Vol.19 テハテという飲み物をつくるお姉さん、の巻 |
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オラー、こんにちは!! 10月の中旬から滞在していた日本もあっという間、再びオアハカよりあみりょうこです。
滞在中に、大阪・堀江のギャラリー『ART HOUSE』さんにて開催された、河野ルルさんとの2人展覧会「メキシコホリック」に、このコラムを読んでくれているという方にも足を運んでいただいたき、思わずじいんとしてしまいました。 そんな日本の甘い記憶から一気に引き戻されてしまいそうな、オアハカの青い空。久しぶりに戻ってくると、雨期が終わって空の色が一段と濃くなっているのでした。 私がいなかった間に死者の日も終わっていて、その名残もあまり見つけられていません。(マリーゴールドの花など成果で飾りつけをするから、終わったら結構すぐに撤去されているのかもしれません。) さて、今回はまたもや「この人がステキ」シリーズ。「テハテという飲み物をつくるお姉さん」を紹介したいと思います。 ![]() まずその前に、「はて?テハテ?」と思われた方も多いと思います。
テハテは、トウモロコシの粉とカカオで作られる飲み物です。これらが練りこまれたペーストを、大きな陶器の入れ物の中で練り練りしながら次第に水を加えて作られます。 完成間近になると、かなり高い位置から冷水が注ぎ込まれます。(速水もこみちの料理番組のオリーブ油を注ぐくだりを想像してください。) そうするとポンポンポンッと白い泡のような(泡と言っても、せっけんの泡のような軽いものではなく、見てくれが泡のようにふわふわで、舌触りはクリームを固めたような感じのものです。)ものが浮いてきて出来上がり、という作る工程も興味深い飲み物なのです。 この飲み物は、先スペイン時代から飲まれていた伝統的な飲み物で、農作業などの重労働の合間にエネルギーチャージとして飲まれていたそうです。 他の州や地域でも同じようにトウモロコシの粉やカカオを使った飲み物があるらしいのですが、地域ごとに微妙に形状が異なり、またその呼び名も違うようです。 初めて飲んだときは、今まで味わったことのないような味の濃い飲み物だなぁ、という感じで好きとか嫌いという前に「不思議な飲み物」という印象が強かったです。 しかしこれが不思議なもので、飲む回数を重ねるたびに「んんっ?好きかもしれへん、この味は!!」と次第にはまっていったのでした。 オアハカの郊外にトラコルーラという町があり、日曜日に大きな市場がたつので有名です。周辺の村からも食料品の買い出しなどにやってくる人が多く、ものすごいにぎわいです。 オアハカの市内でもウイピルという巻頭衣を着た人を見かけますが、トラコルーラでは周辺村の伝統衣装などもみられるので、急に地方にやってきた感が増す気がします。 ![]() トラコルーラまではバスで行くのですが、市内からは約40分。大きなバスのくせに、めいいっぱい高速を飛ばしたり、減速用に道路につけられたトペという凸型の障害物を乗り越えるので、そのたびにスピードが極度に緩められたり、たまにドアを開けっぱなしで走行したりしているので、人が落ちないか気が気でなく、とにかく到着した時にはすでに結構体力を消耗しているのです。
そこでいつも思い出すのが「テハテは、エナジードリンクだぜ」という、いつか誰がが言っていた言葉。確かに暑い日などに飲むと、体力が回復するというか、元気が湧いてくる気がします。 というわけで、トラコルーラに行くとこの「テハテ」を飲むのが私の中でのお決まりコースになっているのです。テハテは市場の中や路上などいろいろなところで見かけるのですが、私はいつも同じお姉さんのところで飲みます。 ![]() 偶然通りかかった時にちょうど作り始めで、その工程を数十分じいっと見せてもらったときに飲んだテハテがものすごくおいしかったので、それ以来はそのお姉さんから、と決めているのです。
