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藤田 由布 産婦人科専門医 レディースクリニック サンタクルス ザ シンサイバシ
生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、女性にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2025-06-26
緊急避妊ピル(アフターピル)とは 〜かんたん説明〜
緊急避妊ピルとは、避妊をせずに性行為をしたり、避妊に失敗した際に、意図しない妊娠を避けるために服用する薬品です。つまり、性行為後に避妊するための手段です。

これは最後の避妊手段とも呼ばれており、日本では緊急避妊ピルは主にレボノルゲストレル法ヤッペ法があります。
緊急避妊ピルの作用機序は、排卵の抑制並びに遅延によって可能にするもので、精子機能や胚生存率、子宮内膜受容力には影響は無く、仮に妊娠している女性に投与されても妊娠に害を及ぼすことはありません。※1)
成分や作用とは?
緊急避妊ピルのうち、日本で広く使われているのは、費用的にも質的にも「レボノルゲストレル錠1.5mg」です。

この有効成分は、第2世代の強めの黄体ホルモン単剤です。
経口避妊薬のトリキュラーやアンジュ、ラベルフィーユ、ジェミーナ(月経困難治療薬)に含有されている黄体ホルモンも、レボノルゲストレルです。

例えば、低用量ピルのジェミーナに含有されているレボノルゲストレルは0.09mgです。緊急避妊ピルのレボノルゲストレルは1.5mgです。

ここから分かることは、緊急避妊ピルは一般のピルと比べて約20倍ちかくの大量の黄体ホルモンを一度に内服して体内での作用を高めているということです。

だからと言って身体に害があるわけではありません。

緊急避妊ピル、つまり大量の黄体ホルモンを服用することで、短期間で排卵を遅らせたり、子宮内膜(受精卵が着床する部分)の状態を変化させて妊娠の成立を防ぎます。

ここで大事なのは、緊急避妊ピルはあくまでも緊急的に用いるものだということです。
普段の避妊法には向きません。「アフターピルがあるから普段避妊をしなくて大丈夫」ということでは決してありません。

日本のアフターピルは世界では類を見ないほど高額です。

日本で認可されている緊急避妊ピルは、レボノルゲストレル(ノルレボ)のみですが、ネットで販売しているマドンナ(タイ製)などの緊急避妊ピルは日本では未承認のピルです。念の為記しておきます。
緊急避妊ピルの副作用はあるの?
緊急避妊ピルの副作用は殆どありません。

ただし、稀ですが、一時的に吐き気や嘔吐、頭痛などがおこる場合があります。

心配な時は、吐き気止めを一緒に処方してもらいましょう。

緊急避妊ピルの服用後2時間以内に吐いてしまった場合、かならず医師に相談して下さい。ピル服用後2時間を経過してからであれば大丈夫です。
日本における緊急避妊薬(アフターピル)入手に関する障壁
日本では、緊急避妊薬を服用するには医師による診察および処方が必須となります。

ほとんどの婦人科クリニックでは診察は不要で簡単な問診だけで処方されることが多いです。

一方、海外では緊急避妊薬の安全性が確認されたとして先進国に限らず約90カ国で医師の処方箋なしに薬局などで購入することができます。※2)
日本における緊急避妊外来受診理由

*(図)日本産婦人科学会 産婦人科専門医のための必修知識2022年度版 E107
日本家族計画協会クリニック 2005年4月〜2013年3月末
厚生労働省の報告によると、2022年の国内の人工妊娠中絶数が年間122,725件でした。

事実、緊急避妊薬へのアクセス向上を求める声は年々多くなってきています。

日本の緊急避妊薬のアクセス障害に関しては、価格が高額であること、診療所が閉まっている週末に避妊失敗した場合や、学校や仕事で診療時間内に診療所に行けないことも問題となっています。
また、思春期の女性では人目が気になって婦人科に行きづらい、性行為や避妊について医師に直接話すのが恥ずかしいと感じる女性も少なくありません。

2023年11月28日から、女性に対して医師の処方箋なしで緊急避妊薬を薬局で販売する調査研究が開始されました。※3)

緊急避妊薬を調剤した実績がある薬局を中心に研修を終了した薬剤師が販売にあたるなどの一定の要件を満たす薬局が選定され、全国でたったの155店舗のみの実施です。
今後の販売化はこの調査結果をもとに検討されます。

WHOは緊急避妊の提供に関する推奨事項として「意図しない妊娠のリスクを抱えた全ての女性および少女には、緊急避妊にアクセス権利があり、緊急二人の複数の手段は国内のあらゆる家族計画プログラムに常に含まれなければならない」としています。※4)

女性が望まない妊娠を回避するのは当然の人権であるとするならば、日本における緊急避妊ピルのアクセス改善は急務です。

私も頑張って声をあげている一人です。 日本の女性の皆さん、女性の基本的人権を勝ち取っていきましょうね。

次号「ミレーナ」につづく

【参考文献】
※1)Gemzell-Danielsson. et al. Emergency contraception mechanisms of action. Contraception 2013:87:300-308
※2)日本産婦人科学会/日本女性医学学会 OC・LEPガイドライン2020年度版 2021.32-33
※3)日本産婦人科学会「緊急避妊法の適正使用に関する指針」
※4)堀・若子「
「緊急避妊のスイッチOTC化に関する提言」 」調剤と情報
profile
全国で展開する「婦人科漫談セミナー」は100回を超えました。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期障害は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、HPVワクチンのこと、婦人科のカーテンの向こう側のこと、女性の健康にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
産婦人科専門医
レディースクリニック サンタクルス ザ シンサイバシ 院長

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
レディースクリニック サンタクルス ザ シンサイバシ
〒542-0085 大阪府大阪市中央区心斎橋1-8-3 心斎橋パルコ10F
TEL:06-6253-1188(代表)
https://shinsaibashi.santacruz.or.jp/

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