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小森 利絵 フリーライター えんを描く
レターセットや絵葉書、季節の切手を見つけるたび、「誰に書こうかな?」「あの人は元気にしているかな?」などアレコレ想像してはトキメク…自称・お手紙オトメです。「お手紙がある暮らし」について書き綴ります。
おてがみじかん ライフスタイル 2019-04-26
お手紙とわたし~魚野みどりさん編④~
私のまわりにいる「日常の中でおてがみじかんを楽しんでいる人」にインタビュー。3人目は魚野みどりさんです。お手紙の思い出や楽しみ方などについてうかがったインタビューを4回に分けて紹介しています。

「家族との思い出編」「旅先から自分宛のお手紙編」「お手紙はアート編」とお話をうかがってきて、第4回目となる今回は「ひとり言みたいなお手紙編」です。

これまでお手紙といえば業務連絡用がほとんどだったそうですが、最近、映画や芝居を観た後に飲食店で「まるでひとり言のようなお手紙」を書くようになったそうです。そのきっかけとは? どんな内容のことを書いているのでしょうか。お話をうかがいました。
最近、業務連絡以外にも、お手紙を書く機会が増えたそうですね。

魚野さん: 映画や芝居を観た後に、飲食店で食べたり飲んだりしながら、ひとり言みたいな手紙を誰かに向けて書くようになりました。

というのも、出かける時は「1人で」が基本。何かを観に行くにしても、誰かと一緒だったら「私はこれが観たかったけど、この人はこの映画でよかったのかな」とあれこれ考えるのはしんどいし、観た後にごはんを食べに行くのでも、その時の気分によって食べたいものが変わりますし、「帰りたいなあ」というタイミングもありますから。

1人で好きなものを、観て、食べるという至極の時間を過ごすことを大切にしています。

そんな時間を誰かと共有したくなるんでしょうね。1人でさみしいというわけではなくて、「めっちゃ、楽しかったわ」ということを伝えたくなるんです。

以前はそういったことをフェイスブックに投稿していたのですが、最近は遠のいています。ツイッターやメッセンジャー、ライン、メールなどさまざまなツールがありますが、「今、ここ、すぐ」を共有したいわけではないし、すぐに反応してほしいものでもないなあって。

至極の時間に浸る中で、その時に思ったことを書く。それから数日経って、相手に届く。その頃には私は平常心に戻っているし、相手にとっては数日前の出来事として伝わる。そのくらいの温度感がちょうどいい時があるんです。

「ひとり言みたいな手紙」とのことですが、どんなことを書いているのですか? また送る相手は「この人に」というのは決まっているのでしょうか。

魚野さん: この話をしたら、きっとわかってくれるという相手に書いています。

たとえば、映画を観て「この人に伝えたい」とぱっと顔が思い浮かんで、先日は「今日はこんな映画を観たんだけど、おもしろかった。今は映画館近くのインド料理店でマトンカレーを食べています。インド料理といえば、『クルフィ』が好き」など書きました。

その相手からラインで「『クルフィ』って何ですか?」と返事が来たから、「こういうアイスクリームなんだよ」と、そこからはラインでやりとり。

久々にプールに行った時は、昔同じスイミングに通っていた友だちに書きたくなりました。「泳ぎたくなって、プールに来たよ。泳いだら、めっちゃ気持ちがよくて、私はやっぱり陸に棲む動物じゃなくて、水で生きる動物かもしれない」と、しゃべったら恥ずかしくて言えないセリフを、文章だからこそ書けましたね。

友だちからは「あんた、酔っ払ってたんか」と返事がありましたけど(笑)。

心斎橋にある馴染みのお店に行った時は、学生時代に心斎橋を一緒に巡った思い出のある友だちに書きました。彼女は今、関東で暮らしているから、「『カワチ』が心斎橋から撤退した時も辛かったけれど、『心斎橋アセンス』もなくなるねんでー。今、一緒によく行ったあのフランス料理店にいます。もう昔みたいな雰囲気ではなくなってしまったけどね」に加えて、私の近況も少し書いたのかな。

そしたら、すぐに「どうしたん?何か辛いことがあったん?」と手紙で返事がきました。私からの久しぶりの手紙がさみしい雰囲気の内容だったから、心配してくれたようです。

ほかの人だったら「プールに行ったんだ」「フランス料理店に行ったんだ」で終わってしまう話でも、共有できる思い出があったり、膨らむものがあったりする相手となら、たった一言でも広がっていくもの、つながっていくものがありますよね。

そんなどんぴしゃな手紙を送りたくなるんです、最近。

お手紙を書きたい時に書きたい相手に書くのって、いいですね。いつでも書けるように、便箋や封筒など持ち歩いているのですか?

