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池田 千波留 パーソナリティ、ライター 香のん
(←プロフィールは写真をクリック)宝塚歌劇の魅力にぐいぐい迫っていきます!
タカラジェンヌ歳時記 趣味・カルチャー 2014-07-18
受け継がれる伝統 「芝居の雪組」「日本物の雪組」
宝塚歌劇100周年の今年、第50期生である汀夏子はデビュー50周年を迎えました。
汀夏子が雪組トップスターだったころ、
宝塚歌劇団は1974年月組初演「ベルサイユのばら」で空前のブームを迎えました。
池田理代子原作の漫画の魅力プラス、
当時各組トップスターだった安奈淳、榛名由梨、汀夏子、鳳蘭の個性にかぶりがなく、
実力人気ともに充実していたことがブームの推進力だったと思われます。
それは2014年4月、宝塚歌劇団100周年を記念してオープンした殿堂に
4人とも選ばれたことでも証明されているのではないでしょうか。

この「ベルばら四強」の中で、汀夏子の人気は群を抜いていて、
1976年には新宿コマ劇場の観客動員数記録を打ち立てています。
(当時、東京宝塚劇場は宝塚歌劇の常設劇場ではなく
新宿コマ劇場で上演される演目もあった)
観客動員記録を生んだ作品は柴田侑宏 作・演出の「星影の人」。
新撰組を題材とした作品で汀夏子が演じた主役は沖田総司でした。
当時の宝塚歌劇では、演出家がトップスターの個性を見極めて
あて書きをしていました。
大人になりきっていない少年のような風貌、
ちょっと甘えん坊で、いたずらっけもあるものの
剣をとれば凛として強い。
短い生涯を燃やし尽くして歴史に名を残した沖田総司は
汀夏子の個性にぴったりとはまり、ファンの心をとらえたのでした。
汀夏子自身、デビュー50周年お祝い会の席で「もう一度演じてみたい役は?」と質問され
「沖田総司」を挙げていて、まさに自他ともに認める代表作の一つです。

明石照子、真帆志ぶきといった演技巧者なトップスターが続いたことで
このころ雪組は「芝居の雪組」と呼ばれていました。
それがいつのころからか「日本物の雪組」と呼び名が変わったのは
汀夏子の「星影の人」のように、
歴代トップスターに日本物の代表作、印象的な役柄があるからでしょう。

1985年トップスターになった平みちには「大江山花伝」があります。
漫画家 木原敏江の「大江山花伝」の舞台化で
茨木童子の葛藤や、恋を描いた物語でした。
一般的な鬼のイメージを覆す「美しい鬼」は宝塚歌劇ならでは。
幻想的なこの作品は2009年に宙組 大空祐飛で再演されています。

平みちのあとを受けてトップスターになった杜けあきは
日本物がよく似合う風貌で、「この恋は雲の涯まで」の源義経の好演後、
1993年の退団公演では「忠臣蔵 花に散り雪に散り」で大石内蔵助を演じました。
宝塚歌劇のトップスターが中年男性を演じてうけるのだろうかという心配を
男役の集大成といった充実の演技で一掃。
吉良邸討入りを果たしての幕切れ
「もうこれで思い残すことはござらん!」というセリフは
本懐を遂げた大石内蔵助の言葉であると同時に、
宝塚歌劇団を去る杜けあきの言葉として、観客の心を強く打ちました。
くしくもこの公演は旧宝塚大劇場が取り壊される直前の公演で
宝塚大劇場への惜別の思いとともに、
雪組ファンに限らず、宝塚ファンの心に残ったのです。

余談になりますが、100周年を記念して4月に開催された記念公演
「時を奏でるスミレの花たち」で新旧トップスターがそれぞれの代表曲を歌った際、
杜けあきが歌ったのは「忠臣蔵 花に散り雪に散り」の主題歌。
もちろん歌の後には「もうこれで、思い残すことはござらん!」のセリフ付き。
ところが、音声スタッフが若手だったのか、
歌が終わるや早々に音声スイッチを切っていたらしく、セリフはマイクにのらず。
当時を知るファンを大いに残念がらせたのでした。

