二人の嘘 (一雫 ライオン )
読み出したら止まらない 二人の嘘
一雫 ライオン(著) 私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。
今回は、一雫ライオンさんの『二人の嘘』をご紹介しました。 片陵(かたおか)礼子は10年に一人の逸材と言われる女性判事だ。
東京大学在学中に司法試験に合格。エリート中のエリートである上に、すれ違う人が思わず振り返る美貌の持ち主で、上司は彼女のことを「裁判所の顔」に仕立てようとしている。 キャリアも順調に重ね、礼子が最高裁判事になるのは確実だと思われている。私生活においても、立派な家柄の息子と結婚、都内の豪邸に住んでいる。 裁判所の中でも礼子に憧れている女性は多いが、礼子自身は何に対しても極めて冷静で、昂ることがない。 官僚であろうが弁護士であろうが、望む職種に就けたはずの礼子が裁判官を選んだのは、最も他者と触れ合わない職業だったから。 礼子が求めているのは地位でも名誉でもなかった。裁判官として常に「正しくあること」だ。そして過去に間違った判決を下したことはないと自負していた。 ところが最近、ある男が毎朝のように裁判所の前に佇んでいると知った。その男は、かつて礼子が判決をくだした元服役囚だった。 なぜその男は毎朝裁判所の前にやってくるのか?自分の判決に不服があるのだろうか?まさか、自分は誤った判決を下してしまっていたのか? 礼子は過去の裁判資料を読み返すだけではなく、その男のことを調べ始めるのだった……。 (一雫ライオンさん『二人の嘘』の冒頭を私なりに紹介しました) この小説を一言でいうと「とにかく面白い」。
著者の一雫ライオンさんは元々は役者さんで、その後 脚本家として映画やドラマに携わって来られたかた。 だからでしょうか、さまざまな「見せ場」があり、この後どうなるのだろう、と思わずにはいられません。 お正月休み中に読むことができて良かったです。そうでないと毎日寝不足になるところでした。 どこがそんなに面白いのか、考えてみたのですが、それは主人公 礼子のキャラクター設定と、加速度的に変化する内面の様子ではないかと思いました。 礼子さんはまるで機械のような人なのです。 感情を表に出さない、というよりは感情がないかのよう。 裁判所では膨大な量の仕事をこなすために、会話の語数まで節約。 どうすれば効率的に仕事を捌けるかを第一に行動しています。 喜んだり怒ったり、そんなことをしている時間がもったいない、という感じ。 例えば、子どもの頃から教科書など一度読めば全部記憶できてしまうので、東大受験も司法試験も苦もなく合格したのだけれど、それを自慢したりしません。 人には「死ぬほど勉強しました」と語ります。 そうでないと無用なやっかみを買い、面倒だから。 仕事だけではなく家庭でもそう。 夫や、舅姑に対しても、こうすれば波風が立たない、という態度を貫いています。 私だったらキレる、と思うようなことにも、淡々と対処しているのです。 喜怒哀楽のない超絶美人。 礼子がそうなったのは、生育環境のせい。 シングルマザーだった礼子の母は、ある夜、礼子を置き去りにして逃げてしまったのです。 礼子にとって無感情は自分を守るためのもの。 その礼子が、徐々に感情を取り戻していくのと、元懲役囚が抱える謎が明かされていくのとが同時並行、 徐々に加速していき、読み手も休めなくなる、といったところ。 「謎」と書きましたが、謎解きが主眼の小説ではありません。 一人の人間が過去に向き合い、人間らしい感情を取り戻していく物語です。 もう一つ、今までほとんど知らなかった裁判官の仕事内容についての記述も興味深かったです。 ちなみに、この小説をドラマ化、映画化するのであれば、片陵礼子役は北川景子さんかな、と思いながら読みました。 二人の嘘
一雫 ライオン(著) 幻冬舎 女性判事・片陵礼子のキャリアには、微塵の汚点もなかった。最高裁判事になることが確実視されてもいた。そんな礼子は、ある男のことが気になって仕方がない。かつて彼女が懲役刑に処した元服役囚。近頃、裁判所の前に佇んでいるのだという。判決への不服申し立てなのか?過去の公判資料を見返した礼子は、ある違和感を覚えて男のことを調べ始める。それによって二人の運命が思わぬ形で交わることになるとも知らずに…。 出典:楽天 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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