かしこいビル(ウィリアム・ニコルソン)
100年前に制作されたものとは思えない洗練具合 かしこいビル
作:ウィリアム・ニコルソン 訳:まつおか きょうこ/よしだ しんいち 日頃お世話になっている作家さんの個展開催が続きまして、久しぶりにお会いすべく、北野の異人館や京都の河原町など、観光地へ出向く機会に恵まれました。
自宅が堺なので、必ずミナミやキタを経由するわけですが、大阪の繁華街も含め、どこも外国人観光客で賑わっていますね! そろそろ海外旅行を計画中の方も増えていることと思いますが、こうした旅の準備に欠かせないのが、荷物のパッキング。皆さんは得意ですか? 私はちょっと苦手です。あれこれと何度も入れ直した挙句、必要なものが抜けてて現地で調達せざるを得なかった、という経験は数知れず…。 それが一体、今回の絵本とどういう関係が?というところですよね。 おそらく、表紙から察するのはちょっと困難ではないかと思われますが、おおいに関係しているんです。「そうきたか!(笑)」っていう展開とともに。 「かしこいビル」というのは、表紙中央上部に描かれている兵隊さんのことです。彼は人形なんだけれど、わけあって、汽車を追いかける羽目になりました。 この作品が作られたのは、1926年とあります。ほとんど100年前! 古い作品のためでしょうか?巻末にかなり詳しい解説が添えられています(とっても興味深い内容です。本来なら、私がここでお伝えするよりも、ぜひそちらをご覧頂きたいです)。 その解説によりますと、この絵本は、作者のウィリアム・ニコルソンが、自分の娘であるメリーのために創作したもので、メリーだけでなく、登場するおもちゃたちも、実在のものだったそうですよ。 絵の表現そのものは100年前を思わせる雰囲気をたたえているんですが、この作品が特異なのは、絵と文章のバランスや場面展開の手法など、絵本としての構成を見てとると、およそ100年前に制作されたものとは思えない洗練具合であること。 子供たちをより楽しませるべく創作される現代の絵本では、もはや主流となっている、軽妙なストーリーとテンポのよさ。 100年近く前にも関わらず、この作品においても、そのような洗練された絵本的表現を駆使して創作されているんです。当時としては、かなり前衛的な絵本だったはず。 それだけに、娘のメリーは、そりゃもう喜んだことでしょう。何度も「読んで!」と、作者であるお父さんにせがんだに違いありません。 さて、パッキングが苦手だと、もう一つがっかりなのが、結局使わなかったアイテムがそこそこ紛れていること。どうして必要なものに限って入れ忘れて、使わなかったものをいくつも持って行ってしまうのか…。 メリーのトランクの中身は、結果どうだったのかしら。 100年前から変わらない?「旅支度あるある」が楽しい作品です。 かしこいビル
作:ウィリアム・ニコルソン 訳:まつおか きょうこ/よしだ しんいち ペンギン社 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |
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