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藤田 由布 婦人科医 レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ
生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、女性にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2021-09-30
探偵ナイトスクープに出演「ギニアワームを返して!」その②
当日まで、ほとんど何も知らされず・・・
探偵ナイトスクープのロケの日取りが決まってからロケ当日まで、本当に何も知らされず、ディレクターさんに言われるがままといった流れでした。

2021年2月7日、朝一番に現場に現れたのは、ハライチの澤部さんでした。
やっぱりたむけんじゃなかった、と一瞬落胆したのも束の間、「おはようございまーす!」と、朝一番なのに軽やかに爽やかな笑顔での来場に一気に場の空気が賑やかになりました。 澤部さんはテレビでみたまんま、とても感じの良い青年でした。

探偵ナイトスクープの依頼VTRを制作する会社は、数社あるそうです。私の依頼を担当して下さったチームは4人体制で、ディレクター、カメラマン、音声、そしてADさん。音声とADは20代前半の若い女性。

目の下にクマができたスタッフもいて、きっと夜中まで別の依頼者のVTRの編集をしていたのだろうか。私もかつてメディア制作に携わった経験があるので、制作会社の過酷な内部事情は何となく想像できました。
寄生虫学会は、面白い先生の宝庫
撮影の最中は、澤部さんの軽快で楽しいリードで和やかに進み、さすが芸人さんだなあっと感心しっぱなし。

ここで、一般人の私が邪険にはしゃいだらイタイ奴になるのは容易に想像できたので、自然体で振る舞うのが賢明だと判断。でも、こっちが大人しくしていても、プロの芸人さんは上手に一般人をさばいてくれる。絶対的な安心感。

私が15年前にギニアワームをあげた教授の先生方のリストだけ事前にお渡ししていたのですが、どの教授が現れるか全く知らされていませんでした。

私が登壇した学会会場の別部屋ではじめの数分間分の撮影が終わり、次に制作会社の簡易スタジオへ。そこには、連絡がついたとされる教授の先生方の顔写真が7枚も! 

実際にお会いした事のない先生方ばかりでしが、春木宏介先生だけ面識がありました。15年以上前に私がまだ医師を志す前から、春木先生はギニアワーム譲渡に対して丁寧に御礼状まで送ってくれて、それからたびたび書籍や冊子まで贈って下さり、交流がありました。
コロナ禍の状況下なので、7名全ての先生方とリモート撮影で繋がるようセットされていたのです。ここまで準備してくださっていたのかと思うと、たった15分くらいのVTR制作でも、ものすごい労力がかけられていると思い知らされました。

7名の先生方のチョイスも抜群で、個性豊かな先生ばかりで、楽しく撮影は進みました。ディレクターさんや構成作家さんも声を合わせて、「寄生虫学の先生って、みんなユニークで面白いなー。髪型も個性的だし」と笑。
日帰りで栃木?
撮影は順調に進み、最後は獨協医科大学の川合覚教授とのリモート撮影。

かつて私が100匹のギニアワームを譲渡した獨協医科大の松田教授の後任者で、川合教授の手元には私が譲渡したギニアワームをお持ちでいらっしゃるではありませんか。

撮影中は、カメラのすぐ斜め下でディレクターさんが、頻回にカンペを出して澤部さんに指示を出す。差し出されたカンペに書かれたものを、澤部さんは一瞬で読んで進行しているのでした。

そして川合教授との談話が終わりかけたその時、ふと私の目の前に飛び込んできたカンペの文字には、「では、今から栃木へギニアワームをもらいに行きます」と。私、明日は普通に仕事の日。今、午後の2時すぎ。今日中に大阪と栃木の往復は可能なのか?

