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小森 利絵
フリーライター えんを描く

おてがみじかん ライフスタイル 2018-01-26
お手紙とわたし~大原奈津子さん編①~

私のまわりにいる「日常の中でおてがみじかんを楽しんでいる人」にインタビュー。第1弾は大原奈津子さんです。

大原さんとは、ふだん使いの音楽プロジェクト『伊丹オトラク』のサポートスタッフの集まりで出会いました。ある着物かばん店のオリジナルかばんを愛用しているなど、はじめてお会いした時から共通の好きなものが多く、「お手紙」もその一つ。

お手紙や紙モノの話題で盛り上がって、お手紙でもやりとりするようになり、2016年からは大原さん&娘さんと私&娘で『おてがみやさん』というユニットを組んで、お手紙イベントを開催するようにもなりました。

お手紙を楽しむ引き出しをたくさん持っている大原さんのインタビューを3回に分けて紹介します。第1回目は「思い出編」です。

大原さん(右)と私の娘
「お手紙をやりとりした」最初の記憶はいつですか?

大原さん:幼い頃も手渡しでお手紙交換をしていたかもしれませんが、記憶として残っているのは、小学3年生の時に仲良しの友だちと始めた文通です。私が引っ越すことになって、どちらからともなく「お手紙を書くね」と言って別れ、やりとりするようになりました。

今となってはどんなことを書いていたのかは覚えていませんが、大学時代まで続いて、彼女がカナダでホームステイ中にやりとりしたのが最後になりました。あれから就職して家庭を持つなどしているのかなあと想像すると、宛先不明で返ってくるかもしれないので、お手紙を出す勇気を持てず、今に至ります。

突然返事が来なくなったので、「私、何か悪いことを書いたのかなあ」と気になったものの、今振り返るとお互いに世界が広がっていったからかもしれません。小学生以来、会っていませんし、時間が経てば経つほどに共有できることも少なくなっていました。心の距離を少し感じるようになっていたので、彼女もそうだったのかなあ、と。

「お手紙」というと、彼女のことがまず思い浮かびますね。

小学生から大学時代にかけての大切な思い出ですね。社会人になってからはどうですか?

大原さん:もともとの友だちにも、新しく知り合った人にも、お手紙好きがいたので、多い時には6人ほどと文通していました。何気ない日常の出来事や思ったこと、悩み事、相談事など、20代の時は暇さえあれば、書いていたように思います。

最近は4歳の娘がお手紙に興味を持っているので、私はそのお手伝いがほとんど。幼稚園のお友だちが本を見ながら一所懸命に文字を書いてお手紙をくれるんです。巻物のような形でくれる子もいれば、すでにかわいい便せんに目覚めている子もいます。

自分が書く機会はだいぶ減ってしまいましたが、15年ほど前に石垣島生活で出会ってお手紙をやりとりするようになった静岡県在住の友だちとは、子どもが同い年という共通点が増えて、ここ数年でさらに関係性が深まりました。悩みも共有できるし、同い年を子育て中ということで同志みたいな感じに。

お互いの娘のお誕生日にはプレゼントを贈り合うので、その時にお手紙を書きます。
長年文通をされていて、「文通っておもしろいなあ」と思うことは、どんなところですか?

大原さん:お互いのことを少しずつ知っていけるところです。

新卒で入社した会社の先輩と、先輩が退職した後に文通を始めました。会社で一緒に過ごした期間は2年ほどで、先輩と後輩という間柄で、それほど親しくはありませんでした。でも、お手紙のやりとりを通して、結婚式にまで招いてもらえるほど仲良しになったんです。

もともと2人とも「人と交流したいけど、一人も好き」「マイペース」というタイプ。お互いにそれを察知し合ったのか、退職の少し前に、昼休みにお弁当を公園で一緒に食べたことがありました。当時は社内名簿で住所がわかったので、どちらからともなく文通が始まったんです。

先輩の転職活動のことやお互いの最近の出来事、好きなことなどをやりとりする中で、会社にいる時には見えてこなかったお互いの内面をだんだんと知っていきました。

デザインを勉強するなど芸術系の先輩だったので、私が当時つくった短歌集をお手紙に添えて送ったら、「短歌集『小さき花々』のイメージでつくったよ」と缶ペイントの作品を送ってきてくれたんです。今でも大切に持っています。

