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光のとこにいてね(一穂 ミチ)

毒親の連鎖ではないか

光のとこにいてね
一穂 ミチ(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

2024月1月17日放送の番組では、一穂ミチさんの『光のとこにいてね』をご紹介しました。
小瀧結珠(ゆず)7歳。裕福な家庭の子どもで、初等科からエスカレーター式のお嬢様学校に通い、週に5つも習い事をしている。

校倉果遠(かのん)7歳。母子家庭で、古い団地住まい。

母は極端なオーガニック志向で、娘に白い砂糖や添加物が入った物を食べさせないし、シャンプーやトリートメントも使わせない。

全く共通点のない二人が、ある時偶然に出会い、友だちになった。

二人で過ごす時間は互いにとってかけがえのないものだったが、出会いと同様、別れも突然にやってきた。

それから数年。高校1年生になった時、二人は再会する。

結珠が通っているお嬢様学校に、果遠が転入してきたのだ。

お互いに相手に特別な気持ちを持っていた二人は、長い空白時間を経てまた仲良く過ごせるはずだったが、また別れがやってきた。

そして29歳になった二人は再び巡り会う……
(一穂ミチさんの『光のとこにいてね』を私なりに紹介しました)
この小説は、7歳の時に出会った二人の少女が別れと再会を繰り返す物語で、結珠と果遠の視点が入れ替わるように書かれています。

結珠の父は医師で、経済力があります。だから結珠はいつも小綺麗な洋服を着て、髪も綺麗に結ってもらっています。

習い事はピアノ、スイミング、書道、英会話にバレエ。もしかしたら「習っている」のではなく「習わせられている」のかもしれませんが。まだ7歳ですから、ママに送り迎えしてもらっています。ママも子どももなんと多忙な。毎日のスケジュールをこなすだけでも大変でしょう。

一方の果遠は母との二人暮らし。父親のことは全く知りません。顔も見たことがないのです。

もちろん習い事など全くしていませんし学校の勉強も全然できない。

独特な価値観を持つ母は、果遠の外見などには全く頓着していないので、果遠の髪の毛はボサボサ、珍妙な洋服を着ています。変わり者の母親とその外見のせいで周囲の子どもたちとも仲良くなれない果遠はいつも一人でいます。

年齢が同じであること以外は正反対の境遇の二人ですが、大きな共通点があります。

それは母親がいわゆる「毒親」であること。

一見良い母親に見える結珠の母親は、自分自身にしか興味がない女性で、いつも結珠を冷ややかな目で見ています。だから結寿はママに甘えたりわがままを言ったりしません。ママの口癖は「みっともない」。甘えやわがままを許してもらえない雰囲気があるのです。

果遠の母親も極端。

ご近所のママ友が焼いてくれたアップルパイであっても「そんな、砂糖や添加物が入ったものをうちの子に食べさせられない!」とはっきり言ってしまう人です。トリートメントなんか使わせてもらえません。お酢で中和すればいい、という人です。とにかく子どもが喜びそうなことを何一つ許してくれない。果遠の楽しみが、団地の隣の住人が飼っている小鳥をベランダ越しに見ることだというのですから、かわいそうで泣けそうになります。

その二人が出会い、母親の目の届かないところで仲良くなっていく姿に「お互いの母親に見つかったらきっと二人はもう会えなくなってしまう。どうか見つかりませんように」と、祈る気持ちになるのでした。

二人の別れは唐突にやってきます。

どちらかの母親に見つかって「あんな子と遊んじゃいけません」と引き裂かれるわけではなく、別の理由で。

予期していたこととは全く違う展開となり、この辺りはとても面白いです。

高校生になって再会した二人が別れる理由も、私には予想できませんでした。

うーむ、なんて面白い小説なんだ。

そして29歳になってからの再会。

元々東京に住んでいた二人が出会うのはかなり遠い場所でした。

でも、二人の目を通して描かれる風景に、どこか見覚えがあり

「あれ?私、ここに行ったことがある」

先を読んでみると、やはり私が思った通りの場所でした。

風景が思い浮かぶと、俄然のめり込みますね。

ストーリー自体が起伏に富んでいて面白い上に、後半は自分の知っている場所が舞台になるので、読むスピードが一層上がりましたよ。

ただ、7歳、15歳の二人には共感できたし応援もできたけど、物語の最後の最後、29歳の二人が出した結論にはどうにも共感できませんでした。

毒親からやっと解放された二人なのに、あなたたち自身が毒親になってませんか?と。

これじゃあ毒親の連鎖じゃないの。

最後にそんな暗い気持ちになってしまいましたが、文句なしに面白い小説ではありました。
光のとこにいてね
一穂 ミチ(著)
文藝春秋
運命に導かれ、運命に引き裂かれるひとつの愛に惑う二人の四半世紀の物語。 出典:楽天
profile
池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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