すると、ADの若い女性が「日帰り大丈夫ですよー。いつも、こんな感じですー。」っと軽やかに言うではありませんか。いつも、こんな強行突破で番組を作っているのか。。。
移動中は、ずっとジロジロみられる芸能人
西梅田のスタジオから、ロケバスで新大阪まで移動。番組制作の荷物は巨大で多い。華奢な女性が、自分より大きな荷物をわっせわっせと運ぶ。ロケバスの中でも、澤部さんもディレクターさんも色々話かけてくれて和んだ。

これはよく聞かれる質問ですが、「医者になるなんて、幼少時からよっぽど勉強が出来たんでしょう?」と。これは本当によく聞かれるが、まさか澤部さんからも聞かれるとは。「私は、特に秀才でも神童でもなく、中の中レベル、ちょっと人より根性があっただけかも」といつも答えるようにしている。

こんな雑談で和ませてくれる芸人さんに感謝しつつ、新大阪に着いた時点ですでに3時を過ぎていました。本当にこれから栃木県まで行って帰って今日中に大阪に戻ってこれるのか・・・でも、どうみても不安な面持ちなのは私だけのようだ。

澤部さんと一緒に新幹線に乗る前に新大阪駅で駅弁を買い、駅構内を歩く。その間、やはり芸能人の見られ方はすごかったのです。

通り過ぎる人がみんな振り返り、「あー澤部だー」とか「握手してくださーい」とか、「写真一緒に撮ってくださーい」とずっと声かけられるのである。動いている間、ずっとジロジロとみられるのである。

芸能人って大変だろうなあ・・・
みんな涼しい顔、焦っているのは私だけ
東京駅に着いたら、別のロケバスが駅前に待機しており、探偵ナイトスクープのスタッフご一行と澤部さんと私はロケバスに乗り込み、そのまま宇都宮へ向かいました。

この時点で夕方6時過ぎ。宇都宮まで1時間以上はかかる。時間との勝負でしたが、私以外はみんな涼しい顔して、いつものことのようである。

ちゃんと大阪に今日中に戻るためには、最終の21時過ぎまでには必ず大阪行きの新幹線に乗り込まなくてはならない。本当に間に合うのだろうか?
その前に、私は今から栃木県のどこに連れて行かれるかも教えられていない・・・。 最初からずっと何も教えられず撮影が進んできたのです。ここまできたら、この先なにが待っているのかをディレクターにもう聞ける雰囲気ではない。

大きい荷物とぎゅうぎゅう詰まったロケバスに揺られて1時間半、クタクタになりながらも、「時間がないから車中でも撮影しよう」ということになり、眩しいライトが車中を照らす。ここはプロ芸人の澤部さんのスイッチの入り方は流石だった。

移動疲れで乾いた顔した私とは違い、カメラを向けられた芸人のテンションの昂り方は、ものの瞬時であった。大きな声で笑い、一般人の私と上手に掛け合ってくれる。
やっと帰ってきたギニアワーム
真っ暗になった7時半頃に宇都宮の住宅街で停車。ここどこ?と思っているのは私だけで、スタッフらは段取り良く、荷物を運びこんでセッティングしている。

そこで分かったのは、かの私が譲渡したギニアワームを持っている教授のご自宅ということ。コロナ禍対策で部外者は医学部敷地内には入れないとのことで、教授がわざわざ大学から標本を持ち帰ってくれて、ご自宅で待機して下さっていたのです。

川合教授の大きなご自宅のリビングにお邪魔すると、奥様とお嬢様もいらっしゃり、軽く挨拶するやいなやすぐに大掛かりに撮影が始まる。

ディレクターが、「ここでは30分くらいしか時間がとれない・・・大阪戻るためには」

川合教授のご自宅のリビングのこたつで楽しく撮影が終わり、無事にギニアワームを1匹もらう事ができ、メデタシメデタシ….

いやいや、ちょっと待って、15年前に私は100匹もあげたのに、目の前には5匹くらいしかいないのはどういうことなんだろうか。

どうやら、私が松田肇教授にギニアワームを100匹譲渡した際に、松田教授は周囲に大半のギニアワームを譲って配ったそうなのです。

5年ほど前に松田教授はお亡くなりになられていたので、今となっては、どこの誰に譲渡したのかは詳細不明とのこと。

川合教授の手元に標本を引き継いだ際にすでに5匹程度だったとのこと。今回は、その中から1匹、私の手元に帰ってきた、ということである。
松本探偵局長が「澤部!瓶開けて全部飲み込まないと!」
しかし、気になるが、残り95匹。

