おてがみじかん
ライフスタイル 2020-04-15
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP:『えんを描く』
『関西ウーマン』とのコラボ企画で、一緒にお手紙を書く会『おてがみぃと』を2ヵ月に1度開催しています。開催告知は『関西ウーマン』をはじめ、Facebookページで行なっています。『おてがみぃと』FBページ
レターセットや絵葉書、季節の切手を見つけるたび、「誰に書こうかな?」「あの人は元気にしているかな?」などアレコレ想像してはトキメク…自称・お手紙オトメです。「お手紙がある暮らし」について書き綴ります。
お手紙とわたし~東久美子さん編④~ |
私のまわりにいる「日常の中でおてがみじかんを楽しんでいる人」にインタビュー。4人目は東久美子さんです。お手紙の思い出や楽しみ方などについてうかがったインタビューを4回に分けて紹介しています。
「お手紙は自分とも向き合う時間編」「想像のきっかけに編」「気持ちに光を当てる編」とお話をうかがってきて、第4回目となる今回は「相手がいればこそ編」です。
バースディカードを手づくりして、プレゼントに添えていたという東さん。オリジナルでカードをつくるようになったきっかけやレターセット選びなどについてお話をうかがいました。
「お手紙は自分とも向き合う時間編」「想像のきっかけに編」「気持ちに光を当てる編」とお話をうかがってきて、第4回目となる今回は「相手がいればこそ編」です。
バースディカードを手づくりして、プレゼントに添えていたという東さん。オリジナルでカードをつくるようになったきっかけやレターセット選びなどについてお話をうかがいました。
バースディカードを、ご自身で手づくりされていたそうですね。
東さん:アフリカのベナンで出会った友だちと、互いに帰国した後、子どものお誕生日にプレゼントを贈り合っていたことがありました。その時に、手づくりのバースディカードを添えていたんです。
たとえば、クラフト紙をハガキの大きさに切ってカードをつくり、マスキングテープを旗に見立てて飾り付けて、その上に文字を書いたり、無地のハガキに毛糸で文字を描いたり。
今回は毛糸で文字を描いたバースディカードを再現しました。
編み物で余った毛糸で何かできないかなとぼんやり考える中で、「文字を描いてみたら、どうだろう?」とひらめいて試したんです。ベナンはフランス語が公用語だったので、フランス語で描いています。
東さん:アフリカのベナンで出会った友だちと、互いに帰国した後、子どものお誕生日にプレゼントを贈り合っていたことがありました。その時に、手づくりのバースディカードを添えていたんです。
たとえば、クラフト紙をハガキの大きさに切ってカードをつくり、マスキングテープを旗に見立てて飾り付けて、その上に文字を書いたり、無地のハガキに毛糸で文字を描いたり。
今回は毛糸で文字を描いたバースディカードを再現しました。
編み物で余った毛糸で何かできないかなとぼんやり考える中で、「文字を描いてみたら、どうだろう?」とひらめいて試したんです。ベナンはフランス語が公用語だったので、フランス語で描いています。
20代の頃は百貨店や雑貨店などでかわいいものを見つけて書いていたそうですが、自分で手づくりするようになったきっかけは?
東さん:ベナンで暮らした経験が大きいです。ベナンでは、たとえば洋服にしても、お店に並んでいる既成品を購入するのではなく、好きな布を買って、それを職人さんに仕立ててもらうというスタイルが主流でした。
ある時、ソファカバーを職人さんにお願いしたところ、サイズが違うものが仕上がってきました。またお願いすると時間がかかるので、自分でつくり直したほうが早いとつくり直したのが、自分でものづくりを始めるきっかけ。
アフリカにはすごくかわいい布があり、安価で手に入るので、それからはものづくりを楽しむようになったんです。
帰国したら、日本でも「手づくり雑貨ブーム」が起きていて、雑貨屋さんで作家さんがつくった1点もののカバンやアクセサリーを見かけるようになっていました。大量生産されたものとは違う、ほかにはない手づくりのものは、やっぱり魅力的。帰国後も変わらず、手づくりを楽しむようになりました。
それは、子どもの頃から好きだったことを思い出し、自分を取り戻していくような感じだったかもしれません。
「自分を取り戻す」とは?
