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ヨーレのクマー( 宮部みゆき)

本当のことをわかってもらえない悲しさ

ヨーレのクマー
宮部みゆき(著)
先日、宮部みゆきさんの『悲嘆の門』を読みました。⇒「宮部みゆき『悲嘆の門』(上)(中)(下)」(ブログ:茶々吉24時)

主人公・三島孝太郎がアルバイトをしているサイバーパトロールの会社名は「クマー」。

ネット監視の会社にしては可愛らしすぎるネーミングです。小説の中で、社名は社長が子どもの頃好きだった絵本からもらったのだと説明されていました。

北欧に、ヨーレという村があり、そこを守っている良い怪獣クマー。

クマーはヨーレを襲おうとする悪い怪獣を追い払って村を守っているのだけれど、体が透明なので、だれもクマーのおかげだとは知りません。

ところがある日、クマーは怪我をしてしまい、透明だった体が人間からも見えるようになります。

ヨーレの村人たちはクマーを見て恐れおののき、退治しようとするではありませんか。

どうして?クマーは良い怪獣なのに。どうして?

怪我をして弱った体で逃げるクマー。水が飲みたくて湖面を覗き込んで驚きます。クマーは悪い怪獣と姿形が同じだったのです……

ここまでで絵本の大半を明かしましたが、『悲嘆の門』には結末まで書かれていますから、このネタバレは問題ないと考えております。

私はクマーがかわいそうでたまらず、ぜひ、その北欧の絵本を読みたいと考えました。もしかしたら実在しない話かもしれないと思いつつ、検索をかけたらあっさりヒット。

え?北欧の絵本ではない?!

宮部みゆきさんの作中作(劇中劇ならぬ)が現実に出版されたということなのでした。なーんだ、ちょっとばかり騙された気分。

気を取り直して読みました。

ほぼ『悲嘆の門』で書かれていたのと同じでしたが、佐竹美保さんの絵がとても美しい!この絵があるのとないのとでは全然違います。

本当のことをわかってもらえない悲しさは何かに通じると思ったら、『泣いた赤鬼』や『ごんぎつね』でした。

また、水面に映る自分を見て愕然とするシーンはミュージカル『ファントム』を連想させます。(アンドリュー・ロイド=ウェバー『オペラ座の怪人』ではなく、アーサー・コピット脚本の『ファントム』)

『泣いた赤鬼』『ごんぎつね』には何度泣かされたことか。『ファントム』の水面を見るシーンもそう。

だから『ヨーレのクマー』の悲しさと美しさには魅かれるのだけど、腑に落ちない点が多々ありまして、芯からのめり込むことができないのでした。

例えば、クマーがいなくなった後、村人は何のために石像を立てたのだろう?

村を守ってくれるクマーがいなくなったのに、その後は悪い怪獣に襲われることはなかったのか?クマーは傷を負いながら、悪い怪獣を根絶やしにしたのかな?

絵本にツッコミを入れるのも おとなげないけれど、なんとなく釈然としません。でもそれを「ま、良いか」と思わせるほど、佐竹美保さんの絵が美しいです。

心がしーんと静かになりました。
ヨーレのクマー
宮部みゆき(著)
KADOKAWA
クマーは、かいじゅうです。うつくしいフィヨルドと山にかこまれたヨーレのまちを、わるいかいじゅうから守っている、いいかいじゅうです。そのことを、まちの人たちは知りません。だってクマーはとうめいだから。でもある日、クマーの姿がみえるようになったのです。そのとき、まちの人たちがとった行動はー。とうめいなかいじゅう「クマー」をめぐる、やさしく悲しい物語。 出典:楽天

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の『読書ダイアリー』
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon



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