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小森 利絵 フリーライター えんを描く
レターセットや絵葉書、季節の切手を見つけるたび、「誰に書こうかな?」「あの人は元気にしているかな?」などアレコレ想像してはトキメク…自称・お手紙オトメです。「お手紙がある暮らし」について書き綴ります。
おてがみじかん ライフスタイル 2018-08-24
出せなかった手紙~自分の中で止めた“何か”を動かす~
気持ちを伝えたいのに、伝えられない。

「もっと、気持ちを伝えたかった」この世にはいない大切なあの人へ。「どうして、あの時そうしてしまったのだろう」と後悔の気持ちが残るあの人へ。「元気だったらいいなあ」と願う、連絡先がわからなくなってしまったあの人へ。これから出会えるのを心待ちにしているあの人へ。

自分の心に残る、誰かへの想いはありませんか?

そんな想いをお手紙に託す「出せなかった手紙」をテーマに、先日「おてがみぃと」(ゆるやかにお手紙を書く時間を楽しむ会)を開催しました。
私は1992年、今から26年前の父に書くことにしました。2018年を生きる36歳の私から、1992年を生きる42歳の父へ。父は今も生きていて、一緒に暮らしてもいるのですが、その時代にずっと心にひっかかっていることがあるからです。

1992年、私は10歳、父は42歳でした。その年の5月に母が癌で亡くなりました。父は以前にも増してお酒を飲むようになり、ある日包丁を片手に「おまえを育てる自信がない」「一緒に死のう」と。

私自身、母が亡くなって、自分が何をどう感じているのかわからない中、その一言。どこか「なんで、父に生死を左右されないといけないのか。私は生きたいから、死ぬのなら父ひとりで」と冷めた自分もいながら、やっぱり「父に生きてほしい」と鍵穴から監視する自分もいて。

まるで黒い点のように心に残っていて、その場面をよく思い出していたんです。中学・高校時代には母との思い出などとも重なって、自己肯定感を持てず、「自分は生きていてもいいのか」と生きづらさを抱えるようにもなっていました。

この出来事を思い出すたび、自分なりに解釈してきましたが、頭と心の中でぐるぐる考えるだけだったので、一度言葉にして出してみようと思ったんです。
当時の父にしゃべりかけるように、あの時の出来事、あの時の私はこんなことを感じていたんだと、自分の中から出てくるままに言葉にしていきました。

「『母が亡くなってびっくりしました』。本当にその言葉でいいのか?」と自分に問いかけ、「どこか他人事みたい」と考えるうち、「『びっくりした』というよりは『未だにわからない』が近いなあ」と。「そうだ。まだ、あの時の自分の感情が『わからない』のだ」と言葉にしては自分の気持ちを確かめることを積み重ねながら。

「出さない手紙」であるからこそ恐れずに、溢れるまま、思い浮かぶままに気持ちや想いを書いていきました。

今、私はあの時の自分と同じ10歳の娘を育てています。あの時は自分の気持ち、自分のことで精一杯だったけれど、自分も子育てをするようになった今なら当時の父の気持ちが少し想像できるような気がしました。

父も悲しさ、辛さを抱え、男手一つで子育てしなければならない現状に途方に暮れたんだろうと。母方の祖母は同じ文化住宅で暮らしていたものの、心置きなく頼ることはできなかったでしょうし、10歳の子どもといえば中間思春期で、父に反抗して悩ませていたでしょう。

あんな言葉、あんな行為をせざるを得なかった状況があったのだろうと思いました。
自分の気持ちや想いを言葉として外に出せたことで、「あの時、父はどんな気持ちだったのだろう?」と想像できた自分がいました。さらには「あれから26年、父はどのように生きてきたのだろうか」と思いを馳せる自分もいました。

書けば書くほどに「黒い点」に思えていたものが、筆先を置いたようにじわっと滲んできて、「黒い点ではなかった」のだと。自分の心の中に気持ちや想いをとどめていた時は「私は」という自分の視点しか持てなかったけれど、お手紙として外に出したことで「父は」と父のことを想像する視点が芽生えました。

自分の中で止めてしまっていた“何か”を動かす、そんな不思議な感覚があったんです。

心の中にある、誰かとの関係性の中で生まれた気持ちや想い。「私」と「あなた」という最小のコミュニケーションの単位でやりとりできるお手紙という形で、心の外に出すことによって、手離せたり発見したりできることがあるのだと思いました。
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レターセットや絵葉書、季節の切手を見つけるたび、「誰に書こうかな?」「あの人は元気にしているかな?」などアレコレ想像してはトキメク…自称・お手紙オトメです。「お手紙がある暮らし」について書き綴ります。
小森 利絵
フリーライター
お手紙イベント『おてがみぃと』主宰
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP:『えんを描く』
 
『おてがみぃと』
『関西ウーマン』とのコラボ企画で、一緒にお手紙を書く会『おてがみぃと』を2ヵ月に1度開催しています。開催告知は『関西ウーマン』をはじめ、Facebookページで行なっています。『おてがみぃと』FBページ

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