東さん:祖母も、叔母も、母も、つくる人で、私も子どもの頃に編み物を楽しんでいました。もともと手づくりのものも、手づくりをするのも好きだったんです。
でも、学校生活を送るうち、友だちなどまわりに合わせようとしていたからでしょうか。自分が好きなものを、自信を持って「好き」と言えず、ぐっと自分の中に閉じ込めるようになりました。
特に、音大時代は、私のまわりにはブランド品を身に付けている子が多かったのですが、私はあまりブランド品を持っておらず、あまりほしいとも思っていませんでした。
自分の好きなものを身に付けている人は少数派だったから、孤独だったんだと思います。
社会人になってからもそうです。自分がいいなあと思うものを身に付けていても「もっと良いブランド品の財布を持ったほうがいいよ」などアドバイスされたこともあり、自分が好きなものを共有できる人がなかなかいませんでした。
みんなが興味のあることに、自分は興味を持てず。今だったら、SNSなどを通して、「好き」を共有できる人とつながることができたと思うのですが、当時はSNSがなかったので、自分が行き来している世界がすべて。
自分の「好き」をなかなか共有できない孤独感がありました。
それがベナンに行ってから手づくりをするようになって、そこで知り合った人たちも手づくりが好きな人が多かったから、自分が好きなものを「好き」と言えて、そのことについて話せるように。帰国後は手づくり作家さんと知り合うことで、自分も自分の「好き」を表現してもいいんだって励まされました。
自分に自信を持てたというか、自分がいいと思うものを信じられるようになったんです。
東さん:ベナンで暮らした経験が大きいです。ベナンでは、たとえば洋服にしても、お店に並んでいる既成品を購入するのではなく、好きな布を買って、それを職人さんに仕立ててもらうというスタイルが主流でした。
ある時、ソファカバーを職人さんにお願いしたところ、サイズが違うものが仕上がってきました。またお願いすると時間がかかるので、自分でつくり直したほうが早いとつくり直したのが、自分でものづくりを始めるきっかけ。
アフリカにはすごくかわいい布があり、安価で手に入るので、それからはものづくりを楽しむようになったんです。
帰国したら、日本でも「手づくり雑貨ブーム」が起きていて、雑貨屋さんで作家さんがつくった1点もののカバンやアクセサリーを見かけるようになっていました。大量生産されたものとは違う、ほかにはない手づくりのものは、やっぱり魅力的。帰国後も変わらず、手づくりを楽しむようになりました。
それは、子どもの頃から好きだったことを思い出し、自分を取り戻していくような感じだったかもしれません。
「自分を取り戻す」とは?
東さん:祖母も、叔母も、母も、つくる人で、私も子どもの頃に編み物を楽しんでいました。もともと手づくりのものも、手づくりをするのも好きだったんです。
でも、学校生活を送るうち、友だちなどまわりに合わせようとしていたからでしょうか。自分が好きなものを、自信を持って「好き」と言えず、ぐっと自分の中に閉じ込めるようになりました。
特に、音大時代は、私のまわりにはブランド品を身に付けている子が多かったのですが、私はあまりブランド品を持っておらず、あまりほしいとも思っていませんでした。
自分の好きなものを身に付けている人は少数派だったから、孤独だったんだと思います。
社会人になってからもそうです。自分がいいなあと思うものを身に付けていても「もっと良いブランド品の財布を持ったほうがいいよ」などアドバイスされたこともあり、自分が好きなものを共有できる人がなかなかいませんでした。
みんなが興味のあることに、自分は興味を持てず。今だったら、SNSなどを通して、「好き」を共有できる人とつながることができたと思うのですが、当時はSNSがなかったので、自分が行き来している世界がすべて。
自分の「好き」をなかなか共有できない孤独感がありました。
それがベナンに行ってから手づくりをするようになって、そこで知り合った人たちも手づくりが好きな人が多かったから、自分が好きなものを「好き」と言えて、そのことについて話せるように。帰国後は手づくり作家さんと知り合うことで、自分も自分の「好き」を表現してもいいんだって励まされました。
自分に自信を持てたというか、自分がいいと思うものを信じられるようになったんです。
だから、カードも「手づくり=オリジナル」にされているんですね。