VTRあけに松本人志局長もが「これを見た関係者が心当たりあったら、あと数匹戻ってくるかもしれないよねー!」と。また、澤部さんに向かって「教授が瓶を開けた時に、奪い取って中身全部飲み込まないと!」と。

私としては、松本人志にギニアワームを知ってもらえた事が、ただただ嬉しかった… 私は生粋のダウンタウン世代、中学生時代に『4時ですよ〜だ』を見て育った松本人志大好き世代なのである。

大事なギニアワーム標本があちこちで活躍してくれれば私はそれでヨシ。博物館で展示されたり、学生向けの標本として活用して下さっていれば、それでヨシなのである。

目黒寄生虫館にも私のギニアワーム標本が保管されています
けれども、もし埃かぶって標本室の奥の棚に眠っている状態なら、私のところに戻ってきて欲しい・・・・

「返して!」と言うとSNSで書き込みする匿名の民から、「一度あげたものを返せって何事だ!」と、なじられそうである(笑)。実際にプチ炎上していたのだから、私みたいな一般人でもSNSで炎上するのだと驚いたものでした。
今では、ギニアワーム1匹100万円の価値
ギニアワーム1匹100万円説は、私が勝手にそう言ってるだけです。

珍しい標本価格の相場を私は知りませんし、ギニアワームが一体いくらの価値なのかもわからないです。ただ、すごく貴重というのだけは正しい。あと数年以内にこの地球上から消滅する種(Species)なのです。

昭和の人間は、高価すぎて価値が付けれないものを「100万円」と言ってしまう。だから、ギニアワームも100万円だろうとしたのは、ただの貧乏育ちのわたしの貴重価値への表現です。

ネットで、「あの女医は100万円と分かった途端に、あげたものだが返せ!と言ったんだろうよ」と書き込みされたそうですが、そもそも何円するかは誰も知らない、というのが事実なのです。

ただ、私は、ネットの書き込みや、大量のクレームがきたり、ことが大きくなればなるほど尚更オイシイと思っていました。注目される方が、多くの人に知れ渡り、この古代から人々を苦しめてきた寄生虫が撲滅されるという人類の偉業がより周知されるからです。
探偵手帳は、我が家の家宝です… 笑
探偵ナイトスクープの依頼者になることで、10年ほどアフリカで寄生虫を追っかけてたことが自分の患者さん達にバレてしまった。いや、しかし、これで胸を張って凄い仕事をしていたと、やっと言えるような気がする。

変な医者だ、逸脱した経歴だ、歳をくっている、と今でも後ろ指さされ、医師として異質であるがゆえに不当な扱いを受けることも多々あります。

日本とは、いまだにそのような異質なものを排除しようとする社会が蔓延しているのも事実。しかし、探偵ナイトスクープのおかげで私の人生は唯一無ニの愛おしい雑草人生だと胸を張れるようになった気がするのです。

費用200円の手作りフェイスシールドを自慢しているポーズ
数年以内にこのギニアワーム寄生虫がこの世からなくなるわけですが、疫病撲滅とは最強のサステナビリティーであり、人類が成し遂げた最高の偉業なのです。私はこの快挙に長年携わることができた事実に感無量です。

20年前にニジェールの奥地の村々で活動していた頃
私が日本の病院に勤務しながらも、時折思い出す言葉があります。
『ひとの夢は単純で純粋なほうがいい。思い込みが強ければ強いほど、ひとを動かす力も強い。

どんな人生にも何らかの「縛り」や「制限」があるけど、むしろこの制限の中で学ぶ事が多い。

回り道をすることで、違った世界を見て、人一倍痛みを感じ、人生に楽しみやゆとりが増えることのである。』
この重くて優しい言葉を肩に背負いながら、医師という仕事を固定観念にこだわることなく、自分らしく全うしようと思います。
profile
全国で展開する「婦人科漫談セミナー」は100回を超えました。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期障害は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、HPVワクチンのこと、婦人科のカーテンの向こう側のこと、女性の健康にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
婦人科医

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
レディース&ARTクリニック サンタクルス ザ ウメダ 副院長
〒530-0013 大阪府大阪市北区茶屋町8-26 NU茶屋町プラス3F
TEL:06-6374-1188(代表)
https://umeda.santacruz.or.jp/

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