短歌と絵、お手紙を通してやりとりしていたなんて素敵ですね。

大原さん:CDや本、お土産など何かも同封できるから楽しいですね。お手紙とともに同封されているものにも、わくわくしていたのを思い出します。

施設で働いている友だちからは職場の機関誌、学校で先生をしている先輩からは学級通信、私が短歌を詠むきっかけとなった恩師からは歌集やてぬぐい・・・夏の思い出を冊子にして送ってくれた友だちもいました。

大学時代に海外留学中の友だちと文通していた時は、自分が好きなアーティストのCDをたまたま同封したら、「なんで、これを持っているの?」って。かなりマニアックなものだったのに、彼女も好きだとわかり、共通点が増えて、そのCDをきっかけに話が盛り上がったことがあります。

奥の丸缶は、文通していた先輩が大原さんの短歌集をイメージしてペイントしてくれたもの
現在はさまざまなコミュニケーションツールがあります。それらをどう使い分けていますか?

大原さん:子どもを通して出会ったママ友とはラインでのやりとりが多いです。基本は待ち合わせなどの連絡用に使っていますが、悩み事や相談をやりとりする友だちもいます。メールでのやりとりもしますし、メールでもお手紙でも伝えたいことは同じ。

でも、お手紙はやっぱり特別なんです。

文字はその人ならではのものだから、郵便受けでお手紙を見つけて、文字を見ただけで「ああ!○○ちゃんだ!」とわかります。また、相手が選んでくれたハガキやレターセット、切手から「おぉ!」「こんなにもかわいいものがあるんだ」と心が躍るんです。

「あの時、まんまるのハガキを送ってきてくれたなあ。確か、チューリップの絵が描いてあって、『お花のイベントに行った』と書いていたなあ」と見た目から思い出すこともあります。 私自身、レターセットやハガキ、切手を選んだり、何かを添えたり、荷づくりしたりするのが好き。「このシールを貼ったら、かわいらしくなるかも」「この紙袋、ぴったり」と何気なくひらめくことが多いんです。

日常に追われる日々の中で、そうやってお手紙を書く時間を持てるということは、心に余裕がある時で「ああ、私、のっているな」と思います(笑)。逆に、そんな時間が持てない状態が続くと、「なんかちょっと足りていないかも」と思うから、心の余裕を知るバロメーターになっています。

(2017年9月取材)
※お話を伺って

大原さんがお手紙の魅力の1つとして話していた「お互いのことを少しずつ知っていける」。

文通相手とは「お手紙だけ」でやりとりしているわけではなく、会って話すこともあれば、電話したりメールしたりSNSで交流したり、さまざまなコミュニケーションと並行していることもあります。

しゃべって伝えることが得意な人もいれば苦手な人もいて、自分を表現しやすいツールも人それぞれ。だから、さまざまなコミュニケーションを楽しみながら、お互いのことを知っていけたらおもしろいのではと、大原さんのお話をうかがいながら思いました。

その中でお手紙はじっくりと相手と自分と向き合いながら、言葉を紡げるツールだと思います。言葉以外にも、便せんに絵を描いたり、好きな音楽のCDや作家のポストカードを同封したり、さまざまな手段も交えながら表現でき、伝えることができるとも。

次回は「楽しみ方編」として、旅先で撮影した写真をポストカードにしたり、ご当地のハガキや切手を使ってお手紙を書いたりして楽しんでいる大原さんに、旅先でのお手紙の楽しみ方をうかがいます。
profile
レターセットや絵葉書、季節の切手を見つけるたび、「誰に書こうかな?」「あの人は元気にしているかな?」などアレコレ想像してはトキメク…自称・お手紙オトメです。「お手紙がある暮らし」について書き綴ります。
小森 利絵
フリーライター
お手紙イベント『おてがみぃと』主宰
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP:『えんを描く』
 
『おてがみぃと』
『関西ウーマン』とのコラボ企画で、一緒にお手紙を書く会『おてがみぃと』を2ヵ月に1度開催しています。開催告知は『関西ウーマン』をはじめ、Facebookページで行なっています。『おてがみぃと』FBページ

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