スプーンおばさん ちいさくなる(A・プリョイセン)
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![]() 見た目と中身のバランスも、大人ならではの絵本の楽しみ方 スプーンおばさん ちいさくなる
アルフ・プリョイセン (著) 目の前にある仕事を細かく分けて、それぞれふさわしい人にお願いするのが得意だったらいいのにって思うことがよくあります。
私の場合、それが苦手な上、1人で何でも片付けることが慢性化していて、あまりの効率の悪さにくたびれてしまうことが度々おこるせいかもしれません。 私が子供の頃、NHKでアニメが放送されて人気を博したスプーンおばさんは、童話シリーズですが絵本もあります。 ある日、目が覚めてみると、スプーンみたいに小さくなってしまったおばさん。ここでの彼女のミッションは、もちろん家事です。 そうじと、洗濯と、夫婦二人分のお昼ごはんを作ること。畑で働くご亭主が帰ってくるランチタイムまでに、全部クリアするのが目標です。 この小さな体で家事をこなすには、誰かのサポートを得なくてはいけません。 そこで管理職さながらの能力を発揮するスプーンおばさん。自らの言葉と態度だけを頼りに、何でもかんでも動かします。 まずはネズミたち。ネコに言いつけると脅して、家の掃除をさせます。 ネコには、イヌに言いつけると脅して食器洗いを。イヌにはご褒美を用意して、ベッドを整えさせ、窓を開けて空気を入れ替えさせます。 おばさんが本領を発揮するのは、ここからです。洗濯と昼食の準備にまつわるところ。 風や太陽など自然の大いなる力に対しては、憎まれ口をたたいて怒らせ、まるで動きそうにない鍋やポットに対しては、とっておきの“おべんちゃら”でご機嫌をとる。 突飛な物語ではあるけれど、相手を見てこれほど口先だけで自身の態度をコロコロと操るおばさんには、読んでて舌を巻くばかり。 そんなスプーンおばさんも、本文中では、あれこれ思案するカットがいくつも添えられているので、懸命に知恵を絞ってようやく自身の態度を決めている様子がうかがえます。 したたかなおばさんの態度に全く嫌味を感じさせないのは、あたかも下描きせずにサラサラと描いたかのような、ほどよい脱力感を伴うイラストが、終始ほのぼのとした空気を醸し出しているおかげかもしれません。 もしこれが、隙のない完璧主義なイラストだったなら…きっと、相当憎ったらしい絵本になっていたはず(笑) 絵と内容の組み合わせから、見た目と中身のほどよいバランスまでも、絵本は教えてくれます。これは、大人ならではの絵本の楽しみ方の一つかも?絵本を読む際は、ぜひそのあたりにも注目してみてくださいね。 スプーンおばさんのように、ソフトな印象でありながら、テキパキ仕事を振り分けられる人への憧れは、しばらく募りそうです。 プーンおばさん ちいさくなる
アルフ・プリョイセン(著) ビョーン・ベルイ(絵)大塚 勇三(訳) 偕成社 ![]() 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |