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小森 利絵
フリーライター えんを描く

おてがみじかん ライフスタイル 2019-02-22
お手紙とわたし~魚野みどりさん編②~

私のまわりにいる「日常の中でおてがみじかんを楽しんでいる人」にインタビュー。3人目は魚野みどりさんです。お手紙の思い出や楽しみ方などについてうかがったインタビューを4回に分けて紹介しています。

前回は「家族との思い出編」として、魚野さんが1歳の時にもらっていたというお母さまからの絵手紙、いつの頃からか始まったという家族同士のバースディカードのやりとりなどのお話をうかがいました。

第2回目となる今回は「旅先から自分宛のお手紙編」。魚野さんはインドを1人旅した時、行く先々で自分宛にお手紙を書いていたそうです。当時のお話をうかがいました。
大学時代に1人旅された時、旅先から自分宛にお手紙を書いていたそうですね。

魚野さん: インドに 4~5カ月ほど1人旅に出ていた時の話です。最初のきっかけは、コリアンエアーでインドに向かう途中、飛行機が写ったきれいな写真のポストカードを見つけたことでした。

この時、飛行機に乗るのもはじめてで、国際線で飛行機デビュー。旅しているわくわく感も重なって、今で言うツイッターで「金浦空港なう」とつぶやくみたいな感じで、「何月何日、この飛行機に乗って金浦空港に着きました」と書いて、自分宛に送ることにしました。

金浦空港では72時間のトランジット(給油等のために一時、他国の空港に立ち寄ること)があって、トランジットビザで外に出られるということで、ソウルのまちに出かけてみることにしました。

ガイドブックも持っていない、ハングル語もわからないという状態ながら、大きな本屋さんを見つけて入ったら、美しいチマチョゴリが写ったポストカードや金糸とエンボス加工の特徴的なハガキを見つけて、「これがほしい!!」となってしまって。

でも、今からインドに向かうのに、荷物になってしまうし、ぐちゃぐちゃになるのは嫌。お手紙として送ってしまおうと思ったんです。

「今、書店にいます」とハガキに書いて、本に添えて送ることにしました。郵便局に行くと、かわいい切手を見つけてしまって、手紙に貼るとともに、日本でシール代わりに使えるかもと購入したのを覚えています。

以降も、タイエアーやインド国内航空、インドの鉄道会社でハガキをもらって、 「今、○○便に乗っています」「機内でこんな映画を見ています」など、 自分宛に手紙を書きました。
現地で滞在時されている時はどうでしたか?

魚野さん: 滞在先では、見たり体験したり飲んだり食べたりしたことを描いて、絵日記風の絵手紙にすることが多かったように思います。

たとえば、ネパールのチトワン国立公園でサイに乗る体験をした時は、撮影はできなかったため、サイに乗る自分の絵を描いて「サイに乗ったぞ!」と一言。

インドのダージリンでチベット料理を食べた時は、おいしくてはじめて食べるものばかりだったから、もちろん写真にも撮りましたが、チベットで購入した現地の顔料でつくられたクレパスみたいなものを使って絵を描きました。

陸路で国境を越えた時は、出国先のネパールで一般的に使われているハガキを入手して書いたこともあります。

ダージリンからトイトレインという、その名の通り「おもちゃの列車」みたいな乗り物に乗った時は、スピードが歩くくらいの速さだったから、時間がたっぷりとありました。線路上でバザールが開かれていたので、気になるものを見つけたらひょいっと降りて買い物をして、小走りでひょいっと乗って戻るということをしていましたね。

バザールで買った豆菓子やポン菓子、チャパティ、チャイなどを食べたり飲んだりしながら、絵や絵手紙をたくさん描いていたことを思い出します。

旅の終わりは高級ホテルで豪遊(笑)。ティールームでお茶を飲むとすごく気分がよくて、その時のことも描きました。

絵手紙単体で送ることもあれば、現地で見つけた布やステンレスの食器、本、写真などに添えて送ることもありました。今思えば、旅のお土産っていろいろあるけれど、お土産を買うよりも、その時の思い出を残そうという気持ちがあったのかもしれません。
こうしてお話を聞いているだけでも、その時々の様子が思い浮かんで、とても楽しいです。帰国して、届いた手紙を読んだ時はどう思いましたか?

魚野さん: 実はちゃんと届いているかどうか、半信半疑で、実験的な部分もありました。

現地では電報が届いていなかったり、乗り物も定刻通りに発車しなかったりするのが日常茶飯事ですから、送ったものがすべて日本に届いているとは信じていなくて。でも、帰国して、全部がちゃんと届いていることを知って、びっくり! 郵便を大切にしてくれる文化に感激したものです。

旅先からの手紙は、旅の匂いがぷんぷんしました。

数カ月も前のことですから「こんな切手を買ってたんや」と新鮮でしたし、消印もおもしろい。「あの時、こうやったなあ」「こんなものを食べていたわ」「ああ~、覚えている!!」と、手紙を1通1通読んでいくごとに、旅先での思い出を一つひとつ辿っていくことができました。
以降も旅先ではお手紙を書かれているのですか?

魚野さん: インドやネパールなどの1人旅はその後、数回行ったのですが、その時は1回目みたいにこまめには書いていません。前回来た時から風景が変わったなあと感じた時や初めての場所に行った時くらいです。それ以外の旅日記はトラベラーズノートに書きました。

今度は住所録を持参して、友人や上司、旅を応援してくれた人たちなどに向けて書いていました。インドらしいポストカードに「今、ここにいます。こんなところに行きました」「ここには、こんな神様がいます」と書いたり、インドで写真を現像して同封したり。

旅は、日常ではなく、非日常。だからこそ、絵や言葉で起こせるものがあるなあと思います。それに、母からの絵手紙と同じで、読み返すたびに思い出せること、響いてくるものがあります。この間読み返した時は、現在は旅行者が立ち入れない地域にも行っていて、「この頃は世界がまだ平和だったな」と懐かしく思い出したものでした。

(2018年9月取材)
※お話をうかがって

旅先の思い出をお手紙で残す。その時に自分の中から出てきた言葉。言葉少なくとも、また読み返した時に「そういえば、この時」と思い出せるものがありますね。

私も最近、旅に出ると、最初に郵便局で「ご当地フォルムカード(各都道府県を代表する観光名所や行事、名物などのイラストと豆知識が描かれているポストカード)」を入手して、夜眠る前などにその日あった出来事を書いて送るようになりました。

魚野さんは「現地で入手したはがきに書く」だけではなく、「チベットで購入した現地の顔料でつくられたクレパスみたいなもの」と書く道具も旅先で入手したものを使っておられました。ペンにも、その土地ならではの色や質感、匂いなどがあり、さらに宿るものがあるのだろうなあと思います。

次回は「お手紙はアート編」として、現在は業務連絡のお手紙がほとんどという魚野さんですが、まるでアートのようにお手紙づくりを楽しんでおられるんです。そのお話をうかがいました。
profile
レターセットや絵葉書、季節の切手を見つけるたび、「誰に書こうかな?」「あの人は元気にしているかな?」などアレコレ想像してはトキメク…自称・お手紙オトメです。「お手紙がある暮らし」について書き綴ります。
小森 利絵
フリーライター
お手紙イベント『おてがみぃと』主宰
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP:『えんを描く』
 
『おてがみぃと』
『関西ウーマン』とのコラボ企画で、一緒にお手紙を書く会『おてがみぃと』を2ヵ月に1度開催しています。開催告知は『関西ウーマン』をはじめ、Facebookページで行なっています。『おてがみぃと』FBページ

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