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藤田 由布 婦人科医 医療法人 大生會 さくま診療所(婦人科)
生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、女性にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2022-03-17
月経血にレバー状の塊が混じっていれば、過多月経です
ほとんどの女性がこう言います。

「他人と比べたことがないし、自分の生理の量が多いかどうか分からない。」

ごもっともです。自分の生理の量が多いのか、普通なのか、少ないのか、誰もハッキリと分かるはずもありません。他人と比べられない、ですものね。
過多月経とは?
正常な経血量の目安は、1周期の総量が20〜140ml。

はて。教科書的に140mlと言われても、誰もピンときません。

私は、より簡単に覚えてもらえるように、こう説明しています。

★昼間に夜用ナプキンを使っている人、過多月経です。
★レバーのような塊がドバっと出る人、過多月経です。
★1〜2時間おきにナプキン交換しなきゃならない人、過多月経です。
自己チェック、してみてください
では、具体的に指導されている過多月経について、皆さんも自己チェックしてみてください。

□ 昼でも夜用ナプキンを使う
□ 普通サイズのナプキンで、1時間以内に取り換える
□ 経血にレバー状のかたまりが混じる
□ 以前より月経量が増え、日数も長くなった


これらの質問のうち1つでも該当したら、過多月経の可能性が高いです。

以下の項目に心当たりありませんか?これは、過多月経による貧血チェックです。

□ 健康診断で貧血気味と言われたことがある
□ めまい、立ちくらみ、動悸、息切れがある
□ 疲れやすい
□ 頭痛や頭が重たい感じがする


貧血が起こるほど出血量が多いのは、やはり異常です。少しくらい経血量が多くても「月経だから仕方ない!」と思っていませんか?

過多月経は、女性特有の疾患のサインであることが多いです。 貧血の値であるヘモグロビン(血色素量)が11g/dl以下の場合はなおさらですが、経血量が多い人は、早めに医師に相談しましょう。

放置すると、不妊症や内膜症などの女性疾患の増悪リスクが高くなります。
過多月経の主な原因
過多月経の原因には、内膜症や筋腫などの子宮の病気がある場合と、子宮は正常だけどホルモンや血液の状態が影響している場合とがあります。

過多月経の原因となる主な子宮の病気として、3大女性疾患があります。

①子宮にコブができる「筋腫(しきゅうきんしゅ)」
②子宮の内側(内膜)の成分が、子宮内に広がる「腺筋症(せんきんしょう)」
③子宮の内側(内膜)の成分が、子宮外(お腹の中)に広がる「内膜症(ないまくしょう)」


多くの婦人科医らは、③内膜症が一番厄介といいます。他の①や②と違い、内膜症は発癌する危険性が比較的高いからです。
日本人の全女性の3分の1に、子宮筋腫があります
子宮は、平滑筋という丈夫な筋肉でできています。

筋腫は、子宮の筋肉内にできるコブのような良性腫瘍です。筋腫の大きさは、1cm以内の小さいものから15cm以上の大きなものまで様々です。

手術で摘出した筋腫は、まさに弾力性のある「つくね」です。
筋腫は、できている位置や大きさや数によって症状が変わります。
筋腫が、子宮の内側(内膜)に近い位置にできる「粘膜下筋腫」をもっている人は、経血量がべらぼうに多く、不正出血や月経痛、時には不妊の原因にもなります。

一方、10cm以上の大きな筋腫でも子宮の外側にできている「漿膜下筋腫」を持っている人は、症状がない場合もあり、診察で初めて気づくこともあります。

筋腫は女性ホルモンがエサとなって少しずつ育ってしまいます。だから、「生理があるうち=女性ホルモンがでているあいだ」は、大きくなる可能性があります。そして閉経とともに、筋腫は縮小化していきます。
生理痛や過多月経で悩まされる、子宮腺筋症
腺筋症は、子宮内膜の組織が子宮筋層に入り込み、子宮が人一倍ぷっくりと大きくなっています。

生理のたびに、女性ホルモンの影響を受けて内膜成分が増殖し、どんどんと子宮の筋層が分厚くなっていきます。

腺筋症があると、生理のたびに生理痛がひどくなっていく人もいます。
悪性化する危険もある、子宮内膜症
内膜症は、子宮の内側の内膜成分が、子宮の外に広がる病気です。

子宮の外とは、つまり、子宮の周辺にある大腸や小腸、卵巣やお腹全体をまとう膜(腹膜)などです。あちこちに広がった内膜成分が、生理のたびに出血や痛みをきたし、いろんな臓器をベットリくっつけてしまうのです(癒着)。

また、内膜症で有名なのが「チョコレートのう胞」です。

諸説ありますが、生理の経血が子宮から卵巣に逆流して卵巣内に血溜まりができると言われています。内膜成分が卵巣内に発生して卵巣内に血溜まりが出来る説もあります。

月経痛のある女性は、内膜症になりやすい!これは最近の研究でもはっきりとわかってきました。
国内の疫学調査では、チョコレートのう胞を有する女性の0.72%が卵巣ガンに移行し、45歳以上でのう胞径が9cm以上の場合はリスクが高いことが報告されている。(※谷口文紀著 産科と婦人科 2016;83(10):1190-1195) また、類内膜ガンも明細胞ガンも内膜症から発癌することが知られている。

