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藤田 由布 婦人科医 医療法人 大生會 さくま診療所(婦人科)
生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、女性にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
婦人科医が言いたいこと 医療・ヘルシーライフ 2020-11-26
プラセンタって一体なに?!
「更年期障害に効く!」「美容にも効果的面!」と、あの有名な「プラセンタ」ですが、「プラセンタ」とは英語で「胎盤」のことなのです。

そう、赤ちゃんとお母さんをつなぐ円盤状の栄養を運ぶ、あの臓器のことです。

胎盤は約700gでひと回り大きく分厚いホットケーキのようなものですが、それが10ヶ月に渡って、ひとつの受精卵を3000gほどの人間の赤ちゃんに育てあげるわけなので、きっと栄養の塊なのは間違いなさそうですよね。

胎盤の生理作用は、胎児の細胞を増殖させ、胎児の生命維持や恒常性の維持のために「酸素」「電解質」「水分」「栄養素」を運びます。胎児を一個体に成長させるために、細胞を増殖させ、ホルモンを分泌して、しっかり妊娠を維持させるのです。

胎盤は、もう、摩訶不思議な臓器でしかないのです。

この胎盤から抽出されたエキスが、どうやら美容と健康に効果があるとして、美容クリニックや皮膚科や婦人科で広く使われています。
何故効果があるのかは、実は未解明!?
結論からいうと、プラセンタエキスがなぜ効果があるのかという細かい作用機序は、実は解明されていないのです。
とはいえ、プラセンタ療法の効果に関しては多くの研究成果もあり、実際にプラセンタ療法を利用した70%ほどの人が「効果あった!」というので、どうやら本当に効いているのでしょう。

それもそのはず、プラセンタは厚労省が認可する治療薬。同時に、美容やアンチエイジングにも効果があるとされています。

他にも、アトピーや気管支喘息などのアレルギー疾患、リウマチなどの自己免疫疾患、肝臓疾患、うつ病や不眠症などといった精神・神経の病気、そして更年期障害やお乳が出なくなる婦人科系の疾患などにも効果があるとされています。

効果は、ありとあらゆる分野で幅広いですよね。
胎盤は栄養の宝庫
人間以外の哺乳類はみんな、お産後に娩出した胎盤を本能的に自分で食べてしまいます。これは、胎盤がとても栄養豊富なので、母体の体力回復させるためだといわれています。胎盤を食べて栄養摂取すること以外にも、母乳を出す効果もあるとされています。

胎盤に繋がっている「へその緒」も、昔は薬として重宝されていました。子供が病気をした時に、へその緒を煎じて飲ませていた時代もあったのです。
クレオパトラの美貌はプラセンタのお陰?!
実は、このプラセンタ療法、医薬品としての歴史はかなり古いのです。
プラセンタは、紀元前400年の「医学の父」と呼ばれたヒポクラテスの時代にも医薬品として使われておりました。また、いつの時代でも若さと美貌は永遠のテーマであり、古代エジプトの女王クレオパトラも美容目的でプラセンタを使っていたそうでうす。
胎盤が漢方薬として初めて登場するのも、紀元前10世紀の頃です。のちに、中国の代表的な薬物書「本草項目」(1596年)に、「紫河車」という名前で胎盤の薬効が記されています。

プラセンタ療法を紐解くと、その歴史はかなり古く奥深い神秘的な医薬品ですね。
「メルスモン」と「ラエンネック」、何が違うの?
日本では、1956年にプラセンタ注射薬として「メルスモン」が販売され、同じ注射薬として1959年に「ラエンネック」が登場しました。どちらも胎盤抽出物エキスのプラセンタです。

自律神経のバランスを整え、ホルモンまで調整してくれて、免疫力アップ、肝機能を改善してくれるプラセンタ注射。日本では2つの会社「メルスモン」と「ラエンネック」だけが認可されています。

更年期障害と乳汁分泌不全に保険適応があるのは「メルスモン」。「肝機能障害」に保険適応があるのは「ラエンネック」。
さて、この2つ、同じプラセンタエキスといえども、何がどう違うの?

メルスモン社のプラセンタは胎盤の中でも絨毛部分のみを使用しています。「ラエンネック」社のプラセンタは臍帯も絨毛もごちゃまぜに混ざっています。どちらにもアミノ酸は豊富に含有されていますが、タンパク質は含まれていません。

添付文書通りで通常は、1日1回2mlを皮下注射します。毎日または隔日が最も効果があります。

サプリメントとして販売されているのは、豚や馬由来のプラセンタです。つまり、豚や馬のものは注射としては使われておらず、食品(サプリメント)としてだけ販売されているのです。
プラセンタ療法は保険適応
更年期障害の治療としてプラセンタ注射を使う場合は、確定診断をされれば保険適応となります。保険適応となれば、1回500円程度の負担ですので、敷居はうんと低くなりますよね。

更年期障害に保険適応なのは「メルスモン」の方です。1956年に厚労省により注射薬として承認されました。

保険適応として注射するのは、条件があります。これは当然でして、病気の治療としての接種なのできちんと継続的に施行するのが大前提となるからです。
更年期障害として保険適応となるには、1ヶ月に最低4回は注射接種すること、マックス14回/月までです。1回2mlの皮下注射です。静脈注射はNGです。年齢は45歳以上、59歳までの更年期障害を訴える女性が対象です。

