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夫のカノジョ(垣谷美雨 )

相手の立場になってみれば

夫のカノジョ
垣谷美雨(著)
ここのところ、毎月 垣谷美雨さんの小説を読んでいます。仕方ないでしょう、面白いんですもの。

今回読んだのは『夫のカノジョ』。不倫小説なんでしょうか!?
小松原菱子 39歳。学童保育でパートをしている。食品メーカー勤務の夫とは結婚15年。中学三年生の娘と、小学五年生の息子の四人家族だ。

このごろ、今住んでいる58平米、2LDK+Sのマンションが狭く感じられてきた。夫とも相談して、そろそろマンションを買い換えようと思っている。

そんなある日、菱子は住宅情報を検索するつもりで、夫のパソコンを借りたところ、検索履歴に不審なサイトを発見してしまった。

考えたこともなかったが、夫はどうやら浮気をしているらしい。しかも、相手は夫の同僚のようだ。悩んだ末、菱子は相手の女性に会いに行った。

そこで冷静を保てず、お互い言い争いになったところ、妙なきっかけで、二人の身体が入れ替わってしまった。菱子がカノジョに、カノジョが菱子に!

仕方なく、お互い相手になりすまして生活することになったのだが……
(垣谷美雨さん『夫のカノジョ』の出だしを私なりにまとめました)
年齢こそ違いますが、私としては当然、妻である菱子の立場で読むことになりました。

菱子が夫のパソコンを使っていて「ん?!」と思ったところから、浮気を疑うあたり、これがもし自分のことだったらと思うと、腹が立つやら悲しいやら。

菱子!頑張れ!と冒頭から力が入りました。

相手であるカノジョが、ガラの悪い女の子であることにも憤慨。

なんやねん、この旦那は!!

ますます菱子に感情移入する私でした。

どういう展開になるのだろうと思ったら、なんと二人の身体が入れ替わってしまいます。

これまでにも、お互いの身体が入れ替わってしまう話はいくつか見たり読んだりしています。

大林宣彦監督の映画『転校生』、花井愛子さんの小説『山田ババアに花束を』、そして最近では新海誠監督の『君の名は。』がそう。

しかし、入れ替わるのが妻とカノジョとなると、相当ドロドロした話になりそうですが、そうはなりません。

よく「相手の立場になってものを考えなさい」というけれど、物理的に相手の立場になってみると、色々な事情が見えてきて、カノジョを憎めなくなってくるのです。

そのあたり、菱子さんは根が真面目で優しい人なのです。

カノジョの方もそれは同じ。菱子さんのしっかりした生き方に尊敬の念を覚え始めます。

そしてどちらも、もう本来の自分に戻れないと思った時に、実は平凡な毎日が幸せだったのだと気がつくのです。

読み終わった時に、人には必ず長所があり、幸せは近くにあるのだと思えるのが垣谷美雨さんらしいと思いました。

ユーモラスで温かみのある小説でした。

ところで、この小説は2013年の秋に、ドラマ化されていたのですね。

カノジョ役が川口春奈さんというのがイメージに合わないです。

もっとがらっぱちな女の子なのだけどなァ。と言いつつ、ちょっと見てみたい気がします……。
夫のカノジョ
垣谷美雨(著)
双葉社
夫の浮気を疑った妻が、相手の女性に会いに行く。すると、言い争っているうちに、なんとふたりの身体が入れ替わってしまったのだ。平凡な日々の生活に少し不満をもっていたけれど、自分の家族や人間関係を別の立場で見てみると、いままで気づかなかったことが見えてきた。自分が変われば相手も変わるかもしれない…読んだあと、少し人に優しくなれそうな、Ifの世界をリアルに描いた長編小説。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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