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長いお別れ(中島京子)

全く人ごとではありません

長いお別れ
中島京子(著)
平成が終わりました。31年間。いろんなことがありましたね。私の人生にも色々ありました。

それまでOLとして働いていたのに、『ベイブ』という映画に出会い、突然 声の仕事がしたくなりました。

仕事をしながら夜間声優の専門学校に通い、卒業試験を兼ねたオーディションで声優事務所に声をかけていただき、契約。色々あって今に至る。

他にも色々変化はありましたが、変わらないのは本が好きだということ。令和の時代になってもそれは変わらないと思います。

そんな私が平成最後に読んだ本は、中島京子さんの『長いお別れ』です。
東周平は3年前、認知症の診断を受けた。

2年に一度、同じ会場で催される同窓会に出かけたのに、会場にたどり着けず家に帰ってきたことを、妻が不審に思い、検査してわかったのだ。

妻 曜子との間には娘が三人。長女の麻莉は、夫の仕事の都合でサンフランシスコに住んでいて二人の男の子がいる。周平にとっては孫だ。

次女の菜奈は夫との間に8歳になる一人息子がいるが、アラフォーにして二人目を妊娠した。三女の芙美は独身。フードコーディネーターとして活躍しており、いつも忙しくしている。

周平は元々は学校教師で、校長となり、退職後は図書館の館長も務めた。

それは本人にとっても意味深いことなのだろう。徐々に父親や夫としての役割を忘れていっても、「先生」と呼ばれるとちゃんと受け答えができるのだった。

認知症などが原因で、徐々に家族のことを忘れてしまう、そんな状況を英語では「Long Good-bye(長いお別れ)」と言うそうだ。

この小説は少しずつ認知症が進んでいく周平と、家族の10年間の物語。
(中島京子さん『長いお別れ』を 私なりにまとめした)
切ないですね。

やりがいのある仕事に没頭し、やり遂げた人だからこその悲哀を感じました。

全く人ごとではありません。

自分の親が「周平さん」になる可能性もあれば、自分の夫が、もしかしたら自分自身が「周平さん」になる可能性だってあるのです。

でも、色々なことを忘れ去ったとしても、何かしらの繋がりが残る、というところに暖かさを感じました。

親子、祖父母と孫、そして義理の息子。家族の中でも色々な立場、目線があり、その人たちから見た”おじいちゃん”の姿が、大仰でなく、さらっと描かれているのがとても素敵。

人生訓や偉そうな教訓を述べなくても、おじいちゃんの姿を見て、孫は学んでいくのです。それこそが真の教育だと思います。

この小説は映画化されました。東周平を演じるのは山崎努、妻の曜子は松原智恵子だそうです。

原作では三人娘なのが、映画では二人姉妹に変更。竹内結子と蒼井優が姉妹を演じるのだそう。2019年5月31日(金)ロードショー。 ぜひ観に行こうと思います。

それにしても、小説の中の東周平さんには、生涯を共にする妻、三人の娘、二人の義理の息子、そして孫がいます。

そういう恵まれた状態がこれだったら、子どものいない私たち夫婦などはどうなるんだろうと、ちょっとばかり暗い気持ちになりました。

とりあえずできることは、年を取っても自力で歩けるよう、筋トレに励むことかしらね。
長いお別れ
中島京子(著)
文藝春秋
かつて中学の校長だった東昇平はある日、同窓会に辿り着けず、自宅に戻ってくる。認知症だと診断された彼は、迷い込んだ遊園地で出会った幼い姉妹の相手をしたり、入れ歯を次々と失くしたり。妻と3人の娘を予測不能なアクシデントに巻き込みながら、病気は少しずつ進行していく。あたたかくて切ない、家族の物語。中央公論文芸賞、日本医療小説大賞、W受賞作。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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