HOME  Review一覧 前のページへ戻る

Lizzy and the Cloud by The Fan Brothers

大好きな気持ちが伝わってくる

Lizzy and the Cloud
by The Fan Brothers
公園に散歩に出掛けた Lizzyは、雲売りのおじさんから雲を買おうと、まっすぐに駆け寄ります。前から欲しくて、やっと許してもらえたのでしょうか。

雲売りは、風船売りみたいに、いろんな雲を売っています。オウム、うさぎ、ゾウなどの形をした雲は、風にゆらゆらゆれて上下します。ふわふわのものもあれば、ほとんど消えそうなものも。

雲が雨を降らすので、快晴の中、おじさんだけがレインコート姿。周囲にはうっすら虹もかかっています。

雲売りは時代遅れで、人気がありませんが、Lizzyにとっては魅力的。小さなふつうの雲を手に入れました。

Lizzyは、雲に Milo と名前をつけました。雲には、マニュアルがついていて、1番目には名前をつけることとあります。

Lizzyは、マニュアルのとおりに、毎日雲に水をやり、丁寧に世話をしました。

イラストは、鉛筆で柔らかく細かく描かれたイラストに、デジタルで彩色されています。グレーが基調ですが、フルカラーで描かれた公園のページもあれば、うっすらと一部だけ彩色されたページもあり、表情豊かです。

後半の夕焼けのシーンも、町全体がセピア色になって、とても美しい。
表紙は、目を惹くイラストですが、カバーを外すと、冬バージョンの Lizzyが現れます。凝っていますね。

さて、季節が移り変わり、Milo はどんんどん大きくなって、ついに部屋の天井いっぱいになり、手に負えなくなってしまいます。

雲との会話のシーンはありませんが、Lizzyの Miloが大好きな気持ちが伝わってきます。Lizzyは、忘れていたマニュアルの最後の項目を思い出し、決心をするのでした。

The Fan Brothers は、Terry Fan と Eric Fan の兄弟のコラボレーションです。台湾からの移民の2世で、アメリカ生まれのカナダ人。 別の絵本では、弟の Devinも加わったり、妹の Larissaも絵本を出版するなど、才能あふれる家族です。

1枚のイラストからインスピレーションをえて、ストーリーを作ることが多く、この絵本は、昔描いた雲売り、Cloud seller のイラストが元になっています。風船みたいに雲を売るなんて、素晴らしい想像力です。

「雲を買った人がいたら、どうなるだろう」ということから、2人でどんどん話を作り上げていったそうです。楽しそう!

絵本に出てくる町並みも、いろいろ不思議なことがあっておもしろい。時代がごちゃまぜになっているようだったり、変な店があったり。

読むと、Lizzyの暮らす世界に入り込めてしまう、素敵な絵本です。
Lizzy and the Cloud
by The Fan Brothers
Publisher: Frances Lincoln Children's Books
profile
谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
HP:http://www.storyplace.jp
Facebook:https://www.facebook.com/storyplacejp/