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She Made a Monster(Lynn Fulton)

『フランケンシュタイン』物語が誕生した背景

She Made a Monster
How Mary Shelley Created Frankenstein
by Lynn Fulton, illustrated by Felicita Sala
『フランケンシュタイン』の著者が女性なのをご存知でしょうか。メアリー・シェリーは18歳の若さでこの作品を書きました。

約200年前に出版された『フランケンシュタイン』は、最初のSF作品とも言われ、現在に至るまで繰り返し演劇や映画などに取り上げられています。

皆が知っているフランケンシュタインですが、ヴィクター・フランケンシュタインは人造人間を作り出した青年科学者の名前で、モンスターには名前がありません。

ヴィクターは、すべてに秀でた人間を造ろうと情熱的に取り組みましたが、生命を吹き込まれたもののあまりの醜さに圧倒され、逃げ出してしまいます。

モンスターは、強靭であるだけでなく、身のこなしも素早く、優れた知性を持ち、雄弁に語ります。

映画の印象の方が根付いてしまったので、元のお話を知らない人の方が多いのではないでしょうか。

恐ろしい怪物というよりは、醜いけれども寂しげなイメージがあり、それはメアリーが作り出したものだと思います。

この絵本は、彼女がどのようにしてフランケンシュタインを書くことになったのかのお話です。

メアリーは、政治評論家の父と、フェミニズムの先駆者である母の元に生まれ、子どもの頃から作家になることを夢見ていました。

生まれてすぐに母親を亡くし、義母とは上手くいかず、16歳で、既婚者だった詩人のパーシー・シェリーと駆け落ちします。義理の妹のクレアを連れて家を出ました。

3人は、スイスのジュネーブのバイロンの別荘を訪れます。詩人のバイロンです。彼は、そこに主治医のポリドリと滞在していました。

その年は長雨が続き、屋敷の中に閉じ込められた5人は退屈しきってしまいます。

バイロンは、それぞれが怪談を書いて、誰のものが一番面白いかを競争しようと提案します。
“We should each write a ghost story! In a week, we will see who has written the best one.”
男たちはすぐにお話を書き上げますが、メアリーはなかなかアイデアが浮かびません。

ある夜、皆が、死んだカエルに電気を流して、足を動かした実験の話をしているのを聞きます。

子どもの頃にもっと恐ろしい実験、人間の屍体に電気を流して動かした話を聞いたのを思い出します。

男たちの科学談義は続いていますが、皆その発展のみに興味があるようで、それがどんな結果をもたらすのか、倫理的に正しいのか、などは考えない様子。
“What would happen to that ‘lifeless matter’ once someone had given it life?” The men did not seem to care. They only asked if something could be done – never if it should.
なんとか眠りについたメアリーは、夢を見ます。大きな、恐ろしい顔をした体がテーブルに横たわっていて、傍には、自分の成し遂げたことに、恐れおののいた若い科学者が立ちすくんでいました。科学者は逃げ出してしまい、怪物は起き上がって…

メアリーは、恐ろしさで目を覚ましますが、物語の着想を得て幸せでした。

メアリーの人生は波乱に満ちたものでしたが、この絵本では、物語が誕生した背景を、子どもにも分かるように、エッセンスを抽出して描いています。著者による解説もついていて、面白いです。

フランケンシュタインの原題は、『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』です。プロメテウスは、ギリシャ神話に登場する神で、人間を創りますが、ゼウスに逆らって人間に火を与えたことで、罰せられます。

才能に溢れたメアリーのお話にとても興味が湧き、フランケンシュタインに関連した本を読んだり、映画を見たりしています。

科学者が自分の研究に没頭するあまり、行き過ぎたことをしてしまう、というストーリーのパターンはフランケンシュタインから始まったのですね。原作も今読んでも面白いです。
She Made a Monster
How Mary Shelley Created Frankenstein
by Lynn Fulton, illustrated by Felicita Sala
Publisher: Alfred A. Knopf
profile
谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
HP:http://www.storyplace.jp
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