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藤田 由布
婦人科医 医療法人 大生會 さくま診療所(婦人科)

婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2020-10-22
「緊急避妊ピル」、ついに薬局で購入できるようになります!

2021年からは医師の処方箋がなくても薬局で購入できます。

日本政府は2020年10月7日、「緊急避妊薬」について、医師の処方がなくても薬局で購入できるようにする方針を固めました。これは、性暴力を含め、望まない妊娠を防ぐ目的です。

日本でも、やっと、です。皆さんはご存知でしたでしょうか。欧州やアジアなど世界の86カ国では、この「緊急避妊薬」は医師の診察なしで購入することができ、日本では国際的な遅れがずっと前から指摘されていました。

ようやく一歩前進です。あとは、誰でもアクセスできる価格になることが重要です。今の段階で「緊急避妊ピル 」の定価は、4000円〜8000円もします。こんな高額では若年層に広く届くのは難しいですよね。

政治家のオジさんオバさん達にも、若い人たちが抱える問題をしっかり感じてとってもらいたいです。

緊急避妊ピルは、「アフターピル」とか「モーニングピル」とも呼ばれています。

1日1錠ずつ内服するいわゆる一般の「避妊ピル」とは違い、緊急避妊ピルは3日(72時間)以内の性行為後の緊急措置として行う内服の避妊方法です。

・コンドームが破れてしまった
・レイプ被害を受けた
・避妊に失敗した

といった非常時に、女性が婦人科を受診して緊急避妊ピルを服用することで、約80%の妊娠を防ぐことができます。
成分や作用とは?
緊急避妊ピルのうち、日本で広く使われているのは、費用的にも質的にも「レボノルゲストレル錠1.5mg」です。この有効成分は、第2世代の強めの黄体ホルモン薬です。
経口避妊薬のトリキュラーやアンジュ、ラベルフィーユ、ジェミーナ(月経困難治療薬)に含有されている黄体ホルモンも、レボノルゲストレルです。

例えば、トリキュラーに含有されるレボノルゲストレルは0.05〜0.075〜0.125mg(3相性)です。ジェミーナに含有されているレボノルゲストレルは0.09mgです。

ここから分かることは、緊急避妊ピルは一般のピルと比べて約20倍ちかくの大量の黄体ホルモンを一度に内服して体内での作用を高めているということです。だからと言って身体に害があるわけではありません。

緊急避妊ピル、つまり大量の黄体ホルモンを服用することで、排卵を遅らせたり、子宮内膜(受精卵が着床する部分)の状態を変化させて妊娠の成立を防ぎます。

ここで大事なのは、緊急避妊ピルはあくまでも緊急的に用いるものだということです。 普段の避妊法には向きません。「アフターピルがあるから普段避妊をしなくて大丈夫」ということでは決してありません。
いくらするの?
緊急避妊は、保健適応ではないので自費診療となります。

保健適応だと3割負担ですが、自費診療だとやはり高めです。婦人科クリニックによりけりですが、相場は8000〜13000円くらいです。正規品からジェネリックのものもあります。

高額ですよね。

私がいつも言うのは、「相手の男性にせめて半分以上は払ってもらってネ!」ということです。

でも、やっぱり、いつも支払うのは女子。腹たつわ。。。

1万円そこらする緊急避妊ピルを使うなら、普段からピルを内服しておくのが賢明かもしれません。一般の経口避妊ピルなら、1ヶ月の費用はだいたい1500〜2500円そこらです。
アクシデントから72時間以内は効果あり
緊急避妊ピルは、1回1錠飲みきりタイプが殆どです。

処方してもらったら、できる限り速やかに服用してください.性交後72時間以内に服用しても完全に妊娠を阻止できない場合もあります。

また、服用後は大量の飲酒などで嘔吐しないように注意してください。嘔吐によってお薬の吸収が十分にできない場合があります。

早い方で3~4日、通常7~10日後に生理のような出血があれば、今回の妊娠は回避されたことになります。

ただし、2週間経っても生理のような出血がない場合は受診をご検討下さい。尿検査や経腟式エコー検査で、妊娠の状態を確認します。

緊急避妊ピルを一度でも服用すると、生理の周期が乱れる場合があります。また、生理不順が継続する場合もあるので、そういった場合は、かかりつけの婦人科でご相談ください。
緊急避妊ピルの副作用はあるの?
緊急避妊ピルの副作用は、吐き気や嘔吐、頭痛などがおこる場合があります。一時的なものですが、心配な時は、吐き気止めを一緒に処方してもらいましょう。

緊急避妊ピルの服用後2時間以内に吐いてしまった場合、かならず医師に相談して下さい。ピル服用後2時間を経過してからであれば大丈夫です。
胎児奇形の原因になったりしない?
緊急避妊薬は、胎児奇形や、将来の不妊の原因にはなりません。
避妊に失敗したまま放置し、望まない妊娠が成立してしまうと、中絶手術をせねばなりません。
服用後に避妊のない性行為をすれば、妊娠の可能性はあります。緊急避妊ピルの服用後、避妊の成功が確認できるまで、コンドームを使うなどの避妊法をちゃんと行って下さい。