杜けあきから雪組のバトンを託された一路真輝には「雪之丞変化」があります。
スタイリッシュでスーツの似合う男役だった水夏希も
「星影の人」再演で沖田総司を演じ
中日劇場でのトップスター プレお披露目を飾りました。

宝塚大劇場公演を中心にざっと見ただけでも
雪組は日本物の印象的な作品に恵まれてきました。

そこにもう一つ加わったのが雪組トップスター壮一帆のサヨナラ公演
「一夢庵風流記 前田慶次」です。

「散らば花のごとく。楽しゅうござるのう」
会心の笑みを浮かべ、宝塚歌劇団を去る雪組トップスター 壮一帆。
「一夢庵風流記 前田慶次」は隆慶一郎の人気小説を舞台化したもので
壮一帆はかねて、前田慶次を演じてみたい役として公表していました。
やんちゃで男気があって、しかも純なところがあり
何事も独自の美意識で行動する戦国武将 前田慶次郎利益。
彼を象徴するのは、傾奇者と呼ばれるその身なりと
悪魔の馬とまで称された名馬・松風に乗り長槍をふるう姿。
きらびやかな衣装は宝塚歌劇の売り物なので心配はしていませんでしたが
名馬・松風はどうするのか…。
ここで現れたのは歌舞伎の「馬」。
松竹の協力で、人間が2人で前足と後ろ足を勤める「馬」は
ある意味本物の馬よりインパクトが大きく、客席を大いに沸かせました。
松風の人気は日に日に高まり、
マスコットの松風ぬいぐるみが発売されると、早々に売り切れ。
追加生産がかかるという事態にまでなっています。
こんな話題まで飛び出した「松風」の出演は、
ふだんはライバルとも言える松竹の協力があってこそ。
これも去りゆく壮一帆への大きな餞と言えます。

その「松風」の馬上、慶次が幕切れに放つセリフ
「散らば花のごとく。楽しゅうござるのう」は
さばさばと明るく、壮一帆のイメージにぴったり。
トップ就任期間は決して長くないものの
悔いなくやりきったのだろうと伝わるものがありました。
壮一帆は退団公演の前に、梅田芸術劇場で
近松門左衛門原作「心中恋の大和路」(梅川・忠兵衛)の忠兵衛でも好評を博しています。
舞台から伝わる満足感の中には
「芝居の雪組」「日本物の雪組」の伝統を繋いだことも
含まれているのではないかと思います。

とはいえ組の伝統はトップスター 一人で作り上げられるものではありません。
舞台に登場するすべての人物がそれらしく見えなければ芝居は薄くなります。
日本人全体の生活様式が変わった現代では
日本物の芝居は、演技以前に、着物のきこなし、歩き方、所作など
改めて身につけなければならないことが多いのです。
それなのに最近は、宝塚音楽学校受験前にバレエや歌を勉強してくる人は多くても
日本舞踊など和物のお稽古をしている人はめったにいません。
だからこそ定期的に日本物の芝居を上演し、
上級生から下級生へ、日本物の芝居心、立ち居振る舞いを伝えていく必要があるのです。

一方で作品を作る演出家の責任も重大です。
上にあげた雪組日本物の作品のうち
「星影の人」「大江山花伝」「忠臣蔵 花に散り雪に散り」「雪之丞変化」は
宝塚歌劇団の演出家のひとり、 柴田侑宏の作品。
健康上の理由からか、最近は新作が少なくなっている柴田侑宏の後を継ぎ
洋物だけでなく日本物も得意とする演出家が現れることを、切に期待しています。

最近は組替えにより、なじみのない組でトップスター就任というケースが増え
組のカラーも薄れ気味。
そんな中、何十年もの間「日本物の雪組」と言われ続けるのは
素晴らしいことだと思います。

壮一帆の最後の傾奇っぷりと「日本物の雪組」を ぜひ劇場でご覧ください。

雪組
宝塚傾奇絵巻「一夢庵風流記 前田慶次」
グランドレビュー「My Dream TAKARAZUKA」

東京宝塚劇場:2014年8月1日(金)~8月31日(日)

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