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山女日記(湊かなえ)

困った時は山に聞け?人生の岐路に立つ女性たちの物語

山女日記
湊かなえ(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。

その中の「図書館だより」では週に一度、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。今回ご紹介するのは、湊かなえさんの『山女日記』。

私は子どもの頃は外で遊ぶのが大好きでした。
住んでいたマンションの裏は山だったので、近所の男の子たちと登っては秘密基地なんか作っていました。

真っ黒に日焼けして、日本舞踊のお師匠さんに、「こんなにやけたらお化粧が乗らなくなる!今年の夏休みは絶対にプールや山に行ってはいけません!!」と怒られてばかりいました。

あのまま成長していたら、登山大好きになっていたかもしれません。
今ではちょっとした丘でも息がきれる私にとって、たくましく山に登る女性たちは憧れの存在です。

『山女日記』は山に登る女性が主人公の短編集。
登場する女性たちはそれぞれ悩みを持っていたり、人生の岐路に立たされています。

・プロポーズされたものの、本当にこのまま結婚して良いのだろうかと悩む女性
・職場の上司と不倫している女性
・医者と結婚し、完璧な専業主婦である姉と、35歳独身で不安定な仕事をしつつ家業の農業を手伝っている妹
・脱サラして帽子デザイナーになった女性
など。

彼女たちは、もやもやしたものを抱えながら山に登り、それぞれの答えを見出していきます。

短編のタイトルはそれぞれが登る山の名前です。
”『妙高山』
『火打山』
『槍ヶ岳』
『利尻山』
『白馬岳』
『金時山』
『トンガリロ』”
(湊かなえ『山女日記』目次より引用)
当然ながら、どれ一つ登ったことはありません。

でも、読んでいると自分も一緒に登っているように錯覚するのは、空の色、道の様子、咲いている花々がしっかりと描写されているから。

湊かなえさん自身、「山ガール」なんていう言葉がない頃から山に登っていたのですって。どうりで、登山中の疲労ぐあいや、休憩の様子にリアリティがあったわけです。

また、登山靴やリュック、スティックなど、登山の道具もいろいろあるんだなと、ストーリー以外のところでも楽しませてもらいました。

『山女日記』の登場人物のように、山に登ってちっぽけな自分と向き合えば、どんな悩みも蹴っ飛ばせるかもしれない。

そう思うと私も山に行きたい〜!!
無理せず、近場の山を歩いてみようっと。

ところで、タイトル『山女日記』というのは、登場人物たちが参考にしているウェブサイトの名前です。

みんな登山の前にアクセスして、山ごとのルートの確認や、持参すべきグッズを参考にしています。本当に「山女日記」というウェブサイトがあるんじゃないかと検索してしまいましたワ。

ちなみに『山女日記』は昨年(2016年)の冬、NHKでドラマ化されていたんですねぇ。

見逃しました。
面白かったのかしら?

同じく山に登る女性が主人公の北村薫さんの『八月の六日間』と読み比べるのも一興かも。
山女日記
湊かなえ(著) 幻冬舎
私の選択は、間違っていたのですか。真面目に、正直に、懸命に生きてきたのに…。誰にも言えない苦い思いを抱いて、女たちは、一歩一歩、頂きを目指す。新しい景色が、小さな答えをくれる。感動の連作長篇。 出典:楽天

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の『読書ダイアリー』
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon



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