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バックスター ルミ バイリンガルライフコーチ RumiBaxter 私たちが「生きる」中で、たくさんの選択をしています。 その選択は、意識したものから無意識に選んでいるもの、とるに足らない小さな選択から人生の岐路に立たされた大きな選択まで、その種類も様々。「丁寧に生きる選択」というライフスタイルは、未来へのキーワードでもあります。 |
幽玄 |
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10月も半ばですね。先日、後10週間余りで2021年が終わると気づいてびっくりしました。ここ大阪北部では日中はまだ夏のように暑い日もあり、秋という季節が年々短くなるようです。
秋という季節に自然の風情を重ねる方は多いでしょう。先日、夕暮れどきから夜にかけての幻想的な雰囲気の中、城跡という野外の舞台で自然の風情を背景に演じられた能楽にふれることができました。 能楽に対しての経験も知識も全くない状況で、少しばかりの一夜漬けに近い「予習」を頼りに、それでもユネスコの無形文化遺産の一つに登録されている日本の伝統文化、能楽の舞台を初めて観ることができとても嬉しく思っています。 能面と色鮮やかな能装束、踊り、舞、和楽器の音色、どれをとってもわたしにとっては初体験でした。 能学、特に「夢幻能」の世界を知りたいと思ったきっかけは、それが「幽玄」という芸術領域の世界の中で、霊と生きる者とが観客に向かって語りかける演劇だときいたからです。 そもそも、幽玄という言葉自体、その感覚とはどういったものなのだろうかと思いました。 「幽玄」とは言葉には表れない、目には見えない、しかし心の奥で感じる、はかりしれないおもむきであり美意識だとあります。そこにあるのは深い余韻の美だということも知りました。 禅の世界ににつながるとも言える、「余韻の美意識」とは全ての芸術と呼ばれるものに当てはまる概念ではないでしょうか。 鑑賞した後、聴いた後、想像力をいっぱいにかき立てられ、「力強い何か」がそこに残る、そういった余韻の美には言葉を超える芸術性があり、「そこ」に確実に存在するように思います。 言葉には表れない、表れ尽くせない幽玄の美意識を今このように言葉で書くのも滑稽な話でしょうが、あえて書くならば、目に見えないエネルギーが残す余韻の美を感じるためには何より想像力が必要だと思います。 能面は少しの角度の違いで、目元に陰影を作り出し、その陰影は感情を哀しみから喜びへ、そして喜びから哀しみへと変えます。頭の角度、手足胴体の動きから作り出される角度で感情が表現されているのです。観客は想像力を使いながら舞台の上で演じられる感情の流れを読み取っていくようです。 当日の「作り物」と呼ばれる舞台装置は、竹とススキで作った枠組だけで、そこから井戸を想像させます。そのススキが自然の風になびき、秋の暗闇の中、虫の声が鳴り、和楽器の調べと調和され、能の舞台には神がいると言われていることがわかるような気がしました。 真夏のような晴天だった昼間にもかかわらず、舞台の始まる前に突然降った冷たい大雨ですらまるで舞台効果の一つとしての浄化の雨のようでした。 能学はわたしにとっては難しい古語で演じられるのですが、仕組みはシンプルなようです。 「シテ」と呼ばれる主人公は「霊」で、面をかぶっています。その霊と出会う人間は「ワキ」と呼ばれます。 主人公のシテの存在はワキの存在によって存在が観客に知らしめられるところも非常に興味深いと思いました。ワキは、脇であり、観客にシテの存在を「わからせる」役なのです。 二つの対比する生と死の登場人物が混じり合い、舞台の中で必要な「間」を作り出します。間は無ではなく、必要な時間の間であり、空間の間であり、消えることのないエネルギーの余韻を伝えます。 その場にいる霊のシテに会うために旅してきたワキは舞台で出会い、観客の前で融合され、間と共に観客に幽玄の美を伝え、そしてどこともなく消えていく。現実か幻か、といった具合にです。 あの大雨に打たれた寒い夜の幽玄の世界、あれはなんだったのだろう。現実を超えたような一晩の能楽は明確な答えを出すことさえせずに経験として余韻を残したことは確かです。 この600年以上続いている幽玄の無形文化遺産をもっと知りたいと思った早秋の一夜でした。 |
![]() バックスター ルミ
バイリンガルライフコーチ 心理カウンセラーのバックグラウンドをいかし、英会話講師として「コミニケーションレッスン」を展開中。 半生を英国、ヨーロッパのライフスタイルに関わってきたことから、それらの経験をもとに独自のレッスンを提供している。「五感+plus」を使ってコミュニケーション能力を磨くレッスンは、本格的英国サロンで行われている。 RumiBaxter BROG:http://ameblo.jp/rumi-b/ |
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