メルスモン注射は、厚生労働省認可薬として、更年期障害と乳汁分泌不全に保健適応となっています。これらは原則、皮下注射です。点滴ではありません。

私の診察室では、更年期障害で利用される方が殆どです。母乳が出ない、という患者さんにプラセンタ注射を打ったことは今までないですが、実際に効果があった症例はたくさん報告されています。

更年期症状で改善した例として実際にあったのは、「やる気が全く出なかったけど、気持ちが元気になった」、「初めは効いているかどうか全然わからなかったけど、7、8回目ぐらいで疲れにくくなった」、「抜け毛が減った」、「寝つきが良くなった」という声は実際に聞きました。
プラセンタは、しわ・たるみに良いらしい…
肌がなめらか、荒れている、潤っている、などの状態は表皮の角質層のことを言います。

ほとんどのスキンケアの効果は角質層レベルまでだそうです。

角質層では水分保持や蒸発を防ぐというとても重要な役割があります。

ところが、このプラセンタは真皮レベルまで到達することが出来るようです。プラセンタが真皮にあるコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸の量を増やしたり、新旧の細胞の交換を施し、肌の柔軟性や弾力を取り戻します。

また、有効成分の含有量が多ければ多いほど効果が期待できると言えるでしょう。
プラセンタは代謝アップに絶大効果?!
シミの大敵であるメラニン色素は、皮膚の最も奥にある基底層で作られます。

メラニン色素はあえずに作り出される一方、絶えず表皮まで押し上げられては、繰り返し剥がれ落ち、一定のバランスを保っています。これをターンオーバーといい、28日サイクルで繰り返されています。

もしこのバランスが乱れると、メラニン色素が表皮に居座ってしまいシミになるのです。

プラセンタはお肌の新陳代謝を高める作用があり、表皮の奥の基底層に居座る細胞の分裂を活発にさせ、古くなった細胞を排出してくれるのです。このことから、プラセンタは化粧品にも使われているのです。
プラセンタの主な薬理作用
プラセンタを注射すると献血は出来なくなります
プラセンタ注射によって、牛海綿状脳症(BSE) & 変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)などの重大な感染症報告はこれまでありません。

とはいえ、これはヒトの胎盤を使った抽出物エキスです。理論的な感染症の伝搬の危険性を完全に否定できるわけではないのです。

このため、平成18年からの決まりとして、プラセンタ注射を受けた人は献血を控えてもらっています。

ただし、臓器提供の場合、特定の移植希望者が提供を受ける意思がはっきりしていれば提供可能です。
プラセンタを打つと、青アザができる?!
保険適応のプラセンタ注射は、1回2ml(1アンプル)を皮下注射するのですが、これはまぁまぁ多い量です。

インフルエンザワクチンが0.5mlなので、2mlの量の注射が多いことが分かると思います。

プラセンタ注射は添付文書では決して静脈注射をしてはいけません。あらゆる美容クリニックでは普通に点滴注射として使われていますが、実は添付文書とは違う使用法となってしまっています(実は)。

2mlの量を皮下注射するので、ゆっくり注射しないと痛いです。そして、2回に1回は内出血の痕(紫斑=青タン)ができるのも普通です。

プラセンタ注射は、エキスを皮下にぷっくり埋没させてジワジワと体内吸収させて効果を発揮させるためなので、青あざができても、「まぁ、そんなもの」と思っておいてくださるのがいいです。

更年期障害を訴える7割以上の患者さんが、まずまず効果あると実感しているわけなのですが、「効果がまったく感じない」という方も勿論いらっしゃいます。そういった方々には、他にホルモン補充療法や漢方や食事や運動療法などといったオルタナティブな治療もあります。

日常生活に支障を感じたら病院を受診しましょう。症状の感じ方も人それぞれです。 更年期障害には症状の尺度がありませんので、患者さんがつらいなと思った時点で我慢ばかりせずに、ぜひ医師へ相談してくださいね。
profile
全国で展開する「婦人科漫談セミナー」は100回を超えました。生理痛は我慢しないでほしいこと、更年期障害は保険適応でいろんな安価な治療が存在すること、婦人科がん検診のこと、HPVワクチンのこと、婦人科のカーテンの向こう側のこと、女性の健康にとって大事なこと&役に立つことを中心にお伝えします。
藤田 由布
婦人科医

大学でメディア制作を学び、青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任。1997年からギニアワームという寄生虫感染症の活動でアフリカ未開の奥地などで約10年間活動。猿を肩に乗せて馬で通勤し、猿とはハウサ語で会話し、一夫多妻制のアフリカの文化で青春時代を過ごした。

飼っていた愛犬が狂犬病にかかり、仲良かったはずの飼っていた猿に最後はガブっと噛まれるフィナーレで日本に帰国し、アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、37歳でようやくヨーロッパで医師となり、日本でも医師免許を取得し、ようやく日本定住。日本人で一番ハウサ語を操ることができますが、日本でハウサ語が役に立ったことはまだ一度もない。

女性が安心してかかれる婦人科を常に意識して女性の健康を守りたい、単純に本気で強く思っています。

⇒藤田由布さんのインタビュー記事はこちら
FB:https://www.facebook.com/fujitayu
医療法人 大生會 さくま診療所(婦人科)
〒542-0083 大阪府大阪市中央区東心斎橋1-14-14 T・Kビル2F
TEL : 06-6241-5814
https://www.sakumaclinic.com/

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