キネマの神様(原田マハ)
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![]() 大好きなものがある幸せ キネマの神様
原田マハ(著) 丸山歩(あゆみ) 40歳を目前にして独身。誰もが名前を知っている企業の課長として、シネコンを作るプロジェクトを推進していた。
父譲りの映画好きの歩はこのプロジェクトに情熱を持って取り組んでいた。しかし、出る杭は打たれるのか、有る事無い事噂され、17年間務めた会社を自分から辞めてしまった。次の仕事のあてもなく。 歩の父親、丸山郷直。映画鑑賞とギャンブルを生きがいにしている。ギャンブルは依存症の域に入っていて、度々借金をしては妻に迷惑をかけるほどだ。現在の仕事はマンションの管理人。 歩が会社を辞めた日、父親が緊急入院した。幸い命に別状はなかったが、父が入院している間、代わりにマンション管理をすることになった歩は、管理人室で父の「映画鑑賞日記」を発見。それは思わず読みふけってしまうほど面白かった。 その後、歩は映画関係の老舗雑誌社に再就職が決まる。そしてひょんなことから、父 郷直の文章が編集長の目にとまり、雑誌社主催のウェブサイトでの郷直の映画ブログ連載が決まった。 サイトのタイトルは「キネマの神様」。映画好きの老人”ゴウ”の映画評論は徐々に人気を得て、思いも寄らないムーブメントを起こす! (原田マハさん『キネマの神様』の導入部分を私なりにまとめました) この小説には仕事のやりがい、人間関係、ギャンブル依存症、引きこもり、親子の関係など色々なものが詰まっています。
いずれも「どうなるのだろう」と先が気になることばかり。 でも、ストーリー展開以上に胸に迫るのは、この世に映画があることの幸せです。 いえ、ただ映画があることが幸せなのではありません。 小さなモニター画面ではなく、映画館で映画を見ることの幸せがこの小説の主眼だと思います。 ”ゴウ”のブログからは映画愛がひしひしと伝わって来ます。 そして映画の解釈が本当に面白いのです。 『フィールド・オブ・ドリームス』『硫黄島からの手紙』などは私も映画館で見ているので、”ゴウ”の評論をなるほどと思いながら読むことができました。 他にも『七人の侍』、『プライベート・ライアン』、『タイタニック』、『Shall We ダンス?』、『アメリ』、『戦場のピアニスト』、『Always 三丁目の夕日』、『イングリッシュ・ペイシェント』など、見たことがある映画、知っている映画の名前が続々と出てきます。 「ウンウン、あの映画は面白かったね」「あの映画は泣けた」と、”ゴウ”さんや歩さんと感想を語り合っているかのような錯覚に陥ってしまい、楽しくて仕方がないです。 こんなにも映画を愛する人のために、小説の中でキネマの神様が奇跡を起こしてくれるのでしょう。 我が家は夫が映画が大好きで、その影響を受けて私も映画をよく見るようになりました。 とはいえ、夫と結婚するまでに上映されている映画については、名作と名高い映画でも見ていないものが多いです。 その一つ『ニュー・シネマ・パラダイス』は、この小説の中で、とても大きな存在です。 読みながら、どうして有名なこの映画を見ていなかったのか、とても悔やまれました。 見てさえいればもっと主人公たちに共感できたでしょうに。 もちろん小説の中でタイトルがあげられている映画をどれひとつ見ていなかったとしても、楽しく読めるとは思います。 でも映画を知っていたら、小説の味わいは倍にも三倍にも膨らむことでしょう。 ところで、ストーリーには関係ないことですが、”ゴウ”の映画への想いは、私の小説への想いと似ていると思いました。 ゴウは毎日のように気に入った映画を大スクリーンで見たい、そしてその映画について多くの人に発信したい…と考えています。 「映画」を「本」「小説」に置き換えたら、私の気持ちそのものなの。 大好きなもの、大好きなことがあるというのは、本当に幸せなことです。 私も、”ゴウ”に負けないくらい、小説をもっともっと読まなくっちゃ。 あ、もう一つこの小説には大事なメッセージがありました。 それは「友だちがいる幸せ」です。 キネマの神様
原田マハ(著) 文藝春秋 39歳独身の歩は突然会社を辞めるが、折しも趣味は映画とギャンブルという父が倒れ、多額の借金が発覚した。ある日、父が雑誌「映友」に歩の文章を投稿したのをきっかけに歩は編集部に採用され、ひょんなことから父の映画ブログをスタートさせることに。“映画の神様”が壊れかけた家族を救う、奇跡の物語。 出典:楽天 ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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