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海辺のカフカ(村上春樹)

22年ぶりに、村上春樹

海辺のカフカ
村上春樹(著)
村上春樹さんの『海辺のカフカ』が出版されたのは2002年のこと。

私は22年ぶりに読み終えることができました。

『海辺のカフカ』が出版された時、私はすぐに購入して読み始めました。

ところが、数十ページ読んだところで、紛失してしまったのです。

私は読みかけの本はいつも持ち歩き、すきま時間があれば読むようにしているのですが、その日、帰宅してバッグの中に『海辺のカフカ』がないことに気がつきました。

ない!

まだ60ページくらいしか読んでいないのに。

一体どこに起き忘れたのか。

思い当たるところ全てに連絡してみましたが、本の忘れ物はないとのこと。

結局見つけられず、めげてしまい、そのまま読まずに終わってしまったのでした。

それから22年。

この度やっと読了することができました。

やれやれ。
東京都中野区に住んでいる少年 田村カフカは中学生だ。

彼はかねてより家出を計画し、そのための準備をしてきた。

それは体を鍛えることであり、学校の授業に真剣に取り組み知識を身につけることだった。

そして15歳の誕生日に、彼は家出を決行する。

深夜の遠距離バスで東京を脱出し、四国の高松へ向かった。
(村上春樹さんの『海辺のカフカ』の出だしを私なりにまとめました)
主人公 田村カフカくん。

家出中に名前を聞かれてそう答えてますが、カフカは本名ではありません。

『変身』を描いたフランツ・カフカから拝借したらしいです。

カフカはチェコ語でカラスを意味するそう。

その関連でしょうか、この小説は”カラスと呼ばれる少年”がカフカ少年に語りかけるところから始まります。

家出しようとしているカフカくんに、お金は持っているのか、この先どうするつもりかなどを語りかけています。

また、家出するのであればタフでなければならないとも。

おそらく”カラスと呼ばれる少年”の声は、カフカくんの心の声なのでしょう、この先もたびたび登場して語ります。

この小説のもう一人の主役と言っていいのが「ナカタさん」。

ナカタさんは初老の男性で、彼自身の言葉を借りると「頭が悪い」のです。

とはいえ、最初からそうだったわけではないとのこと。

ナカタさんのお父さんは大学の教授ですから、当然「頭はいい」。

弟たちも頭がよくて、大人になってからは大手商社に勤めています。

どうしてナカタさんだけが「頭が悪い」のか?

それは小学生の時の事故が原因だとナカタさんは言います。

それまでは成績が良かったのだけれど、事故以来、計算などの能力が全てダメになってしまったと。

でもそのおかげかどうか、ナカタさんは猫と話ができるのです。

小説は、カフカくんについて描かれる部分と、ナカタさんの部分、そしてもう一つ、戦争中に起こった不可思議な事件のレポートの3つが並行して描かれていきます。

最初はそれぞれが関係なさそうに思われるのですが、読み進むに従って、3つの部分の関係性が見えてきます。

そして一気に四国へとみんなが集約されていくのです。

ストーリーは、虚実入り混じるというか、現実の話なのか、登場人物の妄想か夢の話なのか、よくわからない部分が多くあります。

でもそれが村上春樹さんらしい部分と言っていいと思います。

不可思議だけれど面白い。

そして想像するだけでも戦慄してしまうような残酷なシーンが出てくるのも村上春樹さんらしいと言っていいのではないかと思います。

村上春樹さんの、乾いた、淡々とした文章で描かれる残酷なシーンは『ねじまき鳥クロニクル』、『1Q84』でも経験済みですが、読みながら声を出して「もう嫌だ、耐えられない!」と口に出して言ったのは初めてのことです。本当に読んでいて息苦しくなりました。

登場人物の一人がその場面で私と同じようにもう耐えられないと言った時には「遅いわ!もっと早く止めてよ」と腹が立ったくらいです。

一体どういう意図でそういう残酷なシーンを挟むのかしら。

そういう行為をする人のことを際立たせるためかしらん?

まぁ、ともかくそういうシーンもありながら、最後まで興味深く面白く読ませてもらい、村上春樹さんってやっぱり偉大な作家さんなのだなぁと感じました。

ところで、この小説を読んでいると、無性にコーヒーが飲みたくなりました。

家出したカフカくんがお世話になった人からの「カフカくんの入れるコーヒーは美味しい」という評価が何度も出てくるので。

インスタントコーヒーやパックに入ったコーヒーでは飽き足らず、コーヒー豆を買いに行きました。

そして亡き父からもらってしまい込んでいたコーヒーミルを取り出し、豆を粉にするところからコーヒーをいれて飲みました。

ふむ。美味しい。

そういえば村上春樹さんの『ダンス・ダンス・ダンス』を読み終わった時には、作中に出てくるピニャコラーダというカクテルを飲みたくて飲みたくて仕方がなくなったものでした。

そして実際に、ハワイに行ったときに、作中とほぼ同じ条件でピニャコラーダを飲んだのです。

作中の飲み物や食べ物がやたら美味しそうに描かれていることも村上春樹さんの特徴と言えるでしょう。

それは村上春樹さんがかつてジャズ喫茶の店主さんだったことが無関係ではないのかもしれませんね。

他の未読の作品も読もうと思います。
stand.fm
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【パーソナリティ千波留の読書ダイアリー】
この記事とはちょっと違うことをお話ししています。
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海辺のカフカ
村上 春樹(著)
新潮社
15歳になった僕は二度と戻らない旅に出た。彼は長身で、寡黙だった。金属を混ぜ込んだような強い筋肉を持ち、世界でいちばんタフな15歳の少年になりたいと思っていた。東京都中野区にもしある日、空から突然2000匹の生きた魚が路上に落ちてきたら、人々は驚かないわけにはいかないだろう。多くのネコたちは名前を持たない。多くのネコたちは言葉をもたない。しかしそこには言葉を持たず、名前を持たない悪夢がある。 出典:楽天
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池田 千波留
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