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お雑煮マニアックス(粕谷浩子)

個性的なお雑煮たち

お雑煮マニアックス
粕谷浩子(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

2023月12月20日放送の番組では、粕谷浩子さんの『お雑煮マニアックス』をご紹介しました。


お節料理にお雑煮、地域によって差があると聞いています。

この本は、47都道府県のお雑煮を、写真と具材の解説などで紹介したものです。

私は子どもの頃から、白味噌が好きではありませんでした。

あのとろみとほんのりした甘味が苦手。

当時、三ヶ日は親戚一同祖父母の家に集まって泊まり込む習慣だったのですが、そこではお雑煮は白味噌。

しかも具材がドロドロになるまで煮込んであって、私はそれが嫌で嫌で。

なんとかしてお雑煮を食べたふりをしてやり過ごすのに必死でした。

そんな私のために自宅では母はおすまし雑煮を作ってくれました。

関西は白味噌でしょ、という人は多いです。

夫も白味噌派。

だから我が家では、別々にお雑煮を作ったりするのです。

そんな私のことを周りの人たちはみんな「変わってるわぁ」と呆れ顔。

もう、嫌になっちゃうなぁ。

兵庫県はやっぱり白味噌が主流なの?

そう思って、この本の「兵庫県」を見てみたら、おおお!!おすまし雑煮が掲載されているではありませんか。

しかしそのお雑煮はアナゴ出汁。

私の知っている限り、アナゴで出汁をとっているお雑煮は見たことがないけれど?

本文を読んでみると、紹介されているのはどうやら兵庫県でも西の方、明石市の雑煮のようです。

そして説明文にはこのように書かれていました。
すまし仕立てと白味噌雑煮の共存地帯。

醤油味と白味噌味が入り混じるのが兵庫のお雑煮の傾向。

同じ地域でもこちらの家庭は醤油派で、あちらは白味噌派ということがよくあります。
(粕谷浩子さん『お雑煮マニアックス』 P63 「兵庫」より引用)
そうか、我が兵庫県は混合なのね。

じゃぁ来年からは胸を張っておすまし雑煮派を名乗ることにしましょう。

お雑煮といえば、こんなエピソードがあります。

それはまだ私が20代だった頃のこと。

知人が、香川県に転勤となって初めて迎えたお正月。

新年早々職場の同僚に招かれてご自宅にお邪魔したところ、お雑煮が振舞われました。

白味噌に、根菜類、お餅。

実家のお雑煮と見た目が変わらなかったので、ほっとして頂戴したところ、なんとお餅の中に餡が入っていた、というのです。

帰省してきた時に、お雑煮に餡餅が入っていて、どれほど驚いたかを語る知人。

それを聞いた私たちの反応は

「そんなわけない」
「またまたァ、味噌に餡って、そんなのあるわけない」
「いつものホラ話でしょ」

口々に否定します。

ところが知人はムキになって
「本当だって。本当にお雑煮に餡餅が入っていたんだって!」と、力説するのです。

それを聞いて私たちは
「だとしたら、からかわれたんじゃないの?」

どうあっても、白味噌にあん餅が入った雑煮などあり得ないと思っていたのでした。

今から約40年前、インスタグラムもYouTubeもない、『ケンミンショー』だってない時代の話です。ローカルの話題が伝わりにくい時代でした。

もちろん、この本で「香川」を見れば、白味噌あん餅雑煮が紹介されています。

由来としては、高松藩が和三盆の産地だったことが挙げられています。

和三盆を実際に作っているのは庶民。でも彼らは普段それを食べることはできません。

お正月くらい食べたいけれど、藩の特産品を表立って食べることができない、だったら餅に隠して食べてしまえ!というのが始まりだったとか。

抜き打ちチェックに備えて、甘いあん餅以外に、塩あんで作ったお餅も用意しておいたそうですよ。

お役人が来たら「いえ、和三盆なんか食べてません!」と塩あん餅入りのお雑煮を振る舞ったのでしょうね。

不思議なことに、大分県もあん餅入りのお雑煮が食べられているのですって。

もしかしたらその昔、瀬戸内海をぐるりと回って外洋に出る前に大分に立ち寄った高松藩士が伝えたのでしょうか?知らんけど。

今の日本では、日頃から美味しいものをなんでも食べられますが、昔はお雑煮は晴れの食べ物だったのでしょう。

新潟県ではシャケとイクラ、冨山県ではエビをトッピング。ゴージャスなお雑煮です。

反対に、おすましに餅とネギのみの石川県、餅と岩海苔のみの島根県など、シンプルな県も。

一方、お汁物だというのに、つけだれが添えられているのが岩手県。

同じ呼び名でありながら、都道府県ごとにお味噌や具材がこんなにも違うなんて、お雑煮って面白くて奥が深いですね。

いえ、お雑煮の区分の単位は「県」ではなく、もっと小さいものかも。

各県のページをご覧になって「自分は〇〇県に住んでいるけど、こんなお雑煮ではない!」とおっしゃる方がきっとおられると思います。

突き詰めていったら家庭ごとにお雑煮の定番は違うのかもしれません。

カルチャーショックや、時には夫婦喧嘩の元にもなりそうなお雑煮について、あれこれ見ているうちにとりあえずお餅が食べたくなってしまいましたよ。
お雑煮マニアックス
粕谷浩子(著)
プレジデント社
お雑煮マイスター・粕谷浩子は、日本各地のお雑煮事情を知るべく、銭湯で張り込みを開始。入浴するおばあちゃんをつかまえては、お雑煮についてあれこれ聞き出し、あわよくばご馳走してもらう、という独特のフィールドワークを続け、およそ80種類ものお雑煮レシピを集めました。今回はそこから特徴的なお雑煮をピックアップ。全国47都道府県別にお雑煮の特徴や歴史的背景、レシピを掲載しました。世に雑煮ブームを起こし、世界進出をもくろむ株式会社「お雑煮やさん」代表・粕谷浩子のお雑煮“偏愛"がつまった一冊です。 出典:amazon
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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