テハテのエピソードでいまだに鮮明に覚えているのが、日本人の友だちの男の子に「テハテ好きやねん」と言った時のことです。「テハテってなんでしたっけ?」と聞き返されたので説明すると、返ってきたのは「ああ!ばばあ汁!」という言葉でした。 「ば、ばばあ汁?!」 と思わず繰り返すと、「だって、あれずっとばばあがこねてるじゃないですか」 確かに、そう形容すればそうなのですが、「ばばあ汁」というネーミングが強烈でいまだに心の中で繰り返してしまうのです。 日本から友だちが来た時(前の時に登場した、関西ウーマン巡りをした友だち)に、ちょうど日曜日がかぶっていたのでトラコルーラに行きました。そして、このおいしい飲み物と強烈なエピソードのことを話しました。 すると返ってきたのは意外にも、 「そうかもなぁ」 という言葉でした。 その友だちは料理をつくるのですが、「だって、いろいろあるテハテの中でも、このお姉さんのテハテが好きなんやろう?手で作るものやからやっぱりその人の味って出ると思うよ」というのです。 言われてみれば確かに、私がテハテを思い浮かべるときは、あのお姉さんが用意している映像が頭に浮かびます。 じいっと見ていた時や、話した時にいろいろ教えてくれたり優しくしてくれた思い出も、その味の中に詰まっているからかもしれないな、と友だちの言葉を聞いて思ったのでした。 オアハカに来た際は、ぜひともテハテをご賞味ください。 ![]() 2019年10月24日~11月4日まで、大阪・堀江のギャラリー『ART HOUSE』さんにて開催されていた河野ルルさんとの展覧会。せっかくの二人展なので、コラボ作品も作ることにしました。 私はメヒコ、ルルさんは日本、いったいどうやって完成したのかというと、まずはルルさんがオアハカに遊びに来てくれた時に、展示のテーマが「旅とメヒコ」であるということを確認して、 「じゃあ、私は版画やから先に刷って、刷った紙をるるちゃんに送るという感じでいいかな?!」 という、ゆるい会議が開かれました。 私の中で旅というのは、行ったことのない場所に向かって新しいものを発見することであると同時に、そういう知らない土地に行った時の自分に出会う自分探しでもあるように感じます。 あるいは、新しいことをや知らない世界に行くという点では、本を読んだりすることも旅と言ってもいいかもしれません。 そのどれもに「探す」とか「見る・見つける」という行動が付きまといますが、それをこの版画のおんなのことおとこのこに込めました。 ろうそくを持たせたのは、ある日、オアハカで友だちの家を訪ねていた時のことですが、雨が降りました。とても強い雨で、特にめずらしいことではないのですが、停電してしまったのです。友だちがろうそくを探してくる、と言って出してきたのが2本の小さなろうそくでした。 誕生日ケーキに刺すような小さなろうそくでは、そんなに広い範囲は明るくなりませんでしたが、「これしかなかった!」と妙に恥ずかしそうにしている友だちの顔が、ろうそくのオレンジの光にともされていてなんだかかわいいな、と思いました。そして、不意にその2本のろうそくを友だちが束ねた時に、ぼわっ!と急に大きな明りになりました。 小さな2本のろうそくとは思えない大きさでびっくりしてしまいました。手元だけは確実に照らしてくれるこの小さな火は、2つ(あるいは3つ、4つ)集まると、こんなにも大きな光になるのか~、と思うと、このオレンジの小さな光が急に頼もしく、希望にあふれたようなものに見えてきたのです。 そういうわけで、勇敢に旅を続ける2人にもこの小さな光を持たせてみたのです。 私は作って刷って日本に送りっぱなしで、その後の経過はまさに「おたのしみ」状態だったのですが、ふたを開ければおんなのことおとこのこはこんなにもカラフルな世界を旅していたのでした。風に吹かれるように軽やかに、でも大地をしっかり踏みしめて。 版画と水彩画のコラボレーションは、私は初めての体験だったのですがステキな楽しい作品になったと思います。改めまして、コラボレーションをしてくれた河野ルルさん、そして、見に来ていただいたみなさま、ありがとうございました。 |
![]() あみ りょうこ
版画家 1982年大阪生まれ、兵庫育ち。メキシコのオアハカ州での暮らしを経て、2020年から日本に。 ものつくりが好きで、オアハカで版画に出会い制作を続けている。 HP:https://amiryoko.wordpress.com/ instagram:ninjacco メヒコTプロジェクト |
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八木 菜摘 フリーライター 八木菜摘 |
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