康の基本である」と。

不眠が長く続くと、うつ病になるリスクも高くなります。

また、不眠は、高血圧や糖尿病にも関連しているという報告もあります。

不眠を改善することは、生活習慣病の予防においても大事ですね。
寝酒は、ダメなの?
寝る前にお酒を飲む習慣がありますか?

夕食時の軽い晩酌は、短時間の催眠作用があり、眠りにつきやすいのです。しかし、すぐに覚めてしまい、朝までぐっすりいかない事が多いです。

お酒は、ビール、焼酎、ワインのどれであっても、夜間に目覚めたり、浅い眠りとなって睡眠の質を低下させます。

アルコールは続けて飲むと量が増えたり、依存症になる危険もあります。やはり、寝酒を続けるのは、なるべく避けた方が良さそうです。
寝る時刻や時間にこだわりすぎないで
「眠らなくては」と思えば思うほど、かえって頭がさえてしまい寝つきが悪くなること、経験したことありませんか?

ちょうど良い睡眠時間は、6〜8時間と言われていますが、睡眠時間には個人差があり、短くても昼間に眠気で困らなければ気にしなくて良いです。

一般的に、年を取ると睡眠時間は短くなってきます。これも、気にしないで良いです。

ただし、面白いデータも紹介します。アメリカの研究結果で、最も死亡率が低かったのは睡眠時間が7時間の人でした。

日本の総務省による調査では、日本人の平均睡眠時間は7時間40分でした。
あなたの不眠は、どのタイプ?
□ 入眠困難・・・なかなか寝付けない。寝床に入っても30分以上かかってしまう。不安や緊張が強い人がこのタイプです。

□ 中途覚醒・・・いったん眠りについても、夜中に何度も目が覚めてしまう。日本人に最も多いタイプの不眠症で、中高年がこのタイプです。

□ 早朝覚醒・・・予定より2時間以上早くに目が覚めてしまう。いったん目が覚めると、その後眠れなくなってしまう。高齢者がこのタイプです。

□ 熟眠障害・・・眠りが浅く、睡眠時間のわりには熟睡した感じが得られない。

□ 覚醒障害・・・目覚めが悪く、起きてもずっと眠たく感じます。

不眠症のタイプによって、治療法も変わってきます。そして、不眠症の原因も、人によって様々です。

原因によって生活習慣を見直すだけで大丈夫な場合もあります。一方、医師による治療が必要になる場合もあり、対処法も変わってきます。
ぐっすり快眠のための工夫
ぐっすり睡眠することは、脳を休めて疲れを取り除き、ストレスをリセットするなどの役割があり、心と体の健康にとって大切なことです。

まず、寝る前には刺激のあるものは避けましょう。晩ご飯のカフェイン飲料はやめましょう。あと、就寝前のタバコも禁物です。

40℃くらのぬるめの入浴はおすすめです。アロマテラピーや軽いストレッチも心身をリラックスさせる効果があるので、ぜひ試してみてください。

テレビは消して、夜の明るすぎる照明も、眠りの妨げになるので避けましょう。
不眠症を改善するための工夫
昼寝をするなら、30分以内にしましょう。短い昼寝は頭をすっきりさせて、集中力を高めてくれます。ですが、30分以上の昼寝は不快眠りに入ってしまい、かえって逆効果となります。

また、3度の食事と運動も大事です。朝食は身体の目覚めに大切です。空腹で眠れないときは、軽めの消化しやすいものにしましょう。

適度な運動の習慣は、熟睡を促してくれます。眠りたい日に慌てて運動しても効果はあまりないので、やはり運動は習慣づけるのが大事ですね。

針鍼灸は睡眠効果があることは、日常臨床においてもよく経験されています。針鍼灸は、副交感神経の機能を高め、筋肉の緊張を和らげ、 血行を促進し、眠りを促してくれます。お薬に頼りたくないなあって思う方は、ぜひ針鍼灸を試してみてください。
睡眠薬の種類と、かしこい選び方
不眠治療薬は、大きくわけて3種類あります。
睡眠薬の注意として、依存性のあるものはなるべく避けるべきです。

また、一般的に高齢者は、ベンゾ系(ベンゾジアゼピン系)の睡眠薬に注意しなければなりません。なぜなら、筋肉が弛緩する作用があるため、夜間にうっすら覚醒してトイレに向かう途中に転倒してしまう事故が多いからです。

デパスにも注意が必要です。デパスは睡眠薬としても抗不安薬としても使われますが、これも筋弛緩作用が強く、依存性もとても強いです。

いったん依存してしまうと、減らしていくことに苦労することが多く、恐ろしい事に認知機能も低下してしまいます。このように、デパスは医師泣かせの薬として有名です。

睡眠時無呼吸症候群やCOPDを患っている人にも、ベンゾ系の睡眠薬はキケンです。

なぜなら、上気道の筋肉の弛緩が起こり、呼吸抑制も起こりやすいからです。いびきが強い人も、ベンゾ系の睡眠薬は避けるのが賢明です。

また、稀な疾患ですが、閉塞性隅角緑内障という目の病気や重症筋無力症の人も、ベンゾ系の睡眠薬は基本的にダメです。抗コリン作用で増悪するからです。
あと、酒豪家には睡眠薬が効きにくいことが多いので、基本的には、日常生活を見直し、不眠の原因となる生活習慣を改善することが最も大切です。

睡眠薬を服用して不眠が改善してきた人は、減量や休薬することもあります。ただし、症状が改善したからといって自己判断で急に薬を中断したり減量したりしないでください。症状が振り返す場合もありますので、必ず医師の指示に従ってくださいね。
profile
全国で展開する「婦人科漫談セミナー」は100回を超えました。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期障害は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、HPVワクチンのこと、婦人科のカーテンの向こう側のこと、女性の健康にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
婦人科医

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ 副院長
〒530-0013 大阪府大阪市北区茶屋町8-26 NU茶屋町プラス3F
TEL:06-6374-1188(代表)
https://umeda.santacruz.or.jp/

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