怪談青柳屋敷(青柳碧人)
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![]() じんわり怖い実体験集 怪談青柳屋敷
青柳碧人(著) 私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFM みのおエフエムの「デイライトタッキー」。
その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。 2025月3月12日放送の番組では、青柳碧人さんの『怪談青柳屋敷』をご紹介しました。 大変失礼ながら、私は青柳碧人さんをこれまで存じ上げませんでした。 主にミステリ、推理小説を書いておられるようです。 青柳さんは、個人的に怪談がお好きだそうで、これまで人から聞いた怪談や奇談、それからご自身の体験などをずっと記録しておられたそうです。それを創作に活かそうという気持ちはなく、あくまでもご趣味で。 ところがある日、担当編集者さんにそのノートを見せたところ、とんとん拍子で出版の運びとなったそうです。 タイトル『怪談青柳屋敷』は、怪談を記録したノートの表紙に書いていた仮題のようなもの。それがそのまま採用されました。 ”青柳屋敷”って、なんだかとても雰囲気がありますよね。 日本では幽霊は柳の下に出るものと相場が決まっていました。 これが田中さんや山田さんだったら、編集さんは別のタイトルにしようと提案されたのではないかしら。『怪談青柳屋敷』、タイトルが秀逸です。 さて、怪談や怪異体験について、頭から否定される方もおられることでしょう。 でも私は、青柳屋敷に参加できるほど、子どもの頃から怪異体験や不思議な体験をしてきました。金縛りなんかしょっちゅうです。 ですから、この本に収録されている体験談の全てを肯定します。全く同じ体験はしたことがないとしても「世の中にはきっと、そういうこともありますよね。ホント怖いわ」という気持ちです。 この本に収められている49篇の中で、私が最も怖いと思ったのは「赤い靴」です。 体験者の美香さんが20代の頃のお話。 美香さんはとある老人介護施設に勤め始めました。 そして初めての夜勤の日にそれは起こりました。 まずは金縛りに襲われ、次に女性の喚き声が聞こえたのです。 喚き声は物理的なものではなく、美香さんの耳の中で聞こえている感じ。 もう、この段階で十分怖い。 だけど怖いのはこの後。 なんとか金縛りが解けてベッドで寝返りを打った美香さん、目を開けるとちょうど仮眠室の扉が見える位置でした。 仮眠室の扉の下部分には2cmほどの隙間があり、廊下の様子が少し見えるようになっているのですが、そこに、赤い靴を履いた足がウロウロしているのが見えたのですって。 老人介護施設ですから、夜中に徘徊しているご老人がいるかも、と思ったけれど、その赤い靴を履いた足はどう見ても少女のもの。 この段階でさっきの10倍は怖い。 美香さんは、もう一度寝返りを打ちました。 そして次に扉の方に顔を向けてみたら、赤い靴がつま先をこっちに向けて立っていたんですって。つまり仮眠室のドアに向き合っているっていうことです。 ぎゃあああああ!!! 怖いー。 入ってこないでぇー!!! 読みながら私は心の中で絶叫しましたわ。怖い。怖すぎる。 翌朝、美香さんはその赤い靴をもう一度見ることになります。 そのあたりはご自身で読んでみてくださいね。 本当に怖いわぁ。 もう一つ「耳なし芳一」という体験談も怖かったです。 夏休みに子どもたち対象で行われる三泊四日のキャンプでのこと。 四日間のうちの数時間だけ、中学生が企画・立案・進行を担当する「中学生企画」という取り組みがありました。 その時は夏休みということで「肝試し」が企画されました。 ペアを組んでひと組ずつが森の中の小道を歩く…というイベントの前に、気分を盛り上げるために中学3年生の男子が怪談を語ることになっていました。 その子が語ったのは有名な「耳なし芳一」です。 彼の努力は実って、その怪談話は好評を博したのですが、その後、「耳なし芳一」の語りを担当した男子が、その準備期間中に起こったことが本編の「耳なし芳一」以上に怖かった、という落語のような話です。 怪談を語ったり、お化け屋敷を企画すると、その途中で怪異を引き起こすというのもよくある話ですね。 初めにも書きましたが「そんなこと、あるわけない!」と否定されると、この本は全く面白くありません。 私は、そういう世界があるかも、あってもいいかも、と思っています。 今目の前で見えること、聞こえることしかないと思うより、他の次元や他の世界があるのかも、と思う方が人生面白いと思うのですよ。 そう思える方にはぜひ読んでいただきたい青柳碧人さんの『怪談青柳屋敷』でした。 それにしても私が体験したことを青柳さんに収集していただきたいなぁ。 そして続編に載せてもらったらどんなに嬉しいでしょう。 あ、その前に青柳さんのミステリを拝読しなくては。これも楽しみ。 【パーソナリティ千波留の読書ダイアリー】 この記事とはちょっと違うことをお話ししています。 (アプリのダウンロードが必要です) 怪談青柳屋敷
青柳碧人(著) 双葉社 実は無類の怪談好きだった著者が、自ら体験あるいは学生時代から蒐集し続けている怪異譚の中から、とっておきの49篇を収録ー深夜に帰宅したのは誰だったのか?(「夫の帰宅」)。心霊スポットの海岸で少年たちを襲った異変(「そこは海」)。夜毎バーに現れる奇妙な少女(「防空頭巾とタバスコ」)-人気ミステリ作家が書き下ろした初の実話怪談短篇集。 出典:楽天 ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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