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藤田 由布 婦人科医 レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ
生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、女性にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2023-09-21
腟のトリセツ「かゆみの原因」について
オシモのトラブルは婦人科へ
オシモ周りには神経が多く走っているので、ちょっとした変化で「むず痒い」症状が起こってしまいます。

実際、私の婦人科外来には毎日10名ほどの女性が「オシモのトラブル」で受診しています。

注意したいオシモの症状は以下の5点。

・腟が痒い!!
・オシモ周辺の皮膚に赤みやタダレがある
・色の付いたオリモノが増え、臭いが強くなった
・オシモや腟の中に痛みを感じる
・オシモに痛みを伴うデキモノができた


このような症状がある時は迷わず婦人科をご受診くださいね。
腟がむず痒くなる病気
■カンジダ症

腟がむず痒くなる原因で一番多いのが、カンジダという真菌(カビ)が増えるカンジダ症です。

性行為による感染というよりかは、日和見感染といって自分の免疫力が低下することで起こってしまうことが多いです。例えば、妊娠、糖尿病や、季節の変わり目などによる体力低下などです。

カンジダに感染すると強い痒みと、ヨーグルト状のパサパサとしたおりものが増えます。

オシモに炎症がおこり、軽いむくみ、赤みができることがあります。炎症が強くなることで痛くなって、性交痛や排尿痛が怒ることもあります。

婦人科では、腟の中を洗浄して腟内に薬を挿入することで軽快することが多いです。

■トリコモナス症

トリコモナス症は「原虫」が原因です。バイ菌や真菌とは違って、泡立ったサラサラな黄色のオリモノが増えます。

トリコモナスは性行為で感染することで知られていますが、性行為意外の感染経路もあります。例えば、湿ったタオル、便器、浴槽、下着などでも感染します。

女性の場合は、腟の中だけでなく、膀胱や尿道への感染もあります。

婦人科検診で、子宮頸部細胞診(頸がん検査)の結果用紙に「トリコモナス原虫も認められます」と書かれていて、婦人科を受診される女性も時々います。2割ほどの方は、感染していても症状が無くて気付かない人もいます。

トリコモナス症は、感染してから症状が現れるまで10日間前後です。腟の中が燃えたぎるように熱く感じて強い痒みと出血(点状や斑状の発赤)が起こることもあります。

婦人科では、腟の中を洗浄し、腟状を挿入したり、内服薬を処方したりします。パートナーも同時期に同じ治療を行うのが原則です(男性は泌尿器科へ)。
■ヘルペス

とにかく痛い! 痒いというよりは痛すぎて歩けないくらい!

性行為で感染する「ヘルペスウィルス」が原因で、オシモに2〜3mmの水疱が複数でき、水疱が壊れたてグジュっとただれてしまいます。

めちゃくちゃ痛いし、尿がしみたり、歩いただけでもヒリヒリ痛いのが特徴的です。

オシモにできるヘルペスは、80%が再発します。

ヘルペスに一度でも感染すると、ウィルスは骨盤の神経節に移動して潜伏します。カラダが疲れて免疫力が低下すると再活性し、症状がまた現れてしまいます。

根治するのが難しいのが、このヘルペスウィルス。

初めてヘルペスに感染した場合は、70%ほどの女性が無症状で過ごします。 性行為から2〜7日ほどの潜伏期間で、その後に、オシモの左右対称にプツプツと水疱や赤い腫れが出てきます。

妊娠中のオシモにヘルペス感染すると、分娩時に産道で赤ちゃんにウィルスが感染する危険があります。赤ちゃんがヘルペス感染すると命にかかわるほど重症化する恐れがあるので、帝王切開で分娩することとなります。

ヘルペスの治療は、アシクロビルやバラシクロビルといった抗ウィルス薬の内服薬と、塗り薬の両方を使うことが多いです。

パートナーのオシモに水疱がプツプツできている場合は、性行為は控えましょう。

症状がなくてもコンドームを使うのが男の最低限のエチケットですね。これを拒む男や理解できない男はクズ野郎です。ご注意を♪

■尖圭コンジローマ

鶏のトサカのような淡いピンク色や褐色のデキモノ(イボイボ)が、オシモに数個ぷつぷつとできたら、それはコンジローマです。

イボがカリフラワー状に形成することもあります。

コンジローマは痒みや痛みを伴うことが珍しいです。症状がないために発見が遅れることも多いです。

原因は性行為で感染するヒトパピローマウィルスです。そう、子宮頸がんの原因となるウィルスと同じ種類です。コンジローマは遺伝子型が違うだけです。

一度体内に感染したこのウィルスは、排除することはできません。

治療は、イボの切除をしたり、「イミキモドクリーム」という塗り薬を使います。

尖圭コンジローマは、HPVワクチン(=子宮頸がんワクチン)で予防することができます。

ただし、1994年〜1999年生まれの日本の女性たちが接種した子宮頸がんワクチンは、サーバリックスという2価ワクチンだったため、コンジローマは予防できていません。