東さん:今でも百貨店や雑貨屋さんなどでレターセットやカードを見るのは好きなんですけど、今は買うというよりも、見て参考にするという感じです。
つくると、どこにもない、オリジナルのものが出来上がります。「こんなのをつくれたらいいなあ」と思うものが、つくりながら形になっていくのも楽しい。途中で「これは失敗したかも」と思っても、自分が予想もしていなかったものが出来上がって、それはそれでいいと思えます。
でも、手づくりのカードを贈る相手は、「誰にでも」ではありません。手づくりが好きな友だちなど、こういうものをいいと思ってくれる人に限っています。
手紙は、自己表現ではなく、相手があってこそのものだからです。相手に喜んでもらいたいという気持ちがまずあるので、相手が今の流行りのものが好きなら、そういうのを選んで送ります。
また、自分でつくる楽しさを知っていて、想いを共有できる人なら、「手づくり」に対して特別な価値を見出してくれて、メッセージとして書かれているのは「お誕生日おめでとう」というたった一言だけであっても、その一言以上のメッセージを読み解いてくれます。
私自身、手づくりされているものを見ると、「どんなところから、このアイデアが生まれたのか」「どういう過程を経て、この形になったのか」など、一つひとつを想像して、言葉以外のところからもメッセージを受け止めます。手づくりのものには、その人の価値観や人生なども表現されている気がするんです。
ラインも、SNSも、絵文字やスタンプなどがありますが、決められたフォーマットがあり、画面上でできることには限界があります。その点、手紙は言葉だけではない、見た目や質感など、いろいろな情報も込めることができるから自由度が高く、表現しやすいと思っています。
自分が好きなことを表現しながらも、相手によって表現方法を変えているんですね。
東さん:「自分を大事に」とよく言われますが、自分勝手に、自分の好きなようにやるだけでは、幸せになれないと思っています。
手紙はコミュニケーションツールで、相手がいるからこそ、表現できるものがあります。また、自分だけだったら表現できないものが表現できると思うんです。
こうして話をしていても、自分一人で自問自答していても発見できなかった感情や想い、考えを発見できました。それと同じで、相手を意識することで、相手の世界と交わり合いながら、豊かになっていく感じがします。
自分が好きなものを使って、好きなことだけを書いても、自分だけで完結してしまうから発見はあまりないと思うんです。
「あの人はこんなんが好きかな」と考えることで、今まで行ったことのないお店に行くチャンスにつながったり、「私も、こういうのも好きかも」と発見したり。相手を想って選ぶんだけど、そこにはちゃんと、自分がいます。相手の好きそうなものの中から、さらに自分が「あの人にはこれを」と選んでいるから。
そんなふうに、交わり合いながら、自分の世界を広げることも楽しみたいなあと思います。
東さん:今でも百貨店や雑貨屋さんなどでレターセットやカードを見るのは好きなんですけど、今は買うというよりも、見て参考にするという感じです。
つくると、どこにもない、オリジナルのものが出来上がります。「こんなのをつくれたらいいなあ」と思うものが、つくりながら形になっていくのも楽しい。途中で「これは失敗したかも」と思っても、自分が予想もしていなかったものが出来上がって、それはそれでいいと思えます。
でも、手づくりのカードを贈る相手は、「誰にでも」ではありません。手づくりが好きな友だちなど、こういうものをいいと思ってくれる人に限っています。
手紙は、自己表現ではなく、相手があってこそのものだからです。相手に喜んでもらいたいという気持ちがまずあるので、相手が今の流行りのものが好きなら、そういうのを選んで送ります。
また、自分でつくる楽しさを知っていて、想いを共有できる人なら、「手づくり」に対して特別な価値を見出してくれて、メッセージとして書かれているのは「お誕生日おめでとう」というたった一言だけであっても、その一言以上のメッセージを読み解いてくれます。
私自身、手づくりされているものを見ると、「どんなところから、このアイデアが生まれたのか」「どういう過程を経て、この形になったのか」など、一つひとつを想像して、言葉以外のところからもメッセージを受け止めます。手づくりのものには、その人の価値観や人生なども表現されている気がするんです。
