婚活中毒(秋吉理香子)
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![]() 婚活いろいろ 婚活中毒
秋吉理香子(著) 私が生まれ育った昭和の時代には「婚活」という言葉はありませんでした。
でも昭和の時代にも「婚活」行動はありました。その主なものは「お見合い」。 反対に、当時はあって、現在は使われなくなった言葉は「結婚適齢期」ではないかと思います。厳密なことは知らないけれど、女性だと23歳から27歳くらいが適齢期とされていたように思います。知らんけど。 今思うと、結婚に適した時期なんて人に決められたくない、いや決められてたまるか放っておいて、といった感じですけど、当時はそういう言葉が普通に使われていたんですよね。 それから時が流れて、令和の時代。 結婚適齢期という言葉がなくなったとしても、「そろそろ結婚したい」「結婚しなければいけないのでは」と思ったり、周囲にせっつかれたりすることはあるようです。そこで「婚活」。結婚すべく、いろいろな活動をするのですが、今は「お見合い」以外に、いろいろあるんですね。 秋吉理香子さんの『婚活中毒』はさまざまな「婚活」について描いた短編集です。 収められているのは4篇。それぞれを軽く紹介ましょう。 ●「理想の男性」
40歳を目前にした沙織が、彼にふられ、婚活のため頼ったのは結婚相談所。そこでマッチングされたのは、想像以上の理想的な好青年だった。しかし彼と親しくなればなるほど、なぜこんな素敵な人がこれまで他の人と結ばれずにいまだに結婚相談所に登録されているのか、不思議になるのだった。そこで沙織は彼について調べてみたのだが、恐ろしい疑惑を抱くことになる……。 ●「婚活マニュアル」 30歳独身だった友人が、脳溢血で死亡。誰にも発見されずに長らく放置されたことを知り、このままでは自分も孤独死を迎える可能性があると不安になった圭介は結婚を意識するが、相手がいない。まずは本屋に出かけ「婚活マニュアル」を購入。しっかり読み込んで街コンに参加した。街コンは合コンとお見合いパーティーのいいとこ取りのようなシステムで、可愛い女性と出会うことができた。その彼女と付き合いを続ける圭介だが、婚活マニュアル通りに行くことと、行かないことがあり……。 ●「リケジョの婚活」 理系女子の恵美は30歳。別段結婚願望などなかったが、人気お見合い番組の次回予告に出演している男子チームのリーダーに一目惚れしてしまった。恵美は迷わず番組に応募した。 そして恵美が出演するお見合い番組の収録日がやってきた。大勢の女性たちが、結婚相手を募集する男性たちが住む街を訪問し、「お見合い回転寿司」や「お宅訪問」を経て、最終の告白タイムへと番組収録は続く。 恵美は理系の強みを活かして、過去の番組の成功例をデータ化。パソコンでさまざまなシミュレーションを行うなど、万全な対策をとってリーダーのハートを掴もうとする……。 ●代理婚活 全く結婚する気配のない一人息子を心配する妻 郁子がついに、子どもの代わりに両親同士が見合いをして話を進める「代理婚活」を始めた。最初は非協力的だった夫の益男だが、徐々に熱心になって行く。 (秋吉理香子さん『婚活中毒』に収められた4つの短編のさわり部分を私なりにまとめました) 4篇それぞれ違うテイストでしたが、どれもこれも面白くて一気に読めました。
私が最も好きなのは4篇めの「代理婚活」。驚いたり、ハラハラした後でとても温かい気持ちになれたのです。 普通、お見合いといえば、仲人さんや両親に付き添われて、結婚する本人たちがお見合いし「じゃあ若い二人だけにしましょう」というのが定番だと思うのですが、代理婚活では最初は「若い二人」は登場しません。 自分の娘や息子のデータをあらかじめ登録しておき、企業説明会のように、会場でそれぞれのブースを持ちます。 気になる方がいれば、そこに自分たちから訪問して売り込みをかけたりするわけですが、見栄えや年齢、学歴、趣味や特技などから人気に偏りができるのは企業説明会と同じこと。なかなか現実は甘くないことを実感させられる話です。 この話が秀逸なのは「代理婚活」の現状だけを描いたものではないこと。 なんとこの小説の主役は結婚する当人である息子ではなく、父親の益男さんなのです。 最初は「結婚なんか、本人が決めるだろう。親同士が見合いをするなんて、バカバカしい。世も末だ」と思っていた父親の益男さんが、急に熱心になる理由が笑えます。 その理由をここでお話ししてしまうとネタバレになるので、控えますが、益男さんの暴走に「あらあら、そんなことして大丈夫?あとですごく困るんじゃないの?」と心配せずにいられなくなるのですよ。 そして最後にアッと驚かされる展開が待っています。 「中毒」なんて物騒な単語がタイトルについていますが、 「ああ、そういうことだったの?!びっくりした。でも良かったワ」と思える短編が最後に収められていて、読後感がとても良い。いろいろな方に安心してお勧めできる小説だと思いました。 【パーソナリティ千波留の読書ダイアリー】 この記事とはちょっと違うことをお話ししています。 (アプリのダウンロードが必要です) 婚活中毒
秋吉理香子(著) 実業之日本社 崖っぷち女が紹介された運命の相手は連続殺人犯?(『理想の男』)。街コンで出会った美女の暴走に戸惑うマニュアル男は…(『婚活マニュアル』)。本命男を絶対に落とす“婚活ツール”の中身とは?(『リケジョの婚活』)。息子の見合いで相手の母親に恋心を抱いた父親は…(『代理婚活』)。運命の出会いはいのちがけー『暗黒女子』の著者が贈るサプライズ満載の傑作ミステリー。 出典:楽天 ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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