藤田 由布 産婦人科医 レディースクリニック サンタクルス ザ シンサイバシ 生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、女性にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。 |
子宮頸がんの原因はウィルス感染です。 |
子宮頸がん9価ワクチン、日本では2020年にやっと承認されました。
子宮頸がんはワクチンで予防できる事をご存知でしょうか? 子宮頸がんの原因はヒトパピローマウィルス略してHPVです。これは殆ど性交渉でしかうつりません。 子宮頸がんワクチンの世界のスタンダードは9価。男性も接種してる国も多い中、日本は2価と4価ワクチンのみ承認されていて、しかも接種率は悲しいことに0.1%以下です。 2価と4価ワクチンは頸がんの原因となるヒトパピローマウィルス遺伝子型の60%程度しかカバーできないのですが、9価ワクチンは90%以上をカバーします。 ただし、癌の原因となるウィルス遺伝子型の60%をカバーしている2価4価ワクチンも大きな効果は証明されています。しかし、2価4価ワクチン接種済みの女性が検診で異常所見となり精密検査に訪れるのも事実です。 オーストラリアでは、もうすぐ子宮頸がんが撲滅されると言われる中、日本では毎年3万人が頸がんを宣告され、毎年3千人の若い女性が亡くなる、異様に身近な「癌」なのです。 日本では、1994年〜1999年生まれの女性のみ定期接種してきた過去があります。
2000年以降、日本はワクチンの積極推奨を手放し、子宮頸がんの症例数は近年もどんどん増加し続けていても沈黙を続ける日本行政。 国際機関から名指しで非難されても、なお、子宮頸がんワクチンの積極推奨に我関せずの日本。 子宮頸がんワクチンを推進してこなかった日本行政に対して日本の女性たちは訴訟すべきである、と声をあげる医師さえもいます。 今回は、「子宮頸がん9価ワクチンが承認された」という一歩であり、これは世界スタンダートに少し近付けただけにすぎません。 なぜなら、日本行政はまだ積極的に定期接種の奨励するには至っておらず、2020年現在も日本は子宮頸がんワクチン接種率は0.1%以下なのです。 なぜ男性も子宮頸がんワクチンを接種するといいのでしょうか?
妻が子宮頸がんを発症したら、そう、それは夫がうつしたウィルスのせいかもしれません。この事実はあまり知られてませんよね。男性にしてみたら疑いたくなる事実だと思います。
このウイルスに感染してから頸がんが発症するまでは、数年〜十数年と言われています。逆算したら、必ずしも夫がうつしたウィルスのせいかどうかは定かではありません。 子宮頸がんの診断をご夫婦で聞きに来られる際、やはり結構気を遣います。そりゃそうですよね、貴方の愛する妻を癌にしたのは、貴方の持っていたウィルスのせいかも知れませんから。でも、そんなことは口が裂けても自分の患者には言えません。 男性が子宮頸がんワクチンを打ったら、男性自身の肛門癌や咽頭癌も予防できます。それと、貴方の愛するパートナーを子宮頸がんから守ることも出来るのです。 日本以外の77カ国が男性へのHPVワクチンを承認しており、そのうち24カ国が公費補助しています。女性を大事にするブラジルとかは当たり前のように男性も9価ワクチン打っています。 日本のような女性地位が低い国では、男性がHPVワクチンを打つなんて議論にもなりませんよね。男女とも9価ワクチンを当たり前に定期接種する、こんな簡単な事が日本では10年単位で遅れているのです。 定期接種は無料です、ただし小6〜高1まで。
定期接種が小6〜高1生というのは、性交渉する前の年齢で免疫をつけるためです。
子宮頸がんワクチンの定期接種とは、小6〜高1生の間に計3回打ちます。1回目のあとは、2ヶ月後に2回目、6ヶ月目に3回目。 計3回とも無料で接種するためには、高校1年の秋までに1回目を打たなくてはなりません。そうすると3回分全部無料となります。 小学校6年生から高校1年生までの間にに各自治体の役所で問診票をもらい、その問診票を持参して指定された施設に行ってワクチン接種する、という流れです。 高校2年生になったら、途端に自費診療つまり有料になります。うちのクリニックでは1回分15000円です。初診代など入れて、計3回分で5万円前後が相場です。 自費診療のワクチン接種の相場が5万円って高額のように見受けられますが、これは殆ど病院の収益にはなっていません。ほぼ仕入れ値ですから。 全女性の8割は、ヒトパピローマウィルスに生涯に一度は感染しています
大人になっても子宮頸がんワクチン接種をした方が良いですか、という質問をよくされます。
40歳以降の子宮頸がんワクチン接種は、別に接種してもいいのですがあまり奨励していません。なぜなら、年齢があがればすでに感染した人ばかりだからです。 事実、8割の女性が生涯で一度はこのウイルスに感染しているという報告があります。ある程度の大人の方には、ワクチンよりも、むしろ定期検診をしっかり受けることを勧めます。 実際に、このウィルスに感染してもほとんどの女性は免疫力で何ともなく感染に打ち勝ってるのです。ごく一部の女性だけが子宮頸がんを発症してしまいます。
一般にHPVは180〜200種類くらい存在するのですが、そのうち15種類くらいが子宮頸がんに関連する種類の遺伝子型なのです。HPVは、性交渉で男性から女性、または女性から男性にうつります。 この癌の原因となるHPVを「ハイリスクHPV」といい、この「ハイリスクHPV」に感染した人の0.1〜0.3%が子宮頸がんを発症するのです。
だから、男性もワクチン接種すべきなのです。自分の妻が子宮頸がんになってからでは、後悔しても仕切れませんから。
男性の皆さんにとって、自分が持ってたウイルスのせいで妻が癌になった、なんて知りたくない事実ですよね。 「子宮頸がんはもはや人災」という国もあります。ワクチン接種を推進しない国政を訴えるという国民が出てきてもおかしくありません。 世界中で子宮頸がんワクチンを実施している中、日本の子宮頸がんワクチン接種率は0.1%以下。子宮頸がんは驚くほど身近な癌です。だから日本は定期検診をちゃんとしないといけない国なのです。 子宮頸がんで毎年1万人以上の若い女性が子宮全摘を強いられ、毎年3000人もの若い女性の命が失われているのですから。 |
藤田 由布
産婦人科医 レディースクリニック サンタクルス ザ シンサイバシ 院長 大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。 飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。 女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。 ⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら FB:https://www.facebook.com/fujitayu レディースクリニック サンタクルス ザ シンサイバシ 〒542-0085 大阪府大阪市中央区心斎橋1-8-3 心斎橋パルコ10F TEL:06-6253-1188(代表) https://shinsaibashi.santacruz.or.jp/ |
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