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後悔病棟(垣谷美雨)

その結果に満足できるのか

後悔病棟
垣谷美雨(著)
以前読んだ垣谷美雨さんの『希望病棟』は、とても面白かったです。コミュニケーション能力に問題のある医師が、胸に当てると相手の心の声が聞こえる不思議な聴診器を拾って患者と深く向き合うお話。

読み終えてから『希望病棟』が『後悔病棟』の続きだと知り、順番が逆だけれど、『後悔病棟』を読むことにしました。
勤務医になって約10年の早坂ルミ子。患者の気持ちがわからない医者だと周囲に思われている。

担当している末期がん患者に、良かれと思ってかけた言葉が患者の家族を怒らせてしまったりもする。

自分でもコミュニケーション能力に問題があることはわかっているが、どうしたらいいのかわからない。

ある日、ルミ子は病院の中庭で不思議な聴診器を拾った。その聴診器を患者の胸に当てると、心の声が聞こえてくるのだ。

死を目前にした患者の心には「自分の人生はこれで良かったのか」というモヤモヤが渦巻いていた。

聞こえてくる患者の思いに寄り添っているうち、彼らの心の奥に扉が見えてきた。

その扉は過去につながっていて、念じれば、それぞれがやり直したいと思っている過去の時点に戻れるようだ。

不思議な聴診器の力を借りて、末期がん患者に過去をやり直させてあげるルミ子。

次第に「安らかな心で死を迎えさせてくれるお医者さん」という評判がたち、患者から指名を受けるようになってきた。

かつての「患者の気持ちのわからない医者」という評価が嘘のようだ……。
(垣谷美雨さん『後悔病棟』の概要を私なりに紹介しました)
ルミ子が担当する患者さんたちの後悔はさまざま。

有名女優を母に持つ娘は「やっぱり私も芸能界デビューしたかった。なのにお母さんが反対したから…」

出来の悪い息子を持つ母親は「あんなバリバリやり手の嫁と結婚させるんじゃなかった。息子はガラにもない社長に祭り上げられて、これで本当に幸せなのか」

他人から見ると「現状の何が不満なの?何を後悔しているの?」と思うようなことでも、当人にすれば死ぬに死にきれない思いなのです。

考えてみれば人生は選択の連続です。

進学、就職、結婚といった大きな問題だけではなく、今日は何を食べようか、車で行こうか電車で行こうか、様々なことを選び取って前に進んでいきます。

そのことが意外な出会いを呼んだり、とんでもない悲劇に結びついていたりすることも。

誰しもが「あの時違う道を選んでいたらなぁ」と後悔することがあるのかも知れません。

この小説の不思議な聴診器は、後悔している人の心の中に「扉」を生み出します。

その扉をくぐれば過去に戻り、人生をやり直すことができるのです。

やり直してみれば、違う「今」になっているわけですが、さてその結果に満足できるのか?

ルミ子の聴診器のおかげで「生き直した」患者はみな、納得して最期を迎えます。なぜ、どのように納得したのかは、ご自身で読んでみてくださいね。

この小説は、ルミ子が医師として成長する物語であるだけでなく、悔いのないよう今を生きましょう、という読者へのメッセージがこめられているのだと思います。

そして、もし悔いがあったとしても、今のあなたの人生は捨てたものではないですよ、というメッセージも感じられました。

とはいえ、人の人生の後悔を聞き(読み)、人生のやり直しに立ち会うのは思いのほか疲れることでした。未来に目を向けた続編『希望病棟』の方が私には楽しく爽快でした。
後悔病棟
垣谷美雨(著)
小学館
神田川病院に赴任した女医の黒田摩周湖は、二人の末期癌の女性患者をみている。先輩のルミ子に促され、中庭で拾った聴診器を使うと患者の“心の声”が聞こえてきた。児童養護施設で育った桜子は、大人を信じていない。代議士の妻の貴子は、過去に子供を捨てたことがあるらしい。摩周湖の勧めで治験を受けた二人は快方に向かい、生き直すチャンスを得る。“従順な妻”として我慢を強いられてきた貴子は、驚きの行動に出て…!?孤独と生きづらさを抱えてきた二人はどのような道を歩むのか。共感の嵐を呼んだヒューマン・ドラマ『後悔病棟』に続く感動の長編。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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