中絶手術は、手術後に感染が起こったり、子宮を傷つけて子宮穿刺や腹膜炎などを起こさなければ、将来の妊娠に影響ありません。

とはいえ、やは妊娠中絶の手術は、子宮や母体にどうしても負担をかけてしまうものです。

手術がきちんと終われば子宮も元の状態に戻りますが、ただし、中絶手術の精神的なストレスからホルモンバランスが乱れたりして、卵巣機能に異常が出る可能性は否定できません。

なお、服薬による中絶をおこなう方法は大量出血等の危険性があるため日本では許可されておりません。
緊急避妊ピルの次は?
緊急避妊ピルで妊娠を回避できた!の次は、経口避妊薬を服用するようお勧めします。

経口避妊薬(低用量ピル、避妊ピル、OCとも呼ばれる)は女性側から出来るより確実な避妊方法です。正しく服用していれば、ほぼ100%の避妊効果を継続します。

日本で認可されている経口避妊薬には、マーベロン(ファボワール)、トリキュラー、シンフェーズ、ラベルフィーユ、アンジュがあります。

また、月経困難治療薬(保健適応)は、ヤーズ、ヤーズフレックス、ジェミーナ、フリウェルがあります。

経口避妊薬も月経困難治療薬も、呼び名は違えど全て低用量ピルです。どれも作用機序は同じ、それもそのはず中身が同じですから。

低用量ピルについての詳細は、先月号のコラム『今さら聞けない「低用量ピルって、そもそも何?」』をご覧くださいませ。

ただし、ピルは性感染症の予防にはなりませんし、子宮頸がんの予防にもなりません。

定期的な子宮頸がん検診は大変重要です。過去2年以内に子宮頸がん検査をしていない人は、婦人科で「頸がん検査していないです!」とご相談くださいね。
パートナーが避妊に協力してくれない・・・という時は?
まず、そんなポンコツ野郎は捨ててしまいましょう。

大事なことは、イヤなのに性的なことをむりやりしたり、避妊に協力しないことは「暴力」ということです。我慢しなくてよいのです。

しかるべき専門機関や民間団体にいつでも相談できます。
レイプなど、性暴力の被害にあった場合
もし性暴力被害にあったら、SACHICO(サチコ)(*1)のホットライン(072-330-0799)にお電話して下さい。

このSACHICOという団体は、性暴力にあってまもない(7日以内)女性へ総合的支援を提供しています。
(*1) 特定非営利活動法人 SACHICO
「性暴力救援センター・大阪 SACHICOのSACHICO」は、「Sexual Assault Crisis Healing Intervention Center Osaska 」の頭文字をとって名付け、直訳すると「性・暴力・危機・治療的介入センター 大阪」を表しています。
HP:https://sachicoosaka.wixsite.com/sachico
性暴力やレイプによるものは、緊急避妊薬の公費援助が受けられる場合があります。
1人では不安という女性も、安心して下さい。うちの婦人科にいらっしゃい。飛び込みでも大丈夫です。
性病をうつされていないか、しっかり避妊できるよう、これらの大事な支援を受けられるよう、全力で支援いたします。

どんな形であってもあなたの同意なしに、性的に接触することは性暴力です。また、たとえ接触がなくても、性的な言葉や行動であなたの存在をおびやかすような行為は、性暴力です。

いいですか、あなたにどんなことが起こったとしても、あなたが悪いのではないこと、あなたの責任ではありません。
避妊は女性の当然の権利です
世界保健機構(WHO)は、こう断言しています。

「緊急避妊ピルは、服用できない医学上の病態はなく、服用できない年齢もない」と。

また、ちゃんと緊急避妊ピルの安全性を明言しており、以下のように勧告しています(2018年)。

「意図しない妊娠のリスクを抱えたすべての女性および少女には、緊急避妊にアクセスする権利があり、緊急避妊の複数の手段は国内のあらゆる家族計画プログラムに常に含まれねばならない」と。

いいですか、全ての女性には避妊する権利があり、避妊ピルは私たち全ての女性が簡単にアクセスできるべきものなのです。

初めてだからちょっと不安だなぁ、、、と感じるのは当然のことですので、婦人科では対面でちゃんと説明致します。

どうぞ安心してお気軽に婦人科をお訪ねくださいね。
profile
全国で展開する「婦人科漫談セミナー」は100回を超えました。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期障害は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、HPVワクチンのこと、婦人科のカーテンの向こう側のこと、女性の健康にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
婦人科医

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
医療法人 大生會 さくま診療所(婦人科)
〒542-0083 大阪府大阪市中央区東心斎橋1-14-14 T・Kビル2F
TEL : 06-6241-5814
https://www.sakumaclinic.com/

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