きりみ(長嶋祐成)
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![]() 「好き」ってすごいパワー! きりみ
長嶋祐成(著) 私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。
今回ご紹介するのは、長嶋祐成さんの絵本『きりみ』です。 なんと強烈なインパクトの表紙でしょうか。 鮭をさばいているところで、背骨、ひれ、わた、卵(いくら)まで、丁寧に描き込まれています。 最近のお子さんは、スーパーで売られているきりみが、元はどんな魚なのか知らないどころか、切り身の姿で泳いでいると思っている子もいるとか。 ホンマですか?! 信じがたい話だけれど、だからこのような絵本が成立するのですね。 鮭、太刀魚、うなぎ、カツオなど、お馴染みの魚介類の生前のお姿と、食べるときに目にする切り身を比較した絵本は、1ページめくるたびに「へー。こんな風な体の作りになっているんだ」と感心する気持ちと「ああ、美味しそう。食べたい」という気持ちが交互にやってきます。 お子さん向けに書かれたのだろうけど、大人でもじゅうぶん楽しめます。 でも私は絵本以上に著者に興味が湧きました。 長嶋祐成さんは魚譜画家さん。1983年大阪生まれで、幼い頃に魚の姿に魅せられたそうです。 大阪教育大附属平野中学校に入学。ということは、大阪弁で言うカシコですね。 ところが、せっかく入学したのに中学では不登校になり、一年間は熱帯魚の世話に明け暮れていたそう。 しかし、高校からは一転して模範生となり、京都大学総合人間学部に進学しておられます。 ね、やっぱりカシコでしょ? 現代思想を学んだ長嶋さんは、最初はアパレルブランドに就職。次にマーケティングの会社に転職しておられます。 魚譜を本業にされたのは、2016年。33歳でやっと本当にやりたいことが仕事になったわけです。 私はこのご経歴から出世魚を連想しました。 長嶋さんはいろいろな海(分野)で泳いで、”ハマチ”そして”ブリ”になられたんだなあ、と。 長嶋さんは現在、石垣島に住んで魚の絵を描いておられるんですって。 ホームページを拝見すると、長嶋さんは、魚の美しさ、愛らしさ、格好良さ、気高さを絵にしたいそうです。 それを見てもらうことで、魚を愛し、自然を愛する人を増やしたいとおっしゃっています。 それもしゃかりきに声を大にして主張するのではなく、日常生活の中で楽しみを追っているうち、知らず知らずに未来の自然に貢献していた……というのが理想だとか。(長嶋祐成さんのウェブサイト「魚の譜」から解釈を加えて引用させていただきました) 幼い頃から好きだった魚介類を描き続けておられる長嶋さん。 絵本『きりみ』は「好き」のパワーがどれほど人間にとって大きいかを教えてくれます。 ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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