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小森 利絵 フリーライター えんを描く
レターセットや絵葉書、季節の切手を見つけるたび、「誰に書こうかな?」「あの人は元気にしているかな?」などアレコレ想像してはトキメク…自称・お手紙オトメです。「お手紙がある暮らし」について書き綴ります。
おてがみじかん ライフスタイル 2019-11-22
いろイロな表現「年賀状」編
思い思いに書いたお手紙には「その人らしさ」が表れるものだと思います。

どんな想いを込めるのか? どんな便せんや葉書に書くのか? どんな内容を書くのか? どんな方法で表現するのか? など、人それぞれ。さまざまな人の、いろイロな表現を見てみたいと思いました。

今回のテーマは「年賀状」です。

雑貨店や書店に行くと、年賀ハガキや年賀状用のテンプレート集などを見かける季節になりました。「年賀状を書かない」という人も増えてきていますが、今年は年賀状を書きますか? 私は今年も書きます。

私にとって年賀状を書く時間は、過ぎ去る毎日の中でふと立ち止まるきっかけをくれます。

この1年に出会った人のことを思い出したり、いただいた年賀状を読み返しながら一人ひとりの顔を思い浮かべたり。長いおつきあいの方であれば、出会った日までさかのぼって思い出して、こうして今もつながっていることを嬉しく思います。

また、届いた年賀状を見るのも、お正月の楽しみの1つです。

近況をコミカルに文章で書き綴ったもの、この1年間で撮影した写真をちりばめたもの。市販されているものやテンプレートを使ったものが多いですが、不思議なくらい、絵柄などが被らないからおもしろいですね。どの絵柄を選ぶかというところにも、その人らしさが表れるんだと思いました。

私がこれまでに受け取った中で、「あの方と言えば、あの年賀状」とすぐに思い出せるくらい、特に印象に残っていて、「みなさんが年賀状をつくる時のアイデアのもとになるのでは!」と思った年賀状を紹介します。

<みさえさんより>
マスキングテープでかわいらしく飾りつけ
「シール=イメージ」を表し、メッセージがより響いてくる
マスキングテープやシールでかわいらしくデコレーションされたはがきに、私に向けた温かいメッセージが書き綴られています。

「一人ひとりの顔を思い浮かべて、1枚1枚手づくりをして、メッセージを書き綴っているのだろうなあ」「みさえさんらしいなあ」と拝見しながら、みさえさんの顔が思い浮かびます。読んでいると、まるで目の前でしゃべりかけてくれているような気もしてくるんです。

私はついつい「○○さんにとって素敵な一年になりますように」など決まり文句を多用しがちですが、みさえさんは使い古されていない、ご自身の実感のこもった幸せを願うメッセージを書き綴ってくれています。
そのメッセージのそばには、そのメッセージの意味をより印象づけるシールが添えられているんです。

「いろんなわくわくの扉をひらいて、虹よりいっぱいの幸せの色で、日々を彩りながら、こもちゃんらしく歩いて下さいね」というメッセージには、「扉を開く鍵」と「虹みたいなさまざまな色のストライプ」。

「こもちゃんfamilyの毎日に、あたたかくてキラキラの希望のヒカリが灯る幸せでステキな1年になりますように」というメッセージには、「やさしい火を灯す、ろうそく」。

「こもちゃんfamilyが幸せと笑顔で溢れた毎日を心穏やかに健康で過ごせますように」というメッセージには、「きれいなお花、元気なお花が装飾された、鏡にも見える額縁(それを見て、その鏡に私の家族がうつっているのを想像しました)」。

心のこもったメッセージそのものはもちろん、シールという視覚的なものからも、メッセージに込められた想いやイメージが広がって、ぽぉぅっと温かい気持ちになるんです。

みさえさんに年賀状について聞いてみると・・・

『時間の流れとともに、出会った頃からみんな、生活環境も変わってきて、なかなか会えなかったり、お話しできなかったりするけれど、大切なご縁でつながった人だから、変わらずやり取り出来る年賀状。

その人のことを想いながら過ごす、あったかい時間になると思っていて、会話をしているような気持ちで、1枚1枚手書きにしています。絵心がないので、干支のイラストはどこにもないけれど(笑)』


とのことでした。

<ゆかさんより>
はんこの組み合わせや押し方など
アイデアや工夫次第で楽しい一枚に
消しゴムはんこ作家の、ゆかさん。イノシシの何とも言えない表情、文字のゆるゆる感など、ゆかさんがつくるユニークで、味わい深い、消しゴムはんこがたまりません。

また、消しゴムはんこの組み合わせや押し方、色使いなどによって、こんなにも素敵な一枚に仕上がるのだと思いました。

2019年イノシシ年の年賀状は「明けましておめでとうございます」と「イノシシ」の2つのはんこで成り立っていますが、温かみもあり、おしゃれでもあります。2017年トリ年の年賀状は「あけましておめでとうございます」の部分に立体感の出るインクが使われていて、そのぷっくり具合に思わず触りたくなりました。

こちらの2枚はベースがほぼ同じです。
同じなのに、背景や干支のはんこが異なるだけで、まったく違うように見えませんか? アイデアとセンスでこんなにも違ってくるのだなあと思いました。

ゆかさんに年賀状について聞いてみると・・・

『年末ギリギリにつくり始めるので、はんこの使い回しもあり…ただ、干支ハンコは毎年彫らないとね。「子どもの落書きふう」でシリーズ化しています。

印刷ではなく、毎年60枚ほどすべて手捺しなので、それだけで手一杯で「一言」を添えずに送っていたら、「何か一言を添えて!」って友だちからクレームが(笑) 。それ以来、いただいた年賀状を見ながら、「お返事」を書くようにしています』


