派遣社員あすみの家計簿(青木祐子)
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![]() やればできる! 派遣社員あすみの家計簿
青木 祐子(著) 初めの3ページを読んで、主人公に対し「大丈夫かいな、この子は!」と、心配になり、最後まで一気に読んでしまいました。青木祐子さんの『派遣社員あすみの家計簿』です。
藤本あすみは28歳、名古屋出身。つい先日まで、東京丸の内にある名の知れた会社に務めていた。
あすみは出会ったばかりの飲食店経営者と結婚することを決め、同棲を始めた。 彼は、年内には年商が一億突破するだろうと言った。そしたらオシャレなタワーマンションに住もう、とも言った。 その上で、自分は仕事に没頭したいから、あすみには専業主婦になって支えてほしいと言った。 あすみは一流企業に勤めてはいたが、単調な事務の仕事に飽きていたところだった。 だから、入籍はまだだったが、少し早めに寿退職したのだ。会社を辞めた日、送別会でもらった花束を抱えて二人が住むマンションに戻ったあすみに「おかえり」と言ってくれる人はいなかった。 彼はあすみに黙って逃げたのだった。 彼は去ったが、残されたものがあった。 それは「二人の結婚準備」のために買ったあれこれのカード払い残高だ。 家賃もあすみの口座からの引き落としになっている。 あすみは自分の通帳残高から、これから引き落とされる金額を差し引いてみた。 何度計算しても同じ答えが出る。「428円」と。 あすみは今、無職だ。428円しかない口座から、どうやって翌々月の家賃と光熱費を引き落とせるのか?! 出会ったばかりの人と結婚すると言った時、あすみの家族は反対した。 せめて1年様子を見るようにとも言ってくれた。 それなのにあすみは反対を押し切って突っ走ってしまったのだ。 ああ、せめて会社だけは辞めないでいれば良かった。 来月から、どうやって生活していけばいいのだろう。あすみは、しっかり者の友人 仁子に相談するのだった。 (青木祐子さん『派遣社員あすみの家計簿』の出だしを私なりにまとめました)
あすみの家族がこの結婚話に反対したのは大いに理解できます。
相手の男性が怪しすぎる。 最初、デートでの支払いは彼がしてくれました。 ところが、同棲し始めてからは、支払いは全てあすみにさせるようになります。 飲食はもちろん、家賃、自分の携帯電話代、同棲を機に買った家具家電など、全てあすみのカードで支払うようになったのです。 あすみよ、ちょっとおかしいと思わなかったのか?!と詰問したいところですが、彼は、結婚準備の支払いは一つにまとめた方がわかりやすいだの、事業資金と生活費が混同したらややこしいので、会社の決算が終わるまで立替払いしてほしいだの言ったわけです。 決算が終わったら、100万なり200万なりまとまった金額をあすみの口座に移すから、それまで全てまとめてあすみのカード払いにしよう、と。 これって、どう考えても、相手の男性は詐欺師でしょう。 あすみは一人暮らしをしていたときは、それなりに考えて生活し貯金もしていたのに、彼と付き合いだしてから金遣いが荒くなり、貯金も減り、結果、次の引き落としが終わったら、通帳残高が500円以下になる事態になったのですよ。 さらに悪いことに、失踪した彼を探しているうちに、彼が飲食店の経営者などではないことが判明しました。 週に3回アルバイトでバーテンダーをしている、フリーターだったのです。 なんと見る目がないことか。 「大丈夫かいな、この子は!」と思わずにはいられないではありませんか。 あすみが相談しに行った仁子は、実に的確なアドバイスをしてくれます。 まずは、仕事を見つけること。 次に、カード払いをやめること。 最後は、家計簿をつけること。 つまり、収入源を確保し、借金を増やさないようにし、お金の流れを把握せよ、ということですね。 しかし、28歳のあすみが簡単に職を見つけられるわけではありません。 さあ、あすみ、どうするのか? 親心と、好奇心でページをめくる手が止まりません。 何も考えずに生きているのかと思った あすみですが、窮地に陥ってみると、意外と頑張り屋であることがわかってきます。 えらいわ。健気だわ。 がんばれ、あすみ! 途中から、親のような気持ちになってしまいました。 いえ、親というのとはちょっと違うかも。あすみは私に似ているところがあるので、つい応援したくなるのかも。 どう言った点が似ているのか? それはですね、形から入るところです。 例えば、あすみはヨガを始めるとなったら、すぐにヨガマットや専用のウェアを買ってしまうんです。 好奇心が旺盛で、いろんなものにチャレンジしたくなるものだから、それだけものも増えてしまう。 ベリーダンスのウェアもあるし、テニスラケット、ギターや水着、エトセトラ。 その上、道具などを買って満足してしまうのか、それらの習い事は続いていません。 うわー、まるっきり私ではないの。 もう一つ、私とあすみが似ているのは、物に名前をつけたりするところ。 あすみは高級万年筆モンブランを持っておりまして、その子に「万年モンブラン筆太郎」という名前をつけているのですよ。 私もカメラにニコラ、なんて名前をつけて愛着を持っているので、あすみには大いに親しみを感じました。 この「万年モンブラン筆太郎」購入に関しても言いたいことがあるのですが、それは声の書評で語りますね。 お調子者だし、考えが甘いところもあるあすみを見守りながら読んでいると、結局人は誰かと助け合って生きているのだなという結論に達しました。 読後感が明るいところも気に入りました。 続編があるようなので、この後のあすみの様子も読むつもりです。 【パーソナリティ千波留の読書ダイアリー】 この記事とはちょっと違うことをお話ししています。 (アプリのダウンロードが必要です) 派遣社員あすみの家計簿
青木 祐子(著) uki(絵) 小学館 飲食店社長を自称していた恋人の理空也に騙され、会社を“寿退社”してしまった藤本あすみ。理空也は姿を消し、残ったのは高額なカードの支払いだった。ピンチに陥ったあすみは親友の仁子に説教され、家計簿をつけることに。派遣会社に登録したものの、なかなか仕事は決まらない。シャンプー配りや工場の日雇いと必死の節約で食いつなぎ、ようやく派遣先を得たあすみ。そんな折、合コンで出会った商社マンの八城からアプローチを受けるが、理空也への思いを断ち切れずにいて…。家計簿には、生き様が表れる!?人生に迷子中のアラサー女子の節約サバイバル小説。 出典:楽天 ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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