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藤田 由布 婦人科医 レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ
生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、女性にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2023-07-13
中高生全員に「緊急避妊ピル」について教えてあげて下さい!
緊急避妊ピルは、「アフターピル」とか「モーニングピル」とも呼ばれています。

1日1錠ずつ内服するいわゆる一般の「避妊ピル」とは違い、緊急避妊ピルは3日(72時間)以内の性行為後の緊急措置として行う内服(1錠のみ)の避妊方法です。

・コンドームが破れてしまった
・レイプ被害を受けた
・避妊に失敗した

といった非常時に、女性が婦人科を受診して緊急避妊ピルを服用することで、約85〜90%以上の妊娠を回避することができます。

避妊が失敗した時点から早く内服すればするほど、効果は高いです。
どんなに注意しても、避妊に失敗することは誰にでも起こり得ます。

事実、コンドームでさえ85%程度の避妊効果です。

つまり、ちゃんとコンドーム使ってても、100人中15人は妊娠してしまうのです。

全ての女性が、すぐにいち早く「緊急避妊ピル」にアクセスできることは、女性の当たり前の権利なのです。
成分や作用とは?
緊急避妊ピルのうち、日本で広く使われているのは「レボノルゲストレル錠1.5mg」です。この有効成分は、第2世代とよばれるやや強めの黄体ホルモン薬です。
経口避妊薬のトリキュラーやアンジュ、ラベルフィーユ、ジェミーナ(月経困難治療薬)に含有されている黄体ホルモンも、レボノルゲストレルです。

例えば、低用量ピルのジェミーナに含有されているレボノルゲストレルは0.09mgです。緊急避妊ピルのレボノルゲストレルは1.5mgです。

緊急避妊ピルは、一般の低用量ピルの約15倍ほどの黄体ホルモンを一度に内服して体内での作用を高めているということです。だからと言って身体に害があるわけではありません。

WHO(世界保健機構)は「緊急避妊ピルを内服してはいけない年代などない。安全なピルである。」と断言しています。

緊急避妊ピルは短期間で排卵を遅らせ、子宮内膜(受精卵が着床する部分)の状態を変化させ、精液が動きにくい粘液に変化させて、妊娠の成立を防ぎます。

ここで大事なのは、緊急避妊ピルはあくまでも緊急的に用いるもの、ということです。
普段の避妊法には向きません。普段から1日1回内服して避妊するのは「低用量ピル」です。

「アフターピルがあるから普段から避妊をしなくて大丈夫」ということでは決してありません。

また、コンドームの使用は、蔓延するクラミジアや淋菌など性感染症を予防するために大変重要です。

ここで困った問題は、日本のアフターピルは世界では類を見ないほど高額ということ。

日本で認可されている緊急避妊ピルは、レボノルゲストレル(ノルレボ)のみです。

ネットで販売しているマドンナ(タイ製)などの緊急避妊ピルは日本では認可外のピルです。
日本だけ、なぜ緊急避妊ピルが入手しにくいの?!
日本政府は2020年10月7日、「緊急避妊薬」について医師の処方がなくても薬局で購入できるようにする方針を固めましたのに、一転してこの決議は頓挫してしまいました。

2022年4月28日の厚生労働省の会議では結論が出ず、またも議論は棚上げ持ち越し。 多くの政治家や医師からの反対があったからです。
顎が外れるかと思いました。「この国は地獄か」とさえ思えました。

誰が反対しているのか。誰が女性の人権を迫害しているのか。驚愕です。

緊急避妊ピルは、性暴力を含め、望まない妊娠を防ぐ目的です。これは女性の当然の権利です。

皆さんはご存知でしたでしょうか。

欧州やアジアなど世界の86カ国では、この「緊急避妊薬」は医師の診察なしで購入することができ、日本では国際的な遅れがずっと前から指摘されていました。

緊急避妊薬のノルレボは、禁忌や副作用は少なく安全な薬であり、WHOやアメリカ産婦人科学会でも産婦人科の診察は不要だとしています。

WHOでは、「緊急避妊ピル 」は必要とする全ての女性がアクセスできるようにするべき薬とも言っています。
日本のアフターピルの相場は1万円相当です。無料の国もあるのに。
緊急避妊は、保健適応ではないので自費診療となります。
保健適応だと3割負担ですが、自費診療だとやはり高めです。婦人科クリニックによりけりですが、相場は8000〜13000円くらいです。正規品からジェネリックのものもあります。