魚野さん: 手帳にハガキと切手を入れ、住所はスマホの中に登録しています。

ちなみに、ハガキは市販されているものではありません。箱をつぶした時にハガキになりそうなところを取っておいたり、梱包物に入っている厚紙を残しておいたりしたものを、ハガキサイズにカットしたものなんです。日常の中で紙モノを目にすると、どうしても「これはこう使える」などひらめいてしまうから捨てられない(笑)。

ペンは少なくても4色以上は持ち歩いていて、言葉だけではなく、その時に呑んでいるハイボールの絵などちゃちゃっと絵を描くこともあります。
「ひとり言のようなお手紙」を書くようになったきっかけはあるのですか?

魚野さん: 昨年、社会人になって関西を離れることになった娘へ手紙を書いたのがきっかけです。

これまでの感謝や思い出、新生活に向けてのことなど、直接顔を合わせたら照れて話せないことを手紙に書きました。書き出したら止まらなくて、気づいたら、B5サイズの白紙が綴られた冊子の1冊弱ほども書いてしまっていたんです。手紙って、しゃべる以上に本音が話せるんだと気づきました。

対面や電話とは違って、それぞれのタイミングでメッセージをやりとりできますし、あとに残るというのもいいですね。私が1歳の頃に母にもらった手紙や旅先から自分宛に送った手紙のように、後々にまた読むことができて、その時「ああ、お母さん、こんなことを書いていたなあ」と、また届くものがあるのではないかなとも。

娘が大好きなオソブランコさんの紙雑貨と一緒に手紙を送ったら、うわぁっとこみ上げてくるものがあったらしくて。「母親以上に女性の先輩だと思った」と言ってくれました。

そこから娘とライン電話をして、映画『戦場のメリークリスマス』の話になりました。「異常も日々続けば、正常になる」・・・つまり軍国主義も毎日続けば、それが当たり前になるというふうな話があって、自分をしっかり持つことが大事やなあと話し合ったんです。

この間の台風を経験して、より強く思うようになりました。電気がついて、水が出て、当たり前のように過ごせていたのが、過ごせなくなることがあります。天災であれば仕方がないけれど、戦争など人災だったら許せない。きな臭い世の中、どれだけ自分をしっかり持って生きていけるか。

思った時に思ったことを書いておくことも大事。その手段の1つとして、手紙はいいなあと思い始めたところなんです。

(2018年9月取材)
※お話をうかがって

フェイスブックやツイッター、ライン、メールなどは、相手とすぐに連絡を取りたい時は便利ですが、相手に対して「すぐに返事しなければならない」「反応しなければならない」と思わせてしまう可能性がある上、「今」つながってしまうからやりとりが始まってしまうこともあります。

特に、連絡を急いでいない時や返事を求めていない時にそれらのツールを使ってしまうと、「今、ここ、わたし」を楽しめなくなることがあるのではないでしょうか。

手紙は相手が読むまでに時間がかかるものです。郵便なら届くまでに時間がかかりますし、届いても相手がすぐに読むわけでもないからさらに時間がかかります。「時間がかかる」ということが、ほどよい温度感、距離感をつくり出してくれることがあるように思います。

ツールそれぞれに、それぞれの「時間の流れ」というものを持っているなあと、魚野さんのお話をうかがって思いました。また、思った時に思ったことを書いておくことの大事さについても思うことがありました。
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レターセットや絵葉書、季節の切手を見つけるたび、「誰に書こうかな?」「あの人は元気にしているかな?」などアレコレ想像してはトキメク…自称・お手紙オトメです。「お手紙がある暮らし」について書き綴ります。
小森 利絵
フリーライター
お手紙イベント『おてがみぃと』主宰
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP:『えんを描く』
 
『おてがみぃと』
『関西ウーマン』とのコラボ企画で、一緒にお手紙を書く会『おてがみぃと』を2ヵ月に1度開催しています。開催告知は『関西ウーマン』をはじめ、Facebookページで行なっています。『おてがみぃと』FBページ

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