ご存じでしたか。世界では何年も前からとっくに9価ワクチンを公費で男女ともに接種しています。

日本以外の先進国の若者はみんな、子宮頸がん、コンジローマ、肛門がん、陰茎がん、中咽頭がんをしっかり予防するために大事なワクチンであることは学校教育で学んでいます。

男性がこのワクチンを接種することで、「パートナーを子宮頸がんから守る」ことも皆んな知っています。

どうやら、知らないのは日本人だけのようですよ。

■ダニ(疥癬)

疥癬(かいせん)はヒゼンダニの皮膚感染によって、強い痒みを生じます。どうやら、夜中に痒みがひどくなる傾向が特徴的です。

ヒゼンダニは0.2mmほどでです。

一度ヒゼンダニに感染すると、皮膚の角質層に寄生し1〜2ヶ月潜伏します。皮膚の中でダニは産卵して繁殖し、その虫の脱皮殻や糞がアレルギー反応をおこして、強い痒いや発疹が起こします。

老人ホームなどの施設内で衣服や寝具や接触によって感染することもありますが、性行為によって感染する場合もあります。

オシモ以外にも、指間、太もも、わき、おヘソの周囲などにも、小さな水疱や皮疹といった皮膚症状が現れます。

治療は、ダニ退治です。塗り薬(フェノトリンローションやイオウ剤)と内服薬(イベルメクチン)を医師に処方してもらいます。

■萎縮性膣炎
下着が触れるだけで痛い・・・!!!

更年期世代の多くの女性にとって悩ましいのが、この萎縮性膣炎です。

別名、老人性膣炎といった、なんだか年寄りめいた名称でも呼ばれています。

閉経によって女性ホルモン(エストロゲン)の分娩が低下することによって、腟や外陰部が萎縮して炎症をおこしてしまいます。

エストロゲンには粘液を分泌したり、膣内を湿潤な状態に保つはたらきがあるので、潤いが減少して乾燥しやすくなり、粘膜が薄くなって脆弱化してしまうのが、萎縮性膣炎の背景です。

むず痒いし、腟の中がヒリヒリ痛い、、、という声が多いです。 性交痛の原因となることも多いです。

対処法としては、エストロゲンを局所的に補充する膣剤を挿入したり、膣のレーザー治療法、オイルマッサージなどのセルフケアも有効です。
エストロゲンが減少すると、膣内の善玉菌にとって必要なグリコーゲンが枯渇し、細菌が繁殖しやすくにおいがでてくることもあります。そして、膣内に善玉菌がなくなると、感染症を発症しやすくなったりします。

自分で膣内を洗うのはNGです。

不必要に膣内を洗浄すると、pHバランスが崩れてしまい、膣カンジタなどを発症しやすくなってしまいます。

デリケートゾーン専用の弱酸性ソープを使って外陰部を手で優しく洗うのが良いです。ナイロンタオルやボディブラシでのゴシゴシ洗いはダメです。

普段目につく肌や髪のエイジングは早めに気づけますが、40歳を迎えた頃から膣にも今までなかった変化が現れます。

萎縮性膣炎は決して珍しくありません。外陰部が痛い、不正性器出血がある、おりものが増えた・臭う、性交痛があるといった症状がある場合は、遠慮なく婦人科を受診して下さい。

そのほかに、年齢に伴う膣の変化についてもお悩みの場合も、遠慮なくご相談くださいね。
profile
全国で展開する「婦人科漫談セミナー」は100回を超えました。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期障害は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、HPVワクチンのこと、婦人科のカーテンの向こう側のこと、女性の健康にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
婦人科医

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ 副院長
〒530-0013 大阪府大阪市北区茶屋町8-26 NU茶屋町プラス3F
TEL:06-6374-1188(代表)
https://umeda.santacruz.or.jp/

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