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藤田 由布 産婦人科医 レディースクリニック サンタクルス ザ シンサイバシ 生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、女性にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。 |
生理前のイライラ鬱状態は月経前症候群(PMS)〜ホルモンのせいです。あなたのせいではありません〜 |
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診察室に入るやいなや、「ワッーーーっ!!」と声をあげて涙を流す女性も珍しくありません。
よっぽど辛かったのでしょう。敷居が高かった婦人科クリニックにやっと相談に来れてホッとしたのかもしれません。 話を聞くと、月経前に身体と心の不調がピークに達し、いてもたってもおれなかったようです。 74%の女性がPMSの問題を抱えて生きています
![]() PMS(月経前症候群)は、PreMenstrual Syndromeの略で、全女性の74%がなんらかの症状をもち、全女性の6.5%が社会生活に影響があるやや強い症状に悩み、治療対象であると報告されています。
PMDD(月経前不快気分障害)は、PreMenstrual Dysphoric Disorderの略で、PMSよりも強い精神症状が現れ、日本人女性の1.2%が今日もPMDDで苦しみ、精神科領域も含めて治療が必須な状態です。 「PMSと、生理痛は、違うの?」と、よく聞かれます。 PMSも生理痛も、生理や生理周期にまつわるトラブルですが、2つは別物です。 生理中に起こる下腹痛や頭痛や嘔気などの症状で知られるのが「月経困難症」。いわゆる生理痛。 生理前から起こる不調をPMS、そしてPMSが重症化したものをPMDDといいます。 PMSなのかPMDDなのか治療する側にとっては重要です。 とはいえ、PMSや生理痛で苦しむ女性にとって忘れないで欲しいのは、PMSも生理痛も我慢せず、ちゃんと治せるということです。 PMSの症状は200種類も!
![]() 月経前の症状は個人差があります。PMSの症状は200以上とも言われています。
PMSは症状が軽めの人もいれば、PMSよりもさらに精神症状が強くでるPMDD(月経前不快気分障害)の人もいます。 PMSを抱える女性のうち、その5%がPMDDである、という報告もあります。 多くの女性が生理前に「イライラ」という精神症状が出るようです。 また、「乳房が張る・痛い」「甘いものが食べたくなる」「食欲が増す」といった食欲関連のこと、「怒りっぽくなる」「気分にむらが出る」などの精神症状も多いです。 よくあるPMS症状は以下のとおりです。 ![]() 自己診断してみてください
![]() PMSの症状の種類や現れ方、程度には個人差がありますが、自分の感じる心身の不調が「PMSに当てはまるのかどうかが分からない」という悩みをかかえている人や、PMSの症状であることに気がついていない人も多いようです。
以下に当てはまる場合で、日常生活に支障がある場合は、婦人科で相談してみましょう。 ![]() ![]() 生理前に体調や心の状態が揺らぐ方へ
![]() なぜ生理前に心が不調になるのか、なぜ生理前に涙が出てくるのか、原因がわかれば気持ちも少しラクになることもあります。
つらい症状に苦しみながら、「生理にまつわる症状は我慢するべき」なんて考えないでください。 「生理は我慢するもの」「病気じゃないなら我慢するべき」なんて余計な判断は無用です。今も昔も学校でもちゃんと教えてくれないし、生理を我慢することの危険性を理解している教員は今でも皆無に等しいです。 思い出してください。 生理前や生理中に身体や心がしんどくて体育の時間にうずくまっていたら、体育教師から「怠け者!」「我慢が足りん!」と罵られて、罰として校庭を走らされた学生時代。 ブルマー世代の女子たちにとって、生理にまつわる「痛い思い出」はきっとまだまだあるはずです。 現在でも、つらい生理症状に悩まされている女性は多いです。 もし、生理前の症状で辛い思いをしている方で、周囲から理解を得られていないと感じるならば、婦人科にいらしてください。 生理前の憂鬱な症状は、生理周期における女性ホルモンの変動が大きく関係している場合が多いです。 最近「月経前症候群(PMS)」は知られる用語になってきましたが、周知はまだまだです。 PMSは、なぜ起きるの?
