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Little Man by Antoine Guilloppe

美しい切り絵で描くニューヨーク

Little Man
by Antoine Guilloppe
今回ご紹介するのは、アントワーヌ・ギヨペの美しい切り絵の絵本 “Little Man” です。

日本では、彼の一作目の切り絵絵本『月夜の森で』が出版されていて、ご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

自然と動物をテーマとしていたギヨペですが、本作では都会のニューヨークが舞台です。

レーザーカットによる繊細な切り絵の美しさに圧倒されます。

ページをめくって最初に現れるのは、主人公の男の子 Cassius が金網ごしに夕暮れのマンハッタンを眺めるシーン。

金網が切り絵になっていて、景色が向こうに見えます。

こんな細かな切り絵が絵本にできるなんて、技術はどんどん進化しているんですね。


Cassius は戦争のために祖国を離れ、移民としてアメリカにやってきました。

ブルックリン橋を渡ってマンハッタンに行くことを夢見ています。

夢の中で、誰も止められないくらい速く走って、摩天楼の中にたどり着きます。

巨大なビル群の中でとても小さく見える Cassius。


切り絵で表現された自由の女神、マンハッタンの風景、ブルックリン橋などがびっくりするほど美しくて見惚れます。

色数が抑えられていて、赤や緑がとても効果的に使われています。

ページをめくると前のページと重なることも計算されていて、裏表の両方でお話が展開していくのもすごい。


Cassius は、戦争の恐怖から逃れてこの町にたどり着き、やっと安心することができました。

彼はもうニューヨークを愛しています。

彼の中にこの町があって、彼を暖め元気づけています。

それが表紙のシーンなのですが、詩的ですよね。


ニューヨークは歴史的に抑圧や戦争から逃れてきた人々を多く受け入れてきており、この絵本はそのことへの賛辞でもありました。

“Little Man” はタイトルは英語ですが、中身はフランス語です。

文章は1ページに一文程度ですので、自動翻訳でも十分楽しむことができました。

日本語に訳されているものは一冊のみですが、他にも美しい切り絵絵本が出版されています。

ページはかなり厚めの紙で、繊細ですが、それなりに丈夫そう。プレゼントにもお勧めです。
Little Man
by Antoine Guilloppe
Publisher: Gautier Languereau
profile
谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
HP:http://www.storyplace.jp
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