とのことでした。

<まきさんより>
1月3日をだいぶ過ぎてから届く、年賀状
「表現はもっと自由でいい」と教えてくれる
まきさんからの年賀状は、お正月には届きません。いつもお正月を過ぎてから届きます。1月10日に届いたものもありました。というのも、お正月の出来事を書き綴ってくれているからです。ほかにはない視点で、おもしろいなあと思います。

上の写真の年賀状は、A4サイズの紙に描かれたものです。まきさんちのお正月のテーブルが再現されています。赤いテーブルクロスを敷いて、その上にお花を飾って、おせちを並べるとのこと。

お正月の様子や今年の目標、初詣のこと、くすっと笑ってしまいそうな一言といったメッセージが、まるでおせち料理みたいに並んでいて、読んでいてとても楽しいです。

こちらは年賀はがきで届きました。
「お正月中継」と題して、正月三が日にどんなおもちメニューを食べたのかが書き綴られており、レシピまで! 一緒におもちメニューを堪能した気分になってしまいました。

まきさんからの年賀状を見ていると、年賀状といっても型が決まっているわけではないから、「もっと自由でいいんだ」ということを感じます。

まきさんに年賀状について聞いてみると・・・

『人様の家族写真はまあまあ楽しみにしてはいるものの、自分の場合はネタがないというか、「どこで撮るのか」「なんでわざわざ撮るのか」を考えると苦痛でして。我が家は全員写真を撮られるのが嫌いなんです。

私、ある時に気がついたのです。たいていは、昨年に届いた年賀状を見ながら書きますよね。イメージのタイムラグが1年近くあります。

ですから、いただいた方にだけ、お正月に届いた今年の年賀状を見ながら書くんです。ほぼ「年賀状を書くのをやめている」と言ってもよい受け身な年賀状ですが、年も開けないうちに「今年もよろしく」という違和感とタイムラグはないのです。一応「松の内」ぐらいを目標に出しています(笑)。

その代わり、紅白を見てから年が明けて0時をまわったら、毎年即フェイスブックには同じ構図で赤いクロスの食卓の花と「January 1」の積み木みたいなカレンダーで「皆様明けましておめでとうございます」と投稿しています。

ですから、印刷され、今年もよろしくの年賀状には、印刷してある年賀状に同じような感じで返信してしまいます。手書きには手書きしています。凝った賀状には、それなりに凝った賀状をお返ししています。呼応的なのです』


とのことでした。

<おまけ/私の場合>
1年を振り返って想ったことを
コラムとして書き綴り、読み物風に
以前は干支と娘の写真を絡めたイメージと、その年に感じたり思ったり考えたりしたことを一文に凝縮したメッセージを書いた年賀状をつくっていたのですが、ライターとして「表現すること」「伝えること」を仕事にしているので、メッセージ性のある年賀状にしたいと考え、コラムを書くようにしました。オレンジの部分には近況を書いています。

一人ひとりに向けてのメッセージは、宛名面の半分のスペースを使って書き綴ります。年賀状は、この1年の感謝や想いを伝えられる機会であり、年に一度年賀状だけでやりとりしている人もいるので、2人の間だからこそのメッセージもちゃんと書きたいからです。

あまりにも会わなさすぎて、共通の話題が思い浮かばず、メッセージに思い悩むこともあります。その方に対しても、一言ではなく、できれば二言三言も書きたいと思うので、「出会いは?」「最後に会ったのは?」など思い出して、そのことを書いたりします。

そんなふうにメッセージを考えるのに時間がかかるので、以前は年内投函を目標に頑張っていましたが、この数年は年越しも書きながら迎え、お正月もゆるゆると書き綴るというのが恒例になっています。
この記事を書きながら、これまでにいただいた年賀状を振り返る中で、添えられている一言から「そういえば、この時はこうだったなあ」「そうだ、数年ぶりに再会したんだ」「この人とはこの年で年賀状が終わってしまったけれど、元気にしているかな?」など思い出せることがあって、年賀状はまるでお手紙という形のアルバムみたいだなあと思いました。

今回ご紹介したみさえさん、ゆかさん、まきさんの年賀状。いずれも印刷されたものではなく、1枚1枚手書きされた年賀状でした。意図して手書きのものを選んだわけではなく、ぱっと思い浮かんだのが、その3枚だったんです。

「その人らしさ」が表現されていますし、「私に向けて書いてくれている」というのがひしひしと伝わってきましたし、この1枚を書いている時の相手の姿も思い浮かんだからかもしれません。

今年はどんな年賀状にしようかな? 「もうすぐ年末」と気持ちは焦りつつ、「こうしようかな」「ああしようかな」と考える時間もまた、楽しいものです。
profile
レターセットや絵葉書、季節の切手を見つけるたび、「誰に書こうかな?」「あの人は元気にしているかな?」などアレコレ想像してはトキメク…自称・お手紙オトメです。「お手紙がある暮らし」について書き綴ります。
小森 利絵
フリーライター
お手紙イベント『おてがみぃと』主宰
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP:『えんを描く』
 
『おてがみぃと』
『関西ウーマン』とのコラボ企画で、一緒にお手紙を書く会『おてがみぃと』を2ヵ月に1度開催しています。開催告知は『関西ウーマン』をはじめ、Facebookページで行なっています。『おてがみぃと』FBページ

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