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『ワレンバーグ』『イレーナ・センドラー』『私を救ったオットー・ヴァイト』 

児童書で知るユダヤ人を救った人々

『ワレンバーグ』『イレーナ・センドラー』『私を救ったオットー・ヴァイト』
今回は一挙3冊のご紹介です。

いずれも児童向けの伝記です。スウェーデンのワレンバーグ、ポーランドのセンドラー、ドイツのヴァイトの三氏は、第二次世界大戦下、ドイツのユダヤ人絶滅計画(ホロコースト)に抵抗し、危険を冒して多くの人々を支援した人物です。

彼らに関して手軽に入手できる日本語の書籍はほとんどありません。それゆえ今回ご紹介する3冊は貴重な情報源です。

迫害されるユダヤ人を助けた同時期の人物としては、杉原千畝や、映画「シンドラーのリスト」のオスカー・シンドラーが有名です。彼らも注目されるようになったのは1990年代ごろからですが、いまでは映画や書籍などを通して広く知られています。杉原千畝は、日本の小中高校の社会や道徳の教科書にも登場しています。

しかし、杉原やシンドラーのほかにも、身の危険を顧みず、ユダヤの人びとを助けた人がたくさんいました。イスラエルの国立機関ヤド・ヴァシェムは、そのような人々を精緻に調査したうえで「諸国民の中の正義の人」として顕彰しています。その数は2019年1月時点で、約2万7千人にのぼります(*1)

彼ら一人一人の勇気ある行動は、多くの人が大きな力に追随するなかで、人として取るべき道をとった人も確かにいたのだということを教えてくれます。仕方なかった、みんなそうだったというような責任回避の姿勢を見直すきっかけになると思います。

児童書には、この3冊に限らず、一般向け書籍ではほとんど取り上げていない人物や事柄を扱った優れた作品があります。子どもにもわかるようていねいに練られた文章は大人にも読みやすく、また編集が行き届いていて写真や図などの資料も豊富なことが多いです。子ども向けだからといってあなどれません。

以下、出版年順に紹介します。
ワレンバーグ
ナチスの大虐殺から10万人のユダヤ人を救った、スウェーデンの外交官
ニコルソン、ウィナー(偕成社1991年)
ラウル・ワレンバーグ(1912-?)は、1944年、中立国スウェーデンの外交官としてハンガリーに赴任し、わずか数か月で10万人のユダヤ人を救出しました。

ワレンバーグはスウェーデンの名家の出身で、数か国語を操りました。彼はもともと職業外交官ではなく、ユダヤ人救出に動きだしたアメリカ戦時難民委員会の活動を欧州で展開するための要員として活躍しました。職業外交官でなかったからこその大胆な作戦によって、彼は多くの人々を救いました。

ところが、ソ連によるハンガリーの解放直後、ワレンバーグは、今後の交渉のためソ連軍司令部に赴いたまま失踪します。いまもって失踪後の足取りはわかっていません。
イレーナ・センドラー
ホロコーストの子ども達の母
平井美帆(汐文社 2008年)
イレーナ・センドラー(1910-2008)は、第2次世界大戦中にポーランドのワルシャワで、地下抵抗組織の一員としてユダヤ人の子どもたち2500人をゲットーから密かに救出した女性です。活動の最中に自らも捕らえられて酷い拷問を受けましたが、九死に一生を得ました。

彼女が戦後、世界に広く知られるようになったきっかけは、アメリカの高校生たちの歴史研究の発表でした。昨年(2019年)秋には、ハリウッド・スターによる映画化の計画が報じられました。公開が楽しみです。
私を救ったオットー・ヴァイト
ナチスとたたかった真実の記録
ドイチュクローン(汐文社 2016年)
オットー・ヴァイト(1883-1943)は、ドイツのベルリンで、福祉作業所を経営した人物です。彼自身、ものの輪郭がわかる程度の視力しかありませんでしたが、ブラシ製造という表の商売以外に、裏の商売として物資の調達などを精力的にこなしました。

彼は、ナチが抹殺の標的にした盲人やろう者やユダヤ人を自身の経営するブラシ工場に雇用し、保護しました。迫害がいよいよ激しくなると、ユダヤ人一家を隠れ家に匿ったり、連行された従業員をゲシュタポから連れ戻したり、強制収容所に連れていかれた従業員たちには物資を送ったりして支援を続けました。

著者のドイチュクローンさんは、ヴァイト氏に救われたユダヤ人のひとりで、ご存命です。戦後はジャーナリストとして、ヴァイト氏の功績を後世に伝え残すため精力的に活動されてきました。なお、ヴァイト氏の作業所だった場所は、現在、博物館になっています(*2)

参考:
 (*1) ヤド・ヴァシェムのHPより。
https://www.yadvashem.org/righteous/statistics.html
(2020/3/7最終アクセス)

 (*2) オットー・ヴァイト盲人作業所博物館HP(英語ページ)
https://www.museum-blindenwerkstatt.de/en/first-of-all/
(2020/3/7最終確認)
ワレンバーグ
ナチスの大虐殺から10万人のユダヤ人を救った、スウェーデンの外交官
M.ニコルソン (著), D.ウィナー (著), 日暮 雅通 (翻訳)
偕成社 (1991)伝記世界を変えた人々 (6)
ナチスのユダヤ人大虐殺に立ち向かい、10万人もの命を救った“知られざる英雄“ワレンバーグの生涯を追った伝記。 出典:amazon

イレーナ・センドラー
ホロコーストの子ども達の母
平井 美帆 (著)
汐文社 (2008)
二〇〇八年五月十二日。やさしい目をしたひとりのポーランド人女性が九八歳で亡くなりました。その人の名前は、イレーナ・センドラー。第二次世界大戦中、ドイツ軍に占領されていたポーランドで、ゲットー(ユダヤ人居住区)から、二千五百人のユダヤ人の子どもたちを救った女性です。当時、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)が行われていたポーランドでは、ユダヤ人を助けることは死刑に値する罪でした。それでも、イレーナは自分の命の危険をかえりみず、ひとりでも多くの子どもを救おうと活動を続けました。どんな状況におかれても、決してあきらめず、二千五百人もの子どもたちの命を救ったイレーナ―。その勇敢な人生をのぞいてみましょう。 出典:amazon

私を救ったオットー・ヴァイト
ナチスとたたかった真実の記録
インゲ ドイチュクローン (著)
汐文社 (2016)
第二次世界大戦中のドイツは、ナチスという独裁政党によって支配され、ユダヤ人はユダヤ人というだけで激しく迫害されていました。そんな時代に、ユダヤ人を守ろうと命がけでたたかった人―それが、目の見えないオットー・ヴァイトでした。これは、ヴァイトに命を救われたユダヤ人の作者が伝える、恐怖と勇気にみちた真実の記録です。 出典:amazon
profile
橋本 信子
同志社大学嘱託講師/関西大学非常勤講師

同志社大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程単位取得退学。同志社大学嘱託講師、関西大学非常勤講師。政治学、ロシア東欧地域研究等を担当。2011~18年度は、大阪商業大学、流通科学大学において、初年次教育、アカデミック・ライティング、読書指導のプログラム開発に従事。共著に『アカデミック・ライティングの基礎』(晃洋書房 2017年)。
BLOG:http://chekosan.exblog.jp/
Facebook:nobuko.hashimoto.566
⇒関西ウーマンインタビュー(アカデミック編)記事はこちら

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