内膜症そのものが過多月経を引き起こしているというよりかは、筋腫や腺筋症に併発されることが多く、過多月経を放置することで、知らず知らず内膜症が増悪しているケースもめずらしくありません。
治療方法
身体を冷やさないように・・・
ストレス解消を・・・
運動しましょう・・・
バランス良い食事を・・・

上記の事柄は、よく見かける文言ですが、これだけでは太刀打ちできない事が多々あります。

ちょっと運動してストレス解消したり、食事に気をつけたかって、過多月経はそんな簡単に治るものではありません。

また、「なるべく薬に頼らず、なんとか頑張ってます」という女性も多いのではないでしょうか。

月経コントロールをせずに、毎月の重い生理を騙し騙しでやり過ごすのは、危険です。それに、毎月の無駄な我慢大会です。

痛くなったら、すぐセデ○・・・
痛みに、負けル○・・・

鎮痛薬だけで、やり過ごすのも、根本的な治療とは言えません。

過多月経や貧血が続く場合は、まずは、かならず婦人科でご相談ください。
治療は手術だけではありません
婦人科疾患の治療は、なにも手術だけではありません。今は、本当にいろんな内服薬があります。
低容量ピル
エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲスチン(黄体ホルモン)の2つの女性ホルモンの混合剤を一般的にピルとよびます。月経痛に効果的であり、同時に避妊の働きもあります。

女性ホルモンの過剰な分泌を抑えて、排卵と子宮内膜の増殖を抑制し、月経血を少なくしてくれます。

日本ではなかなか浸透しないのですが、事実、40歳以下の産婦人科の女性医師たちは殆どが「生理ラクやわーっ」っと喜んで使っています。

低容量ピルは、女性の味方です。
黄体ホルモン
プロゲスチン(黄体ホルモン)製剤は、内膜症や腺筋症といった疾患がある人は効果的に働きます。子宮内膜の増殖を抑えてくれるので、生理がうんと軽くなります。

また、病巣に直接働いて病変を小さくしてくれる効果もあります。これも低容量ピルと同じように、内膜の増殖を抑えることによって月経血量をうんと減らしてくれます。

この製剤は、血栓症の原因となるエストロゲン成分が含有されていないので、肥満の方、高血圧の方、40歳以上の方も安心して使用できます。
GnRHアナログ製剤
GnRH製剤には、錠剤、注射、点鼻薬など色々な種類があります。主に子宮筋腫の患者さんに使われることが多いです。

GnRH製剤は、低容量ピルや黄体ホルモン製剤と違って、女性ホルモンの分泌を素早く抑えて、一時的に「閉経」の状態をつくって月経と排卵を止めます。

効果は抜群です。しかし、これは「偽閉経療法」とも言われており、副作用として更年期障害に似たホットラッシュの症状が見られる事があります。これは決まりとして、連続6ヶ月間の服用となります。
ミレーナ(子宮内器具)
ミレーナは最近はTwitterなどでも「生理がラクになった」話題でバズっていましたが、これは子宮内に装着する3cmほどの器具のことです。

ミレーナはバイエル社の製品の商品名ですが、一般には「黄体ホルモン放出子宮内システム」という名前です。

飲み薬だと成分が身体全体に行き渡りますが、ミレーナは効かせたい部分のみ、つまり子宮だけに効かせる器具です。子宮内に5年間入れっぱなしで効果的です。ミレーナを入れている間は、年1〜2回程度婦人科で様子を診てもらうくらいで良いのです。

ミレーナは、装着しておくだけで、子宮の中で持続的に黄体ホルモンが放出され、子宮に直接作用してくれます。

内膜の増殖を抑えてくれるので経血量もうんと減り、避妊効果もあり生理痛も解決してくれます。保険適応の場合は、1万円程度です。1万円で5年間効果があるのは、女性の味方ですよね。
生理は自分でコントロールする時代です
生理の辛さで、もう生活の質をこれ以上落とさないでください。生理痛はもう我慢する時代ではありません。

生理痛を我慢してやり過ごしてしまうと、将来的に内膜症が増悪したり、不妊症になったり、後々にツケを回すことにもなりかねません。

低用量ピルの正しい使用の普及は、女性の生活の質の向上のみならず、さまざまな婦人科疾患の予防にもつながります。過多月経も、改善されることが多いです。

わたしは、生理痛の放置は不妊症や日本の少子化問題にも直結していると思っています。 女性自身による月経コントロールの普及は日本の女性の未来を明るくしてくれます。
profile
全国で展開する「婦人科漫談セミナー」は100回を超えました。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期障害は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、HPVワクチンのこと、婦人科のカーテンの向こう側のこと、女性の健康にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
婦人科医

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
医療法人 大生會 さくま診療所(婦人科)
〒542-0083 大阪府大阪市中央区東心斎橋1-14-14 T・Kビル2F
TEL : 06-6241-5814
https://www.sakumaclinic.com/

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