高額ですよね。

私がいつも言うのは「相手の男性にせめて半額は払ってもらって下さい」ということです。

でも、やっぱり、いつも支払うのは女性たち。

1万円そこらする緊急避妊ピルを使うなら、普段からピルを内服しておくのが賢明かもしれません。一般の経口避妊ピルなら、1ヶ月の費用はだいたい1500〜2500円そこらです。
アクシデントから72時間以内は効果あり
緊急避妊ピルは、1回1錠飲みきりタイプが殆どです。
処方してもらったら、できる限り速やかに服用してください。

性交後72時間以内に服用しても完全に妊娠を阻止できない場合もあります。

また、服用後は大量の飲酒などで嘔吐しないように注意してください。嘔吐によってお薬の吸収が十分にできない場合があります。

早い方で3~4日、通常7~10日後に生理のような出血があれば、今回の妊娠は回避されたことになります。

ただし、2週間経っても生理のような出血がない場合は受診をご検討下さい。尿検査や経腟式エコー検査で、妊娠の有無や状態を確認します。

緊急避妊ピルを一度でも服用すると、生理の周期が乱れる場合があります。また、生理不順が継続する場合もあるので、そういった場合は、かかりつけの婦人科でご相談ください。

困った時は、おばちゃん医師の所に安心して来て下さい。私はあなたの味方です。
緊急避妊ピルの副作用はあるの?
緊急避妊ピルの副作用は、吐き気や嘔吐、頭痛などがおこる場合があります。

一時的なものですが、心配な時は、吐き気止めを一緒に処方してもらいましょう(市販薬の制吐剤でも大丈夫です)。

緊急避妊ピルの服用後2時間以内に吐いてしまった場合、かならず医師に相談して下さい。ピル服用後2時間を経過してからであれば大丈夫です。
日本は中絶は未だに「手術」という選択1つのみ
緊急避妊薬は、胎児奇形や、将来の不妊の原因にはなりません。

避妊に失敗したまま放置し、望まない妊娠が成立してしまうと、中絶手術をせねばなりません。

日本という国は、中絶は手術という選択肢しかありません。日本は世界から10年以上も遅れているという事実も併せて知っておいて下さい。
服用後に避妊のない性行為をすれば、妊娠の可能性はあります。緊急避妊ピルの服用後、避妊の成功が確認できるまで、コンドームを使うなどの避妊法をちゃんと行って下さい。
中絶手術は、手術後に感染が起こったり、子宮を傷つけて子宮穿刺(子宮に穴があくこと)や腹膜炎などを起こさなければ、将来の妊娠に影響ありません。

とはいえ、やはり妊娠中絶の手術は、子宮や母体にどうしても負担をかけてしまうものです。

手術がきちんと終われば子宮も元の状態に戻りますが、ただし、中絶手術の精神的なストレスからホルモンバランスが乱れたりして、卵巣機能に異常が出る可能性は否定できません。

なお、服薬による中絶をおこなう方法も日本も認可されましたが、運用方法はいまだ議論中です。

世界では10年以上前からとっくに認可され運用されていますが。しかも数千円という誰もがアクセスできる価格です。
普段からの避妊が大事!
緊急避妊ピルで妊娠を回避できた!の次は、経口避妊薬を服用するようお勧めします。

経口避妊薬(低用量ピル、避妊ピル、OCとも呼ばれる)は女性が自ら自分の身を守ることができる確実な避妊方法です。正しく服用していれば、ほぼ100%の避妊効果を継続します。
日本で認可されている経口避妊薬には、マーベロン(ファボワール)、トリキュラー、シンフェーズ、ラベルフィーユ、アンジュがあります。