ラインも、SNSも、絵文字やスタンプなどがありますが、決められたフォーマットがあり、画面上でできることには限界があります。その点、手紙は言葉だけではない、見た目や質感など、いろいろな情報も込めることができるから自由度が高く、表現しやすいと思っています。
自分が好きなことを表現しながらも、相手によって表現方法を変えているんですね。
東さん:「自分を大事に」とよく言われますが、自分勝手に、自分の好きなようにやるだけでは、幸せになれないと思っています。
手紙はコミュニケーションツールで、相手がいるからこそ、表現できるものがあります。また、自分だけだったら表現できないものが表現できると思うんです。
こうして話をしていても、自分一人で自問自答していても発見できなかった感情や想い、考えを発見できました。それと同じで、相手を意識することで、相手の世界と交わり合いながら、豊かになっていく感じがします。
自分が好きなものを使って、好きなことだけを書いても、自分だけで完結してしまうから発見はあまりないと思うんです。
「あの人はこんなんが好きかな」と考えることで、今まで行ったことのないお店に行くチャンスにつながったり、「私も、こういうのも好きかも」と発見したり。相手を想って選ぶんだけど、そこにはちゃんと、自分がいます。相手の好きそうなものの中から、さらに自分が「あの人にはこれを」と選んでいるから。
そんなふうに、交わり合いながら、自分の世界を広げることも楽しみたいなあと思います。
(2019年9月取材)
※お話をうかがって
「『自分を大事にする』とよく言われますが、自分勝手に、自分の好きなようにやるだけでは、幸せになれない」という東さんの言葉が印象的でした。
自分の世界を表現するのもいいですが、誰かを意識して表現することで、東さんがおっしゃられる通り、広がるものがあります。自分自身の世界を豊かにするものなのだと、東さんのお話をうかがって思いました。
書くことで自分自身と向き合えるのなら、日記と手紙でどう違うのだろうとずっと考えてきたのですが、その違いはこの「他人と交わり合うところ」なのかもしれません。
日記に自分の想いを書いていても、確かに人には言えない気持ちや想いを書けるかもしれませんが、自分の枠におさまったまま。それが、1人でも相手を意識することで、その気持ちや想いの表現の仕方が変わり、自分の枠から抜け出せ、新たな気づきがあるんだと思いました。
今回で東さんへのインタビューは最終回です。これまで「お手紙は自分とも向き合う時間編」「想像のきっかけに編」「気持ちに光を当てる編」「相手がいればこそ編」と、手紙にまつわるさまざまなお話をうかがいました。東さん、お話を聞かせてくださり、ありがとうございました。
「『自分を大事にする』とよく言われますが、自分勝手に、自分の好きなようにやるだけでは、幸せになれない」という東さんの言葉が印象的でした。
自分の世界を表現するのもいいですが、誰かを意識して表現することで、東さんがおっしゃられる通り、広がるものがあります。自分自身の世界を豊かにするものなのだと、東さんのお話をうかがって思いました。
書くことで自分自身と向き合えるのなら、日記と手紙でどう違うのだろうとずっと考えてきたのですが、その違いはこの「他人と交わり合うところ」なのかもしれません。
日記に自分の想いを書いていても、確かに人には言えない気持ちや想いを書けるかもしれませんが、自分の枠におさまったまま。それが、1人でも相手を意識することで、その気持ちや想いの表現の仕方が変わり、自分の枠から抜け出せ、新たな気づきがあるんだと思いました。
今回で東さんへのインタビューは最終回です。これまで「お手紙は自分とも向き合う時間編」「想像のきっかけに編」「気持ちに光を当てる編」「相手がいればこそ編」と、手紙にまつわるさまざまなお話をうかがいました。東さん、お話を聞かせてくださり、ありがとうございました。
小森 利絵
フリーライター
お手紙イベント『おてがみぃと』主宰
フリーライター
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編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP:『えんを描く』
『関西ウーマン』とのコラボ企画で、一緒にお手紙を書く会『おてがみぃと』を2ヵ月に1度開催しています。開催告知は『関西ウーマン』をはじめ、Facebookページで行なっています。『おてがみぃと』FBページ
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