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イクサガミ 地(今村翔吾)

うかつなことは書けません!

イクサガミ 地
今村 翔吾(著)
直木賞作家 今村翔吾さんが昨年、三部作の第一作目である『イクサガミ 天』を出版されてから約1年。私だけではなく、多くの方が続きを早く読みたいと願っていた続編 『イクサガミ 地』が5月16日、ようやく出版されました。いやー、待ちかねましたわ。
明治11年。
日本全国に奇妙な新聞が配られた。

「腕に覚えがあるものは5月5日に京都の天龍寺に集まれ、その者たちに金十万円を獲得する機会を与えよう」というのだ。

十万円といえば、巡査の平均年収の約2000倍。

流行病に倒れた妻と息子を救うために大金が必要だった愁次郎は、ダメで元々、わずかの可能性に賭けて天龍寺に向かった。

驚いたことに、天龍寺にはさまざまな人が集まっていた。

大金が必要な者。廃刀令で身につけられなくなった刀をもう一度手にし「武士」の権威を取り戻したい者、単純に再び剣を振るってみたい者……総勢292人。中には女性もいる。

そんな彼らに、十万円獲得までのルールが説明された。

基本的なルールは『一人1枚ずつ配られた「札」を奪い合いながら東京へ向かうこと。途中には何箇所かのチェックポイントがあり規定枚数を持っていないと通過できない』というもの。

相手が持っている札を奪う方法にはいろいろある。盗んでもいいし、奪っても良い。だが、大金がかかっている以上、みな本気で奪い合い、命のやり取りをすることになる。ルールを聞いて怖けづいてももう遅い。一度ルールを聞いてしまった以上、脱落も許されないのだ。行くも地獄、退くも地獄のサバイバルゲーム『蠱毒』が始まった。

愁次郎は東京に辿り着けるのか?妻子のために大金を手にできるのか?!
(今村翔吾さん『イクサガミ 天』の出だしを私なりにまとめました)
念を押しておきますと、ご紹介したのは一作目『イクサガミ 天』の出だし部分です。

今回読んだ続編の『イクサガミ 地』ではありません。

実は今回、読み終わった時「困った。感想を書くにしても下手なことは書けない」と感じました。

というのも『イクサガミ 天』では、読者には誰が何のために「蠱毒」を開催したのかは全く提示されませんでした。聞いたこともないようなデスゲームの火蓋が切って落とされ、みんなが莫大な賞金を目指して、札を奪い合う様子が繰り広げられてきたのです。

ところが今回出版された『イクサガミ 地』では、続行する「蠱毒」の合間に、誰が黒幕なのか、一体何のために「蠱毒」が開催されているのかが明かされていくのです。歴史上の人物も続々登場してきます。何を書いてもネタバレになります。私はいつもまだ読んでいない人にナビゲートしたいと思って読書コラムを書いているのですが、今回はちょっとでも具体的なことを書いたら、読書の楽しみを奪ったと恨まれることは間違いないと思いました。

ですから、いつものようなご紹介は致しません。

一つ言えることは、『イクサガミ 地』は全てのことが一気に加速する、ということ。物語のプロローグだった『イクサガミ 天』も、普通の小説に比べたらスピード感がありましたが、『イクサガミ 地』はその何倍もの速さで物語が動いていきます。

しかも、物語世界も大きく広がっていきます。

どんな手を使っても相手から札を奪う「蠱毒」というデスゲームの中に、もう一つのデスゲームが入れ子構造のようにはまり込んでいるのもその一つ。それは愁次郎の武芸の道での兄妹たちにまつわる死闘。

また、外国からの参加者もいます。

これだけ物語を膨らませておいて、一体どうやって収集をつけるのか。

『イクサガミ 地』を読み終わった時に思うことは「ああ、早く続きが読みたい」。

『イクサガミ 天』を読みお終わった時と全く同じ気持ちです。

この物語は3巻で完結するとお聞きしています。

次巻が出るのが待ち遠しいのは私だけではないはず。

少しでも早い完結をお待ちしています。
イクサガミ 地
今村 翔吾(著)
講談社
東京を目指し、共に旅路を行く少女・双葉が攫われた。夜半、剣客・愁二郎を待ち受けていたのは、十三年ぶりに顔を合わせる義弟・祇園三助。東海道を舞台にした大金を巡る死闘「蠱毒」に、兄弟の宿命が絡み合うー。文明開化の世、侍たちの『最後の戦い』を描く明治三部作。待望の第二巻! 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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