また、月経困難治療薬(保健適応)は、ドロエチ(ヤーズの後発品)、ヤーズフレックス、ジェミーナ、フリウェルなどがあります。

経口避妊薬も月経困難治療薬も、呼び名は違えど全て低用量ピルで避妊効果があります。どれも作用機序は同じ、それもそのはず、中身がみんな同じですから。
低用量ピルについてはこちらもご覧ください
→今さら聞けない、ピルって本当に安全なの?
ただし、ピルは性感染症の予防にはなりませんし、子宮頸がんの予防にもなりません。

定期的な子宮頸がん検診は大変重要です。

過去2年以内に子宮頸がん検査をしていない人は、婦人科で「頸がん検査していないです!」とご相談くださいね。
パートナーが避妊に協力してくれない・・・という時は?
まず、そんなポンコツ野郎は捨ててしまいましょう。

大事なことは、イヤなのに性的なことをむりやりしたり、避妊に協力しないことは「暴力」ということです。我慢しなくてよいのです。しかるべき専門機関や民間団体にいつでも相談できます。

覚えておいて下さい。避妊の協力を拒否する行為そのものが「性暴力」ということ。
レイプなど、性暴力の被害にあった場合
もし性暴力被害にあったら、SACHICO(サチコ)のホットライン(072-330-0799)にお電話して下さい。このSACHICOという団体は、性暴力にあってまもない(7日以内)女性へ総合的支援を提供しています。
性暴力やレイプによるものは、緊急避妊薬の公費援助が受けられる場合があります。

1人では不安という女性も、安心して下さい。うちの婦人科にいらっしゃい。飛び込みでも大丈夫です。性病をうつされていないか、しっかり避妊できるよう、これらの大事な支援を受けられるよう、全力で支援いたします。

どんな形であってもあなたの同意なしに、性的に接触することは性暴力です。また、たとえ接触がなくても、性的な言葉や行動であなたの存在をおびやかすような行為は、性暴力です。
いいですか、あなたにどんなことが起こったとしても、あなたが悪いのではないこと、あなたの責任ではありません。

※特定非営利活動法人 SACHICO 「性暴力救援センター・大阪 SACHICOのSACHICO」は、「Sexual Assault Crisis Healing Intervention Center Osaska 」の頭文字をとって名付け、直訳すると「性・暴力・危機・治療的介入センター 大阪」を表しています。
避妊は女性の当然の権利です
世界保健機構(WHO)は、こう断言しています。
「緊急避妊ピルは、服用できない医学上の病態はなく、服用できない年齢もない」と。

また、ちゃんと緊急避妊ピルの安全性を明言しており、以下のように勧告しています(2018年)。

「意図しない妊娠のリスクを抱えたすべての女性および少女には、緊急避妊にアクセスする権利があり、緊急避妊の複数の手段は国内のあらゆる家族計画プログラムに常に含まれねばならない」と。
いいですか、全ての女性には避妊する権利があり、避妊ピルは私たち全ての女性が簡単にアクセスできるべきものなのです。

避妊のことなどちゃんと知りたい時は、私たち産婦人科医がしっかりお伝えします(日本の学校教育ではまともな性教育が未だほぼ皆無なのも残念です)。

初めてだからちょっと不安だなぁ、、、と感じるのは当然のことですので、婦人科では対面でちゃんと説明致します。どうぞ安心してお気軽に婦人科をお訪ねくださいね。
profile
全国で展開する「婦人科漫談セミナー」は100回を超えました。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期障害は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、HPVワクチンのこと、婦人科のカーテンの向こう側のこと、女性の健康にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
婦人科医

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ 副院長
〒530-0013 大阪府大阪市北区茶屋町8-26 NU茶屋町プラス3F
TEL:06-6374-1188(代表)
https://umeda.santacruz.or.jp/

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