![]() PMSは排卵後に分泌されるプロゲステロン(黄体ホルモン)と、エストロゲン(卵胞ホルモン)の変化が関係していると考えられています。
また、プロゲステロンの代謝物の働きやホルモンの変動に対する反応の違いも原因になっているようです。 プロゲステロンの影響で、心身を興奮モードにする交換神経と、リラックスさせる副交換神経のバランスが乱れ、いわゆる自律神経の不調をきたしてしまう、と考えられています。 さらにストレスや疲労などの原因も影響すると、PMSが引き起こされるのです。 生理前の「むくみ」の正体
![]() 生理前になると身体や手足がむくみ、体重が増えたり、身体を動かすのが怠くなったりします。
これは、生理前に分泌量が増える黄体ホルモンの影響で、身体に水分が溜まりやすくなるためと考えられています。 人間の身体はナトリウムの濃度を一定に保つ必要があり、ナトリウムが多くなりすぎると水分を体内に溜めて薄めようと働きます。 この状態が「むくみ」で、塩分が多いものを食べた時に、身体や顔がムクムクにむくみます。 生理前に体内で増えてしまう黄体ホルモンがこのむくみ症状を強くしてしまうのです。 ![]() PMS・PMDDの診断
![]() PMS・PMDDで大切なのは、医師による診断をかならず受けることです。
診断は、医師による問診です。月経前のどのくらいの時期に、どんな症状があるのか等が質問されます。ご受診の際は、簡単な自分の記録を用意しておくといいでしょう。 PMSやPMDDの症状を超えて、うつ病やパニック障害など他の精神疾患が潜在する可能性もあるから、自分で判断するのは禁物です。 また、貧血や甲状腺疾患など身体的な病態が隠れている場合も、ちゃんと診察しなければなりません。 また、いろんな他の慢性疾患が、月経前に増悪して現れることもあるため、月経前症状のみでなく、基礎疾患の管理も大事です。自分で判断せずに、ちゃんと婦人科でご相談くださいね。 PMSとPMDDの治療
![]() ![]() 日本で認可されている「第四世代のピル」は、バイエル社の「ヤーズ」か「ヤーズフレックス」か、あすか製薬の「ドロエチ」の3択になります。これらは1日1錠内服です。 ![]() 婦人科クリニックで、私は毎日たくさんのPMS症状に悩む患者さんを診ていますが、多くの患者さんがこのジエノゲストによってPMSを克服しています。 また、1つピルの製剤が自分に合わなくても、ピルの種類を変えると症状が改善する場合があります。 このことから、婦人科医と密に連携しながら、自分にあった製剤を試していく過程も大事です。 精神症状がひどい場合は、精神科医とも連携して治療を進めることも大事です。 誰に遠慮することもありません。主治医に今の症状を率直に伝えて相談してください。治療の判断はちゃんと医師がしてくれます。 PMS・PMDDの薬物療法
![]() 生理前の精神症状などで比較的軽症で社会生活への影響が軽いのであれば、対処療法としてピルなどのホルモン剤、ロキソニンなどの鎮痛薬、漢方薬などで対応します。
けれども、PMSによる精神症状が中等症以上の場合は、精神安定剤やSSRI(セロトニン取り込み阻害剤)といった抗うつ剤が処方されることもあります。 以下を参考にしてみてください ![]() PMSになぜピルが効くの?
![]() ピルは2種類の女性ホルモンが配合されてできた飲み薬です。
エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類のホルモンが配合されたものです。 「ピル」ときくと避妊薬をまず連想することが多いですが、実は、ピルは生理痛にもPMSにも抜群に効果があるのです。 ピルの詳細については、過去コラムもご参照ください
→今さら聞けない「低用量ピルって、そもそも何?」 日本では、「経口避妊薬(OC)」と「月経困難治療薬(LEP)」の区別があります。
避妊目的のピルを「経口避妊薬(OC)」として自費処方で患者10割負担になります。 月経困難症の治療薬のピルを保険適応として処方される「月経困難治療薬(LEP)」で患者3割負担となり、避妊薬と月経困難治療薬は区別されています。しかし中身は同じです。 どちらのピルも内容物は同じですし、効果も同じです。 どちらのピルも服薬中は排卵を休めることもできるし、子宮内膜(生理の時に肥厚した内膜がベリベリと剥がれて生理の血となる)を薄く保ってくれて、痛み物質(プロスタグランジン)の放出を最小限にしてくれます。 また、ピルは内因性ホルモンの波を安定化し、排卵を休めることで、月経随伴症状であるPMS・PMDDの症状が起きにくくなり、効果的というわけなのです。 婦人科でご相談ください
![]() 日本では、PMS・PMDDの周知はまだまだです。しかし、医師による十分な問診でもって、あなたのライフステージや背景に見合った治療が選択できるのです。
生理痛もPMS・PMDDもちゃんと治せる方法があることを知ってください。 また、女性にとって避妊は当たり前の権利です。自分の身体を守る権利があるということを忘れないで下さい。 ひどい生理痛はもちろんのこと、生理前にも不調をきたしていると感じるなら、どうか我慢せずに婦人科に相談にいらしてくださいね。 同時に、私たち婦人科医はもっとPMSやPMDDについての理解を広め、学校生活でも社会でもガマンばかりで涙する女性を救わなければならないと強く思います。 |
![]() 藤田 由布
産婦人科医 レディースクリニック サンタクルス ザ シンサイバシ 院長 大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。 飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。 女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。 ⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら FB:https://www.facebook.com/fujitayu レディースクリニック サンタクルス ザ シンサイバシ 〒542-0085 大阪府大阪市中央区心斎橋1-8-3 心斎橋パルコ10F TEL:06-6253-1188(代表) https://shinsaibashi.santacruz.or.jp/ |
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